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一滴目  男性狙いの連続強姦事件と大学を辞めた俺。

「続いて次のニュースです。男性を狙った連続強姦事件で4人目の犠牲者が出ました——————————」




駒木はカップラーメンを啜りながら、そのニュースが流れるテレビ画面をぼーっと眺めていた。

髪はボサボサで無精髭を生やし、パンパンになったゴミ袋がキッチンの隅の方で山を作っている。

この生活は、彼が数ヶ月前に大学を辞めたところから始まっていた。

まだ親にも告げられず、振り込まれた仕送りと「学校どう?楽しい?」という親からのメールに後ろめたさを感じながら、学校という外界との繋がりを断ち切った彼の生活は、不規則になり乱れていったのだ。

今ではその乱れた生活を何の疑問も持たずに送れるようにまで堕ちた。

すでに3日も風呂に入らず、着替えもせず、外にも出ていない。

死んでいないだけで全く生きていない彼は、カップラーメンを食べ終わると、おもむろに立ち上がった。


「っち、面倒臭いな」


その目線の先にあるのは、公共料金の請求書だった。

これ以上支払が滞れば、滞納通知が届く。

封筒を手に取り、玄関で1百円均一で買った便所サンダルを突っ掛けて外に出た。




すでに辺りは暗く、街灯がその闇夜を煌々と照らす。

途中にウォーキングをするピンクのユニフォームに身を包んだ中年女性と、参考書を読みながら歩く眼鏡をかけた少年とすれ違った。

しかし駒木にとって、人と目を合わせる事も、擦れ違う事も、声を聞く事も鬱陶しい。

特に人生を謳歌してそうな「リア充」と呼ばれる集団が近くを通ると、無意識に身体が拒否反応を起こしてしまう。

人間嫌だ嫌だと思っていると、その通りになる事がある。

駒木はその集団と、支払いをしようと向かったコンビニ前で、遭遇してしまったのだ。

彼は顔を青白くさせ、出来るだけ気付かれないように努めコンビニの中に入っていった。

支払いをしている最中、自分も大学を辞めなければあの集団に入っていたのだろうか、と一瞬思考する。しかし、すぐに頭を振り、その思いをかき消した。


「それが出来なかったから、今ここに居るんじゃないか」

「はい?あ、タバコですか?」


駒木の独り言に、レジを打つ店員が、何か頼まれたのかと、駒木のその小さな呟きに予想を立てる。

「何番のタバコですか?」と聞き返した。




*******




駒木はコンビニで支払いを済ますと、ついでに買った幾つかのカップラーメンの入ったビニール袋をプラプラさせながら、帰路に着いた。

さっきのようなリア充集団に出くわさないように、さっきよりも細く人通りのない道を選ぶ。線路沿いの裏路地とも言えるそれを、肩を落としながら歩く。


「くそ、俺だって」


やはり彼の頭の中では、さっきの楽しそうに話をしている男女で一杯になっていたのだ。青春をまさに楽しんでいるような表情と、流行りに則った服装などが、否応なく反芻される。

が、その時。

駒木は何か強い衝撃を受けると、アスファルトに仰向けになっていた。

そして腰のあたりに何か重みを感じ、目をやると、人が馬乗りになり、駒木を睨んでいた。

動転する脳みそが落ち着くと、誰かに後ろから押し倒され身動きを封じられて居るだなと、思考が行き着く。

それでも何故か恐怖がないのは、その馬乗りになっているのが、スレンダーな可憐な女だったからだ。



年齢は駒木と同じくらいか、少し上だろう。

腰まで伸びた黒く細い髪と、日本人形のように額の前で切りそろえられた髪が、良く似合う顔立ちだった。

黒いワンピースは、白い肌とコントラスが激しく、モノクロ写真のようにも見えたが、その瞳は瞳孔が何故か赤く光っている。


—————最近この辺りで起こっている男性を狙った連続強姦事件—————


駒木はさっきのニュースを思い出すと、背中に悪寒がはしるのを感じた。

女が、にたぁ、と不気味に笑う。

その犬歯は、異常に発達していた。




そう、まるで吸血鬼ヴァンパイアのように。

次回は、駒木が高位眷属に堕ちます。

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