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クラウン=コア  作者: 桜花シキ
第7章 陽気な少年
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友達?②

 結局、その後は言った通り静かにしていたので、雷撃サンダーは落とさずに済んだ。

 しかし、授業が終わった途端にまた絡み出してくるのだから、どうしたものか。未だに、出かけようよ、このあと暇じゃないの、などと騒いでいる。やっぱり、躊躇せずに雷撃(サンダー)で黙らせておくべきだっただろうか。

 

 教科書一式を持ち、おまけにロジャードを引き連れて講義室を出る。

 すると、ドアから少し離れたところに隊員たちが集まっているのが目に入った。特に集合をかけられるような用事はなかったはずなので、これはあれだと予想をつける。


「授業終わったか?」


 やはり、主に女性隊員たちに囲まれていたのはエイドだった。さすがに俺も、こういう光景はもう見慣れている。隣にいるロジャードに関しては、羨ましそうな目で見ていたが。

 それでも、今日は時間帯のせいもあるのか数は少ない。講義等でみんな疲れているのだろう。

 ロジャードに賛同するわけではないが、できることなら確かに息抜きはしたかった。


「今、終わったところだ。エイド、任務は?」


「夕方からまた出るけど、数時間だけ空いてるんだ」


「相変わらずだな」


 エイドはそう答えながら、集団の中から抜け出す。取り囲んでいた隊員たちも任務や講義があるためか深追いはせず、エイドが輪の中心からいなくなると、散り散りに去っていった。


「それで、その時間で刀のメンテナンス出しに行こうと思って」


 ようやく解放されたエイドは、腰に差してある二刀を目で指し示す。


「ああ、この前は留守とかで頼めなかったやつか。『最後の砦』だっけ?」


 ぱっ、と俺の頭の中に浮かんだのは古びた建物と、破壊されたドアだった。フォグリアの衝撃的な登場とともに記憶に焼き付いている。

 エイドは俺の問いを肯定し、頷く。


「そうそう。この前、そろそろ親父さんが帰ってくるからって連絡があったんだ。それで、お前も行くかなと思って」


 偶然なのだろうが、タイミングの良いところで。エイドが同行していれば、外出の許可は下りる。

 しかし、こいつはどうするだろうかと隣の少年を見た。少年は少し首を傾げてから、嬉しそうに目を輝かせる。


「それ、ルルちゃんの店だろ?」


「知ってるのか?」


「可愛い子だったから街で声をかけ……じゃなくて、店に偶然立ち寄った時に会ってさ。そしたら、同い年だって言うし、仲良くなったんだ~」


 そういえば、ロジャードとは同い年になるのか。看板娘のルルは、俺よりもひとつ年上だと言っていた。

 それにしても、お前……そっちにしか興味ないだろ。


「俺もついて行っていいですか?」


 ロジャードがニコニコとエイドに尋ねる。

 エイドの方はというと、ロジャードの顔を見て苦笑した。


「ロジャード、今年はちゃんと講義出てるのか?」


「まぁ、はい。大丈夫です!」


「そうか、それなら良かった」


 どうやら、ロジャードのことはエイドも知っていたらしい。俺が黙って見ている間に話は進んでいく。


「それで、一緒に行ってもいいですか?」


「俺は構わないよ。ファス、ロジャードが一緒でもいいか?」


 そして、2人分の視線が投げかけられる。

 いや、そういえば俺はまだ行くとは言ってない。……まぁ、行くつもりではいたが。

 ロジャードに関しては、


「どっちでもいい」


というのが率直な意見だった。


「やった、決まり!」


 ロジャードは俺の返答を聞いて、素直に喜んでいる。何というか、感情が豊かなやつだ。少しオーバーな気もするが。


 結局、ロジャードも同行する事で話はまとまった。 


「あー……ちょっと待っててくれ。教科書類、部屋に置いてくる」


 このまま持って行くのも大変なので、一度部屋に戻っておいてきた方がいいだろう。2人共、待っていると言ってくれたので早足で戻る。


「いってらっしゃーい」


「ロジャード、お前はいいのか?」


 ファスを見送り、自分は動く様子のないロジャードを見て、エイドは首を傾げる。


「財布は持ってるんで大丈夫です」


 そう言って、ロジャードはズボンのポケットを叩く。


「そうじゃなくて、教科書とか……」


「元から持ってきてないので大丈夫です!」


「えぇー……」


 そんな元気な回答は、むしろ清々しかった。




「悪い、待たせた。もう大丈夫だ」


 部屋に荷物を置き、待たせていた2人の元へと戻る。


「よし、じゃあ行こうか」


「はーい。ルルちゃんいるかなぁ?」


 さて行くか、と足を外に向けたとき、白銀の髪が目の前を凄い勢いで過ぎ去った。

 呆気にとられてしまったが、ちらりと目に入ったあの猫耳。間違いがなければ、これから行こうとしていた店の看板娘だった。

 そして、その予測は当たっていたらしく、走り去ったはずの白銀の少女が戻ってくる。だが、何やら急いでいるらしく、ここまで来る間も走り続けていたのか息切れし、額には汗が浮かんでいた。 


「にゃあ……エイドさん!お兄ちゃん見ませんでしたか?」


 唐突にそんな事を言い出したルルの鬼気迫る勢いに、何事かと俺たちは顔を見合わせる。


「ルル、どうしたんだ、そんなに慌てて……ロロなら見てないよ。俺たち、これから店に行こうと思ってたんだけど」


 エイドは困惑しながらも、そう答えた。『ロロ』という知らない名前が出てきたが、話の流れからいってルルの兄なのだろう。

 返答を聞いたルルの尻尾がしゅん、と下がる。


「そうだったんですか~。でも、まずはお兄ちゃんを探さないと、フォグリアさんが……」


「フォグリアが?」


 どうしてここでフォグリアの名前が出てくるのだろう。そう思い首を傾げていると、少し離れたところからざわざわと声が聞こえてきた。

 耳を澄ますと、誰かが言い争っているような声が聞こえてくる。

 すると、ピクッとルルの耳が動いた。かと思うと突然大声で叫ぶ。

 

「にゃあああ、遅かった!」


 叫ぶとほぼ同時に騒がしい声のする方へと走り出し、その姿が見えなくなる。

 わけが分からなくなった俺たちは、再び顔を見合わせるとルルの後を追った。


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