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銀色の軌跡  作者: 黒猫
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第2話 聖国へ

宜しくお願いします。

神殿の外に出ると、そこは神殿の頂上。

あたりはいい眺めで美しい森の中。


そして、神殿を丸ごと包み込むようにドーム状の透明な膜が覆っていた。



俺は、その光景に異世界に来たんだと改めて気持ちを引き締めた。



そして、先行していたステラをみたら、神殿の縁まで行き、目をつぶったかとおもうと体からオーラのようなものを出した。



すると足元の色の変わった床石がそのオーラを吸収し、1mの正方形な姿を表し浮かび上がった。


(…あれが魔力…か?ってか、あのデカい石は何で出来てんだ?)


すると、その石は仄かに光だしステラを乗せたまま地上へと降りていった。



始めてみる現象に少し感動しながら、あのオーラみたいなものが魔力なんだと気がついた。


「魔力…か。どう使うんだ…」


異世界人なんて、ステラには言ってないし恐らくもう地上では俺たちのことを話しているだろう。


そもそも、この世界で魔力を使えないなんて子供ならまだしも、大体10歳位には魔力の流し方位は会得しているのだ。


だから、この歳でそれはあり得ない。感覚的には自転車に乗るみたいなものなのだ。


そんなことを悩んでいると、ミオが話しかけてきた。


「ね、ねぇ…アーダル。アレって魔力を出しただけだよね?」



「ん?あぁ、たぶんそうだ…。

もしかしてミオはさっきの戦闘で使い方の糸口か何かつかんだのか?」



「う、うん…たぶん。

ほらマーブルタイガー倒したとき、最後コレで突き刺したじゃない?


あの時、わたし魔力を使ったんだと思う…」


「あぁ、あの時か!どんな感覚だったんだ?」


「私の場合は、自分の中に意識を集中すると今まで感じたことのない力の塊みたいなのがあるの。

それをすこし掴んで引っ張り出すカンジ…かな?」


細部は人それぞれの感覚によるところが大きいだろうが、今まで感じたことない力を探すなら魔法なんて無い世界からきた俺たちは感じとり易いだろう。


まさか、こんなに早く今まで使ったこともない魔力をつかう時がくるとは思ってなかったが、腹を括って試してみることにした。



俺たちはステラにならい、同じ色の床石にのり目を瞑ると程なく今まで感じたことのない感覚を探し当てた。



ソレは暖かく強大な力の塊のようなもので、何故今まで気づかなかったのか不思議に感じた。



もっと自分の中に潜り、それをハッキリと認識したかったが、今は時間がない。時間をかければ怪しまれると思ったのだ。



まぁ、後で時間があるときにゆっくり自分を探ればいいと気持ちを切り替え、ミオに言われたようにそれを掴み少しずつ外に引っ張り出すイメージを持ちながら地上に降りることを考えると、床石が浮かび上がり地上にたどり着けた。





この世界の大地に初めて足をつけると、大地の底の方で何か得体の知れないものを感じ取ったが、ステラと、ステラが話しあっていた護衛騎士団の団長らしき二人が気付き、俺達のところにやってきた。



この三人の容姿を簡単に言い表せば、《エルフ》。これにつきる。



三人の肌色は白くて、耳がとがる。そして、顔は美形で近より難い雰囲気を纏っている。



体つきをみると、男の方は長身でスレンダーだが身のこなしは熟達者。

闘いになればスピードを活かした動きをするだろう。



もう一人は女性で、マントを羽織っていても豊満なバストだとわかる。


風にマントがひるがえると中の服装は官能的なものだった。


しかし、離れていても魔力の波動を感じるくらい魔力が強いのだろう。



そして、ステラを改めて陽の光の下でみると、一際美しい白磁のような肌と尖った耳は先端に行くにしたがって弧を描き、優しげな雰囲気をだしている。


これが所謂、《ハイ・エルフ》なんだろう。





そして、目の前までくると男が挨拶してきた。



「此度は、ステラ様を助けて頂き誠に有難く思う。


私は聖国アルフ第一聖騎士団長のアトム=シルヴァだ。宜しく。」



そう挨拶すると、シルヴァはにこやかに微笑み“殺気”を出しながら握手を求めてきた。



何も鍛えていなかったら確実に膝を付きそうなほどだ。



まだ(外見は)子供の俺達にソレはどうなんだ?と感じたが、俺は勿論ミオも受け流し、にこやかに握手を返そうとした。



すると、シルヴァは微かに鼻で笑ったため、少しばかりシャクに触った俺は、先程当てられた何倍もの殺気を握手に込めてやった。



すると、丁度気を抜いたところだったせいか、シルヴァはモロに当てられて膝をついた。



俺はソレを見届けてから自己紹介をした。



「俺はアーダル=ヴェラス。属性は光。で、あっちはミオ=プラキドゥス。属性は氷。

コチラこそ宜しくお願いしますね。



あぁ、それと幾ら警護中に現れた不審人物だからといって、初対面の相手に殺気を飛ばして力量を測るのはやめた方がいい。


今回みたいになった場合はどうなさるおつもりだったんです?


ましてや、俺たちはステラ様をお助けした身。貴殿方の国の品位をうたがうことになりますよ?」


そこまで一気に言うと、もう一人の杖を持った美女が出てきた。



「ホントにご免なさいね?


…で、シルヴァはバカ?


さっきステラ様からマーブルタイガーをたった二人で瞬殺したって聞いたじゃない。


しかも、ステラ様の恩人方に無礼な真似を…


この事は後で、陛下に報告しますからね。

お二方、この場は取りあえずご容赦いただけませんか?」



「まぁ、俺達は友人のステラの護衛がこの程度だってことに不安になっただけですから。


ところで貴女は?」



「あっ!申し遅れました。

私は第一聖魔法師団長のプラヴィア=ベナスタスと申します。

属性は水。

以後、お見知り置きください。」



そして、互いに挨拶し終わる頃にステラがやって来て、ずっと膝をついた姿勢のままのシルヴァを疑問に思ったのか聞いてきた。


「アーダル様、何故シルヴァは握手をしたまま片膝をついてるのですか?」



「あぁ、ちょっと手荒な歓迎をされたんで同じことをしただけだよ。」



すると、ベナスタスさんが説明し出した。



「ステラ様、またシルヴァがいつものクセを…」



「そうですか…。

その様子だとやり返されたみたいですね。



戦士職の方の悪い癖です…」



そういうと、悲しそうな顔で俯いた。



「ふぅ…。

あんたの主があんな顔してんだ。

これからはもっと控えろよ。


ふぅ…ほら、コレでうごけるだろ?」




すると、シルヴァがゆっくり立ち上がり両肩を掴んできた。



何をされるかと思ったが、目を見てわかった。



(あぁ、この人もしかして…)



「アーダル殿!先程は失礼した。



どうも、我らエルフは自分より格下とみるとすぐに相手を軽視しやすくてね。幾ら性とはいえ注意していたハズなんだが…。



いやはや、これは申し訳なかった。


ところで、魔獣の討伐も楽しいが《クレシタ》の方が、より己を高められるぞ!


私達がお相手するから、一戦どうだ?」



「シルヴァ…貴方、バカ?



いまステラ様が何を言ったかちゃんと理解したの?


ココでは、貴方のために使う時間なんてないのよ。


しかも何故、戦闘バカの道楽に私が付き合わなきゃならないのよ。



魔法職と戦士職を一緒にしないでよね!


さっさと仕度して、聖都に帰るわよ!」



「なっ!バカとはなんだ!!私は…」



《クレシタ》が何かわからなかったが、ソレを聞いたベナスタスさんは、鋭い目付きで訂正させたって事は、二人組でやる試合みたいなモノか?


事前に神からもらっていたこの世界の知識にはないからローカルな単語なのだろう。




そんな事を考えているとステラが割って入った。



「第1師団長同士がまさか、そんなことで言い争わないわよね?



仮にも私の友人であることでこの国の客人にもなる方たちの前で。」



「はっ!申し訳ありません!」

「…っ!失礼致しました。」



さっきの戦闘の時とは比べ物にならないくらいの表情と迫力で、魔力と武力の両雄をいさめる胆力に驚いた。



「さすが、皇女様だね~!すごい迫力だったよ!!」



ミオが驚くのも無理もない。言葉遣いは丁寧で大人びてはいたが、今までの年相応の振る舞いや表情からは想像できない変わり様だったからだ。



「はぁ…。

折角できたお友達の前でこんな姿は出したくなかったのですが…


って、嫌ったりしないんですか?!」



彼女がそう言うのも無理もないだろう。


彼女の地位なら同じくらい立場でないと、親が許さないだろう。



どんな子供でも幼い頃には親の言うことを聞いて育つ。


今ぐらいの歳になってやっと反抗期を迎え、親から距離をおきはじめるのだ。



従って、今までステラの友達は少なかったのだろう。



この反応からするに、いるかどうかも怪しいが…


(きっとミオは黙ってないだろうな…たぶん、それくらい受け止めらんなきゃ友達じゃない!…位は言いそうだもんな~)


そんなことを思っていると…



「なんで?

引け目に感じる事ないじゃない?


友達なら寧ろ隠されるより見せてほしいもん。


その程度で離れるようなら友達なんて言えないよ!」



…コイツならそういうだろうと予想していたが、ここまで分かりやすいヤツだとは…



まぁ、そこもいいところなんだが。



「そうだぞ、ステラ。


俺達にとってもココで初めて出来た友達だ。


やっぱり大事にしたいからな。」



そういうと、なぜかステラが俯いて…



「だ、大事にするなんて…まだ友達になったばかりですし…」



…なにやら、誤解をまねいてる気がするんだが…



「(…ミ、ミオ。俺は変なこと言ってないよな?盛大な勘違いをされている気がするんだが…)」



「(ハァ~…。“気がする”じゃなくて、完全にそっち方面に走り出したわね…)


アーダル…変なことは言ってないけど、自分の姿とステラの男性経験を考えてみなさいよ!」


えー…何故、変なことは言っていないのに、叱られなければならないんだ…そこで、ステラの耳に入らないよう小声で抗議した。


「(いや!完全に冤罪だろ!)」



「(恋した女の子は、手強いわよー?)」



く…っ、ココは一旦話題をかえるしかない。



「シルヴァさん、ベナスタスさん。これからはどうするんです?」



どちらでもいいから助けてくれ!と、言う気持ちで話題をふった。


すると、ベナスタスさんが…



「ステラ様が受けられた託宣を両陛下にお伝えしなければならないから、準備が出来次第、出発するわ。


貴方たちも当然くるのよ?(ステラ様の為にも!)


あ、馬車は一台しかないからステラ様と一緒に乗ってね!(ステラ様に春を!!)」



「そうだぞ。


貴公らはステラ様の命の恩人だ。


両陛下もお会いになりたいだろう。



それに、この森のこんな最奥まで殆ど汚れずに来るのは並大抵ではない。聖都でゆっくりされるといいだろう。


…そして、私と一戦交えよう!」



…鋭い視線から語間にベナスタスさんの心の声が聞こえた気がしたし、シルヴァさんは心の声がダダ漏れになっていた…


…殆どまともな事を言ってるのに、最後の一言で全てが台無しになっている…もうこの人、敬称つけるのも面倒に感じてきた…。



「いきなりの申し出ですが、大丈夫ですか…?」



と、ステラがキラキラした目で言ってきた。



(…この期待にはうらぎれねぇわなー…)



「あぁ、大丈夫だ。俺たちもココを探索し終わったら聖都に行くところだったんだ。これから宜しく頼む。」


「そうそう!これから宜しくお願いします!!」



“先ずは町か村へ”これは、託宣の間で話し合った進路。


まさか、皇女に会って、しかも友達になった上に恩人としてこの国の首都に招待されるとは…


(これだけ運がいいと後が恐い…)



そんなことが頭をよぎったが、次の嬉々としたステラの様子に、そうなったらその時考えようと気持ちを切り替えた。



「ありがとうございます!!お友達を招待するのが夢だったんです!


しかも、聖都までの二日間一緒にいられるなんてウソみたいです!!


私の方こそ宜しくお願いしますね!」



そういうと、優しく微笑んだ。



(…ぐっ。なんだ?この可愛さは?!

計算か?女は生まれつき女優っていうし…

いや!寧ろそうだとしてもこれだけ上手く演じてくれたら、たとえ騙されていても本望だ。)



ステラは基本的に美少女なのだ。その姿から繰り出される可愛い仕草はとても自然で嘘臭くない。


しかも、絞めるときは絞めるのでそのギャップが余計に効いてくる。





改めて周りを見る。

俺とミオの隣にいたシルヴァもベナスタスさんもそうだが、やはり護衛団のエルフ達は美男美女ぞろい。



護衛団の面々も、片っ端からイケメンやダンディ、美女や美少女がならぶ。



その中でもステラは群を抜いて可愛いかった。



ハイエルフはエルフの上位種族で、人口はエルフ全体の200分の1しかいない。


長寿で子供もあまり出来ない為だ。



また、その殆どが、皇族や公爵、貴族であり分かりやすい。

かと言って差別があるわけではない。

寧ろ、民衆はハイエルフを神聖視して大事にされている。



それは、エルフ中でも、ハイエルフはこの国の信仰である森の精霊に一番近い存在で、国の象徴とされているからだ。


そのトップに君臨しているのが、ステラの両親の王と女王だ。


また、ハイエルフには珍しい三姉妹で年頃の娘。アイドル視されても不思議ではない。



そんな子と2日も一緒の馬車なんて士気が下がるどころではない。


下手をすればゆっくり休むことすらできないだろう。


そこで、何とか抵抗してみる。



「それにしても幾ら馬車が一台だからって、流石に2晩も同じ馬車で過ごすのはマズイだろう?


俺は馬でも借りて護衛しながら景色を眺めてるさ。」



すると、シルヴァが加勢してくれた。



「そうです!ステラ様、アーダル殿も男性です!


同じ馬車で2日も寝泊まりするのは如何かと…


馬であれば、まだ余裕がありますのでそちらにお願いしてはいかがでしょうか?」



「えー。アーダル様なら大丈夫だと思うけど…でも、仕方ないよね…わがまま言ったら皆困るしね。」



「じゃ、ご飯時や休憩中位は一緒でも問題ないんじゃない?

やっと同い年位のお友達が出来たんですもの。


シルヴァもそう思うでしょ?」



ベナスタスさんは少なくとも恋愛に関して、ステラにとってのイイお姉さん役のようだ。


俺にとっては困ったことなのだが…



ベナスタスさんがそう言うと、シルヴァは頷き俺の肩に手をおき、「すまん…力になりきれなかった」と、小声で言い他の騎士団の方へ戻っていった。


案外、シルヴァも闘いが絡まなければイイやつのようだ。





そして、護衛の準備が整い聖都アルフの首都シルワタースに向かうことになった。










神殿からのびる石畳を進んだ。途中、何もせずに連れられるのは性にあわないし、シルヴァから実力を認められたこともあり、俺とミオは殿しんがりを勤めさせてもらう事になった。



そして、巨木が立ち並ぶ森を進み日が傾きはじめたころ、子供くらいの生き物が木々の上から後を追ってきているのを感じた。



日が傾きはじめたと言ってもこの深い森の中では夜の行軍と大差はない。



現に、すでにシルヴァが夜営地を見つけるために団員に命令を出している。



そんな中での怪しい生き物の出現だ。警戒して損はないだろう。



「…ミオ、気付いてるよな?」



「勿論!木の上のヤツでしょ?数は40匹くらいかなー。距離は後方、50mってところだね。」ミオは気配察知に関しては、俺よりも鋭い。



「アーダル、前より気配察知の範囲が広がったんじゃない?」



前まで俺は感じてせいぜい10mくらいだった。



「こっちに来てから感覚も鋭くなったみたいだ。ミオはどのくらいからわかってたんだ?」



「う~ん。

ハッキリとわかったのは500mくらい後ろだったかなー。まだ、今みたいな集団にはなってなかったよ。


…でも、500mも後ろを関知できるって私もこの能力が上がったみたいだね。昔はがんばって100mが限度だったもん。」



そして、樹上を見上げるとミオの言う通り、無数の赤い点が木々の隙間から覗いていた。



「ミオ、念のため先頭のシルヴァにアレが何なのか聞いてきてくれないか?俺は牽制しておくから。」



わかった!と言うと馬を操り、団員の隙間を縫って先頭に向かった。


“馬”と言ってはいるが、この世界でそういう存在なだけで、地球の馬とはかなり違う。



種族名はエクウス。

その脚の数は六脚。


更に首から上は馬のようだが、頭にはユニコーンの様に角が一本突き出している。


しかし、その角は宝石のように透明で個体により色がちがう。


さらに、後頭部から肩にかけての銀の鬣の中に金属の角のようなものが突きだしている。


体の大きさは地球のサラブレッドの2倍近い。脚や首、体側には金属のプレートの様な皮膚になっている。


力は強く、脚の早さは石畳のように整備された道なら自動車と並ぶかもしれない。



その為、今のような人数の行軍だと先頭までは地球の単位で言えば5㎞ほど距離がある。



「5分くらい押さえつけとけばいいのか…」



そして、威圧する為に殺気を出した。


すると、ヤツラは一旦引いたかと思うと一気に飛び掛かってきた!



「ちっ…!逆効果だったか!!」



どうやら、地球の生き物よりも好戦的なようだ。


まずは、4匹飛んできた。そして、馬上で抜刀し、迎え撃った。



「ギェーーッ!!」

「ギャッ!!」

「グギャ!」

「ピギャ!」



1匹目を胴薙ぎに。2匹目を袈裟斬り、3匹目を逆袈裟、4匹目を頭から両断した。



すると、片っ端から黒い霧になって樹上に上がっていった。



「コイツら、魔獣だったのか…!」



すると、何故か他のヤツラが引いていった。



しかし、何故カードがでないのか不思議に思いながらも、未だに一定の距離を保ちながらついてくるヤツラに警戒していた。



そして、暫く後方を注意しているとシルヴァがやってきた。



「アーダル!

大丈夫か?!話を聞いたが、そいつらは恐らくエダークスだ!


ヤツラは最初数匹で襲ってきたあと、一旦引いて、暫く様子を見た後で大群で襲ってくる。


ソレを撃退したとしても、もし殺していたら霧になったヤツラが集まり、高確率でイマーゴーという魔物になって再びやって来る。


イマーゴーは、ランクD~SSSまでいるが、光属性の魔方か焔属性魔法の《葬炎》、それと、極稀に見つかる神器でしかダメージを与えられない。

厄介な魔物だ。


イマーゴーが出ないようにヤツラを殺さずに無力化しなくてはならない。

ココに来る途中で部隊員にはフルレイド陣形を組むよう言ってある。


俺とベナスタス、アーダルとミオはステラ様の護衛と遊撃を交代でやる。期待しているぞ!!」



そういうと、丁度広場のような場所に出た。



そして、フルレイドの陣形が5つ出来たところで全方位から同時に襲いかかってきた。



「アーダル!私達は出るからステラ様をお願いネ!」



「アーダル!ステラ様を頼んだ!!」



ベナスタスさんがそう言うと、大気が歪むほどの魔力を放出し、ベナスタスさんを中心にして空中にドーム状の光の陣形が顕れた。



シルヴァは、詠唱しているベナスタスさんを守るため襲い掛かってくる魔物を無力化していった。


《…、魂を眠らせる氷の射手。祖はグラキエース、表すはゲローサギッタ!!》



そして、次の瞬間光のドームが分裂し形を変えたかと思うと、無数の氷の棘になってエダークのス一体一体に飛んでいった。



それが突き刺さると、刺さった場所を中心に凍りついていった。



ソレを3回程繰り返すと、全てのエダークスが凍りついた。



こうして、闘いが一段落すると部隊員達が凍ったエダークスをまとめて一ヶ所に集め、それらを中心に周りを魔法隊が囲んだかと思うと、全員で詠唱を始めた。



すると、ベナスタスさんがこちらに来てこれからすることを教えてくれた。



「これから《葬炎》の詠唱をするわ。魔法隊は勿論、騎士隊からも魔力をもらう。その間、私達は無防備になるから、護って貰っていいかしら?」



俺達は了承すると、早速詠唱が始まった。



《神代から伝わる焔、祖はフラムマ、カロル、カリドゥス、エールプティオー…》



すると、無数の赤い光のラインが空中で舞い始め凍り漬けのエダークスに纏わりついていった。



《…贄はカテルア=ポテスタース=マギーア。ユーラティーオ=モルス!!》



そして、詠唱が終わる間際、各隊員から迸っていた魔力の歪みが赤いラインに吸収されていった。


次々に隊員が膝をついて行くなか、赤いラインが高速で回転し始めると空にスゴい早さで打ち出されたかとおもうと、今度は空から蒼い光線がエダークスに向かって降り注いだ。



光が収まると、エダークスが集められていた場所には白い煙とカードが残っていた。



こうして、部隊戦闘は終わりを迎えた。










戦闘跡地は神聖なエリアになったとして、帰路一日目の夜営地についた。


俺は、慣れない土地で疲れたのかいつの間にか柔らかな草の上で寝ていて、ミオとステラ起こされた。


すでに夕飯時だったのだ。



「ふわぁ~…

大分寝てたみたいだな。起こしてくれてありがとう」



「大分疲れていたみたいですね。良く眠れたようにで良かったです。」



「あぁ、ステラも無事で良かったよ。ミオもお疲れさん。」



「うん!お疲れ~。

魔法は流石にスゴかったねー!!

葬炎なんてスッゴいキレイだったもん!

私も早く魔法使いたいなー…」



「えっ!!アーダル様とミオは魔法を使ってなかったんですか!?」



「あ、あぁ…。

魔力の放出位は出来るけどな。


アッチでは自分の腕だけでやってきたから。


だけど、ウチの流派は奥義の会得には魔法が必要でさ。


学園に入ろうと思ってでてきたんだ。」



「なるほど。それで、魔法が使えないのですね?」



「そうだ。


だが、学園に入るには後ろ盾が必要だろ?


だから、強い魔獣を討伐してギルドに後ろ楯になってもらおうとおもってたんだ。」



すると、ソレを聞いていたベナスタスさんがこっちにやってきた。



「貴方たち、学園に入るのにまだ魔操の儀を受けていないの?


アソコは少なくとも初級魔法を使えないと入学できないわよ?


いいわ。今回の件で、私からのお礼にやってあげる。


ふたりとも、こっちにきて。」



そういうと、野営地から出て草を掻き分けながら道なき道をしばらく歩くと、暗闇に支配された森の中に仄かに光る場所をみつけ、ベナスタスさんはその中に入っていった。



俺たちもはいると、そこは幻想的な光景が広がっていた。



そこは窪地で、森の木々で覆われていた頭上はポッカリと空いていて、月明かりで照らされている部分には水色と白色の光を放つ草で覆われていた。



「ふぅ…貴方たち、加護でもあるのかしらね。こんなに大きな〈ステッラ=フロース〉の群生地にであうなんて。」



「そんなに珍しいの?」



「この子達は、妖精の卵なのよ。星の光を3000日浴び続けると妖精になるの。


その子達が2種類も一緒に育つなんて滅多にないわ。


しかも、アーダルは光属性っぽいし、ミオは水属性っぽい。

簡易じゃなく、正式な魔操の儀には自分と同じ属性の子を体に宿す必要があるのよ。

だから、貴方たち二人とも正式な魔操の儀が出来るわ。


そして、光属性である白色は1000箇所回ってやっと見つかる程度なのよ?」



「そんなに珍しいんだー!運がよかったね!!」



「そうだな。それで、どんな儀式なんだ?」



「先ずは協力してくれる子に集まってもらうの。


それにはどの程度の魔力を練れるかにかかってるわ。その練度によって集まってくれる子の数が変わるの。」



「さ。先ずは器用そうなミオ。やってみて。」



そして、青い草が生い茂る中心に歩かせ魔力を放出するように言った。


最大限の魔力を出すようにとも。



ミオが目をつむり、少しすると大気が歪みだしてミオが光出した。



すると、草から光の粒が出て、光っていた草が消えていった。光の粒はミオに向かっていき、ミオの周りを回り始めた。



それに気づかないミオは更に魔力を練り続け、ついには淡い水色の光を放ち始めた。



「スゴいわ…

あんなに濃い魔力、なかなか出せるものじゃないわ。練度もすごい。


コレはもしかすると精霊を従えるかも…」



そうつぶやくと、回っていた光の粒が人の形を成し、ミオの前に立ったかと思うと今度はミオの体に入っていった。



すると、ミオの肌に蒼い光の幾何学模様があらわれ少しすると消えていった。



それが終わるとミオはその場で倒れ込んだ。



「ミオっ!!」



俺は思わず駆け寄りミオの安否を確認した。



「…ぅっ…アーダル…。


体の中を力が駆け巡ってるカンジだよ…」



「大丈夫か?!」



「だ、大丈夫…。」



そういうと、ミオは苦しそうに浅い呼吸を繰り返した。



「嘘おっしゃい。あんな大規模な魔操の儀をしておいて意識があるだけスゴいことなのよ?



しかも、


ゆっくり休んでなさい。」



ベナスタスさんがそういうと、ミオは頷き目を閉じた。



「さて…と、次はアーダルね。貴方はあっちよ。」



そう言われ、俺は白い光を放つステッラ=フロースの方へ行きミオと同じように目を瞑った。

如何だったでしょうか?


次回も宜しくお願いします。

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