もう一回
僕の周りを包む、黒い空間。
何にも見えなくて真っ暗。でも、なんだか心地いいような……
ってあれ?
僕はダイブしてこの世とおさらばしたはずじゃなかったっけな?
いや、間違いない。確かに僕は死んだ。
じゃぁ、僕は何処に居るんだ?
ビシバシベシと、自分の頬を平手で叩く。
思った以上に反響して、ビシバシベシがどんどんこだまする。
「普通に痛いんですけど……」
痛みを感じるって事は、もしかしてまだ死んでない?
「……まさかの夢落ち?」
「なわけねーだろぉ」
突然、暗闇から野太い男の声が響いてきた。
夢落ちじゃないとすると…………
あぁ!もうマジで分からなくなってきた!!
逃避を掻き毟る。
「じゃぁ、ここは?」
試しに聞いてみる。答えてくれるかな?
「地獄」
おぉ親切!でも、内容は不親切。
というか、地獄?
「まじ?」
「大マジ」
うん。マジなんだろうな。
でも、僕地獄に落ちるほど悪いことしたっけかな?
まぁ、カマキリの羽を抜いたことぐらいはあるけど死ななかったから大丈夫。
…………果たして僕は何を根拠に言っているのだろうか。
それにしても地獄かぁ。
てことは、死んだんだよね?じゃぁ、何故痛みを感じるんだろう?
「そりゃぁ、もちろん罪人を痛めつけるのに痛み感じなかったら意味ねぇだろ?」
「あぁ、なーるほど」
変に納得してしまった自分に納得。
でもさーでもさー、地獄ってなんか悪い人しかいないイメージあるじゃん?
なのに何で僕なのかな。勘違いも甚だしい。
「お前の罪は、自分で自分を殺したこと。 自分で自分を殺すって事は神に歯向かうって事さ」
神に歯向かう?
むしろ、毎年1円づつお賽銭にいれてたから信仰しているほうだと思うけど。
「つまりどうゆうこと?」
「つまりだな、全ての命は全部神の物なんだよ。 だから、命を無くすのも生かしとくのも全て神の仕事。 だからお前らの仕事じゃないのさ」
へー。つまり、神様の仕事を奪ったからその罰ってことね。
まぁ、いいや。どうせ、死んでるし。
ただ痛いだけで他にどうこうなるわけでもなかろうに。
「で、僕への罰は何?」
神に歯向かうって事は、舌抜きとか? それとも火あぶりの刑? いや、針山地獄の10往復とか……
うー無。面倒くさい(特に一番最後)
「お前への罰は、もう一度生きることだ」
は?今なんて言った?
もう一度? え?
「今なんて……」
「聞こえなかったか?ならもう一度言ってやる」
スゥッと、息を吸う音が聞こえた直後だった。
「お前はもう一度人生をやり直すって言ったんだ!!」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
男の声に負けないぐらいの悲鳴とも言える声を張り上げる。
折角死んだのに、もう一度生きる?
「絶対無理」
「お前に拒否権はない。 強制だ。 もう一度生きれるんだぞ? 何が不満なんだ?」
何が不満って生きることが不満に決まってるじゃないですか!
また、生きるってどれだけ僕に負担がかかると?
RPG風にいったら、城から出た瞬間にHPが1になるのと同じだよっ!?
「何を意味を分からないことを…………ともかく、お前はもう一度生きてもらう。 じゃぁな」
「ちょっと待ってください!! 最後に質問を!!」
「あぁ? 時間が無いのに……ったく、早くしろ」
男は面倒くさそうな声を上げたが、なんとか質問には答えてくれるようだ。
じゃぁ、何から聞こうか。
うーん、一杯あるけど……
「僕がその世界で自殺したらどうなります?」
「俺とこんにちは、だけどめんどいから普通に死んでくれ」
めんどいとは失礼な!職務放棄だ訴えてやる!
とまぁ、どうでもいい怒りは置いといて。
「じゃぁ、僕がもう一度生きるのはどんな場所?」
「知らんそんなもの!神が決めるこった」
また神か。お賽銭に500円入れとくからいいところをお願いね。
「じゃー最後!」
「おう!なんだ!」
「なんで僕が思っていることがわかるの?」
我ながら馬鹿げた質問だと思ったが、好奇心には勝てないので聞いておく。
「今更だな……まぁ、企業秘密だ。残念だったな、タイムアップ! それじゃあな」
そういい終わると何も見えないが何かが消えた気がした。
ちなみに、さっきの答えで一気に萎えた。
そして、何も無かった黒い空間に何かが見えるようになる。
『ドア』だった。
普通の樹で出来ていそうな木目がついたドアが目の前にいつの間にか出来ていた。
「入れって事か?」
とりあえず、ここにいても仕方ないのでドアノブを握り、捻る。
「さーて、じゃぁ面倒くさいけどもう一回生きますか~」
頭をもう一度掻き毟って。
でも、なんだが気持ちは新鮮で。
そして、まばゆい光の中で僕は気絶した――――
まぁ、短めなんですよ(ぁ