交えないもの
別キャラ視点です。
暗い暗い倉庫のような場所。
でも、本当は倉庫じゃないかもしれない。
しかし、何なのかは分からない。
ここは、只の『空間』なのだから。
「おい! てめぇが、フィグか!?」
また、来たのか……
ほぼ毎日毎日、俺の元にはこのような者たちが訪ねてくる。
いや、訪ねるというよりは襲いに来ると言った方が正しいのか。
今回は、二人組みか。
ここは、シューバー大陸首都エルバザールのとある場所。
正確には言えない。
何故なら、分からないからだ。
俺にも。恐らく、コイツらにも。
この場所は来ようと思って来れる場所ではない。
決まっているのだ。
ここに来れるのは、運命に選ばれた者のみ。
ここに俺がいるのも運命。
コイツらがここにいるのも運命。
そう。すべては、最初から決まっているのだ……
「黙ってないで答えやがれ!!」
「そうさ。俺がフィグ。呪われし者、スケアル・フィグだ」
「やっと、見つけたぞ! 俺たちは首都の指名手配板を見てお前を捕縛しにきた! 大人しく捕まってもらうぜ!」
「もし、君が俺を捕まえることが出来たら、それは運命。従うよ。でも、もし捕まえることが出来なかったら……」
フィグはそう言うと、暗闇の中の一角を指で指す。
男たちがその方向へと恐る恐る視線を向ける。
そして、男たちの顔が驚愕へと変わっていった。
「な……なんだ、これは……?」
「て……てめぇ……」
男たちの態度が変わる。
「やっぱり、お前たちは俺を捕まえることは出来ないみた……い…………だ……」
そう言い終えるかいい終えないかのうちに、フィグはガクンと倒れこむ。
「な、なんだいきなりっ!? お、おいっ!」
男がフィグへと駆け寄り、起こそうとするその刹那。
男の四肢が飛び散り、赤い液体が噴出した。
その異様な光景にもう一人の男は唖然とする。
「ひっ!? て、てめぇ何をしやがった!!」
男が悲鳴混じりに叫びだす。
『我の名前は……呪神ジャグラ…………全てを呪い、全てを憎み、全てを壊すもの。貴様は我を恐れるか? 崇拝するか?』
「ひぃっ!?」
明らかに、先ほどまでのフィグとは違っていた。
凄まじいまでの殺気と憎悪。
まるで、この世の全てを憎むかのようなそんなオーラを醸し出している。
そして、フィグの全身には赤黒く文字が輝いていた。
「す……崇拝します! だから、どうか、命だけは、いの……」
『ならば、キエロ』
フィグがそう言い放つと、男の身体は足の先から少しづつ暗闇に染まっていく。
「嫌だ……まだ、死にたくない。嫌だ、嫌だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その絶叫を残し、男の身体は全てが暗闇の呑まれていった。
『フ……フフフ……ハハハハハハハハハ!』
フィグは狂ったようにそう叫ぶと、またガクンと急に地に崩れ落ちる。
そして、赤黒く輝いていた文字はその輝きを失い、さっきまで発せられていた殺気がまるでなかったかのように消えていく。
「ハァ……ハァ……やはり、俺は人と運命を共同してはいけない存在…………」
そして、またその『空間』に新たな『魂』が加わった――――