セコいけど……
遅れました。すいません。
「あの……」
「え? 何ですか?」
「いや、何ですかじゃなくて。何でこの状況で笑顔なんですか?」
「だって、貴方が守ってくれるんでしょう?」
「そんな無茶苦茶な!?」
はい。というわけで早くも死亡フラグが立ちましたね。
ここは、首都エルバザールへと向かう途中にある森の中。
神秘的な雰囲気に包まれていて、とても過ごし…………にくい。
目の前には筋肉モリモリで脳筋なんじゃないかと思うほどに、屈強な人っていうか最早それを超越しているような…………
な方たちが思いっきり怒気を視線に込めて送っているわけでして。
本当に、もう生き返ったのにまた死亡って感じです。
そして、こんな状況に立たされながらも僕が守ってくれると信じて笑顔のミヒ。
いや、期待に添えなくて残念ですけど僕の戦闘能力は0です。
それでも、防御力と素早さなら逃げるために鍛えてますけど何か?
まぁ、攻撃力は0のいわゆる盗賊と賢者の真ん中です。はい。
閑話休題。
今、考えるべき事はこの男たちをどうやって倒すか。
では無くてこの男達からどうやって逃げるか。
一番手っ取り速いのは、ミヒを連れてさっさと逃亡。
ただし、ミヒが男達から逃げられるかわからないし、この選択をしてしまうとミヒの僕への信頼が世界恐慌を起こすのは確実なのである。
かといって、この男達を倒すのは…………
新城家秘伝技を使えば一か八か倒せる可能性もある。
正確には、相手が油断したところで逃げ出すのだけど。
まぁ、これを使ってもミヒの僕への信頼がオイルショックなのである。つまり、八方塞ってわけです。正直、僕一人なら何とか出来たんだけど……
そこで、チラッとニコニコ顔のミヒを見て溜息を零す。
いや、別に邪魔なんて思ってないよ?
「うーん、どうしたものかなぁ……」
普通は、こういう場面では空からヒーロー的なのが飛んできてコイツらを瞬時に撃退してはっぴーえんどー。わーいやったね。
に、なるはずなのだが、これは現実なのでヒーローはきませんね。
じゃぁ、やっぱりこれしかないのかなぁ。
僕は空を見上げ男達に向き直る?
「観念したのか? だったら、そろそろお前には寝てもらわなきゃなぁ!」
ハハハと、男たちが下卑た笑いを僕に向ける。
ん、お前って事はミヒは対象に入ってない?
あぁ、そうか。コイツらは…………
うん。二度と出来なくしてやろう。
「残念だけど、寝るのは僕じゃない。君たちだ」
あぁ、一度は言ってみたかったこの台詞。
男ならだれもが憧れる救世主っぽい台詞。
「あぁっ!?」
男たちは案の定逆上して、襲い掛かってくる。
うーん、何だか某ロボット漫画のいじめっ子に見えてきた。
男の内の一人が空気を裂く音でも聞こえてきそうなほど鋭く拳を突き出す。
想像以上に速いが、僕は天性の逃げ根性でかわす。
「結構危ないかも……」
「おらおら、ドンドンいくぜ!!」
男の拳をよければ別の男の拳が飛んでくる。
なかなか、スキを見出せない。
男たちの攻撃を必死にかわすも、これでは防戦一方でいづれは捕まる。
どうすればいい?
宰はそこで、名案を思いつく。
ちょっとセコい気がしないでもないけれど……
「××が××でそこを歩いてる!!」
「「「な、なにぃ!?」」」
「えっ!? いきなり何を……」
「今だ!」
男たちの注目が逸れた一瞬の隙をついて、真正面にいた男に素早く蹴りを繰り出す。
「はぉ!?」
男は情けない叫び声をあげると、うずくまるようにして崩れ落ちた。
ちなみに、何処を蹴ったかは企業秘密です。教育上宜しくないので。
「逃げるぞ!!」
俺は蹲っている男を飛び越えてミヒの腕を掴み、叫びながら走り出す。
「あぅっ、ちょっと待って……」
「グズグズしている暇は無いんだ! 早く男たちから離れないと!」
ミヒがその後も何かを言ったような気がしたが、それは無視して必死に走り続けた。