狭い正方形の浴槽に瀞の塩を振り掛けると、師匠阮げん胤いんだった筈なのに師獅し腥せい匠阮げん胤いんじゃ無くなった!?
師獅し腥せい匠阮げん胤いんだと思っていたら、浴槽の中にギチギチに詰め込まれている怪異に変わっていた。
「 ど…どうなってるの!?
確たしかに師匠だったよね?
何なんで………… 」
「 ハナちゃん、浴槽から離れて!
怪異が見当たらなかったのは “ 昼ひる間まだから ” じゃなかったんですねぇ。
御札を使ってみましょう 」
「 対話もしないで? 」
「 ハナちゃん……こんな状態の怪異とま・と・も・な対話が出来ると思いますか?
私は無理だと思いますけどねぇ 」
「 た…確たしかに…………水も抜けないし…… 」
岱だい舘かんさんは狩かり衣ぎぬの袖から御札を出だすと浴槽の中に御札を落とす。
水が張られている浴槽に御札を落としたら、溶けちゃうんじゃ…………と思ったけど、御札はユラユラと水面に浮いている。
「 水に濡れてる筈なのに文字が滲にじんでない?
どうして?? 」
「 水に強い御札なんじゃないですか?
御神木とかに使われている白い紙も雨に濡れても平気じゃないですか。
防水性の御札なんて高そうですねぇ 」
「 岱だい舘かんさん、御札の色いろが変わってますよ!
さっき迄は白かったのに、灰色に染まってる! 」
「 ハナちゃん、水の量も心無しか減ってるみたいですよ。
もっと御札を入いれてみましょう 」
「 勿体無い気もするけど……仕方無いよね? 」
岱だい舘かんと私は持っている御札を少しずつ浴槽の中へ入いれて行く。
真まっ白しろい御札の色いろが次つぎ々つぎに灰色に染まって行く。
灰色から黒色に変わった御札は水に溶けて消えてしまった。
「 御札が水を吸収してくれてるみたい…… 」
「 怪異の数かずも減って来きてますね。
ハナちゃん、動画を撮とって阮げん胤いんへ送りましょう 」
「 あっ!
そうだよね? 」
私はスマホスマートフォンの動画機能を使って、浴槽の様子を撮とる。
岱だい舘かんさんは浴槽の中へ案あん配ばい良よく御札を入いれてくれる。
「 浴槽の中、何なにも無くなりましたね 」
「 ハナちゃん、浴槽の底に何なにか落ちてます 」
岱だい舘かんさんは浴槽の底に落ちている “ 何なにか ” を拾うと見せてくれる。
「 …………鍵??
どうして浴槽の下したに鍵が有るの? 」
「 分かりませんけど……何ど処こに使う鍵でしょうね? 」
「 鍵が掛かってる様ような部屋なんて無かった筈だけど…… 」
「 折角ですし、探してみましょうか 」
「 分かりました!
嫌いやですけどね!
鍵を写しゃメって、師匠に送っとくね 」
鍵の写しゃメを撮ってから、LINEライン画面に貼り付けて、鍵に合うドアを探してみる事をコメントする。
[ 浴室 ]から出でて、鍵に合うドアを探す。
まるで【 不思議の国のアリス 】みたい。
「 ハナちゃん、[ 台所 ]の床に鍵の掛かっている床下収納の扉が有りますよ 」
「 えっ?
其そ処この鍵って事?
床下の収納扉に鍵なんて付いてます? 」
「 昔に建てられた《 旅館 》ですからねぇ。
それに従業員と一緒の生活をしていたなら、防犯の為に付けるくらいはしたかも知れませんよ? 」
「 確たしかに?
………………何なんか開あけるの怖いな……。
さっきの浴槽の事が有るし…… 」
「 あれは心臓に悪いですよねぇ。
偽者で良よかったですよねぇ 」
「 本ほん当とに!
寿命が縮んだかと思った!
でも──良よく “ 師匠じゃない ” って分かったよね?
凄いんだけど!! 」
「 あぁ、あれですか。
実じつはスマホスマートフォンに阮げん胤いんからLINEラインが入はりましてね。
いやぁ~~グッドタイミングでしたよねぇ。
お蔭で騙されずに済みましたよ 」
「 えぇっ?!
師匠から連絡が合ったの?
私のLINEラインには既読が付いて無かったのに! 」
「 あはは──。
何なんかLINEラインを見る処どころじゃなかったみたいですよ 」
「 師匠ったら何なにしてたんだろう? 」
「 この《 廃旅館 》は8階建だてですからねぇ。
2階以上の階かいで何なにか起きていたのかも知れませんよ?
心霊スポットって昼ひる間までも来くる人が居いますからねぇ。
人為的なトラブルに巻き込まれたりとか有るかも知れませんよ 」
「 だったら相手に “ 御愁傷様 ” かな。
師匠は自分が気に入いらない相手には容赦しない人だから…… 」
「 へぇ?
そうなんですか?
どうして私は阮げん胤いんに気に入いられたんでしょう?
ヤクザなら警戒されて嫌きらわれてもお・か・し・く・ないのに…… 」
「 師匠にメリットが有るからかな。
『 悪あく人にんを横流ししてくれ 』って言われたでしょ? 」
「 ははは……。
まぁ確たしかに悪あく人にんには思い当たりは有りますけど…………引き渡した後あとが恐こわいなぁ…… 」
「 本ほん当とうに横流しなんてしないでくださいよ! 」
「 しませんよぉ……。
何ど処こで足が付いちゃうか分かりませんからねぇ……。
ハナちゃん、離れてください。
私が開あけますから 」
「 う…うん…… 」
岱だい舘かんさんは手に入いれた鍵を使って、床下収納の扉を開あけた。
「 階段が有りますねぇ。
此こ処こが最後の[ 地下室 ]かも知れませんねぇ 」
「 [ 地下5階 ]が無くて良よかったけど、床下収納に階段を作るなんて…………広いって事? 」
「 階段が在るからって広いとは限りませんよ。
下おりてみましょう 」
「 下おりるんだぁ……。
もう下おりたくないのに……。
第一、真ま弓ゆみさんはこ・ん・な・所には来こなかったんじゃないの?
だって鍵が掛かっていたんだから── 」
「 そうなんですけどね。
何なにが起きるか分かりませんし、阮げん胤いんにLINEラインをしてから下おりましょう 」
「 床下収納の写しゃメも撮とって、下おりる事を書くね…… 」