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快適に目覚めたテラは、パジャマに着替えているのを確認して、フェムトに心のなかで礼を言った。


(昨日もベッドに運んで、着替えさせてくれてる...ありがとう、フェムトちゃんだね。)



テラは身支度をして、朝食をとった。


「フェムト〜、ちょっと行ってくるからね。」


2階にの自室にいるフェムトに声をかける。


フェムトが部屋から顔を覗かせて聞く。

『今日の帰りは早いのか?』


「今日はどうかな、早いかも?」


『そうか...』


(多分、もう湖の泥が用意されている気がする......)





テラは王宮の調剤室に着いて、自分の机の上を片付けていた。

調剤室のドアが乱暴に開く。


「おい!」

(声で誰かわかるって、私ってこの人のこと...よっぽど嫌いなんだな)


「何か?」

テラは不快な声音を隠そうともしない。


「私が呼んでいるんだ、こっちを向け平民!」


テラは大きくため息を付いて、片付けの手を止めた。


面倒くさそうに、振り返る。


「モラド王子殿下、私は忙しいんですが...」


モラドはテラの物言いに青筋を立てる。

「お前、私が暇なような言い方をするな!」


「お忙しい王子殿下が、平民の私に何の用でしょうか?」

テラはまた片付けを始める。

「お前のせいで、湖の泥を運ばされたぞ。」


(ネフライト国王、モラド王子にやらせたんだ〜) 


テラは淡々と対応する。

「そうでしたか、泥はどこですか?」


「城門の前に置いてある。」

テラがそこに向かおうとすると、腕を取られた。

「何か?」


「クエラ嬢が謹慎処分になったのだ、お前から父上に掛け合え。」


「王子殿下、私は陛下から命じられた仕事があります。もうすぐティルケル卿が泥の回収に来られるので仕事を終わらせたいのですが...」


「私も、付いていくぞ。」


テラは、城門までモラド王子と向かうことになった。

「だいたいお前は、王族に対する礼儀がなっておらんぞ。クエラ嬢を見習え、回復の魔力を使えることをひけらかす事なく慎み深くている。」


「へいへい。」

(しまった...心の声が口から出ちゃった〜)


「お前は言ってるそばから......」

モラド王子がため息をつく。


城門に着くと、荷馬車の荷台に大きな木箱が載せてある。


御者がテラが来たのを見て、木箱の蓋をずらす。


「これぐらい開けたらいいでしょうかね?」


「この荷台に上がりたいのだけど...」

テラがモラド王子を見る。


「私は、王子なんだが......」

モラド王子が不満そうに手を差し出す。


テラはその手を見て首をかしげる。


「膝を折って地面に両手を付いてください、背中に足を乗せるから。」


モラドがテラの言った言葉を想像してカッとなる。

「おい!お前、私は王子......」


テラがモラドの言葉を遮る。

「早く。」


テラの抑揚のない声に圧倒され、渋々膝を地面に付ける。


(わあ......こんなこともしてくれるんだ。私に協力するように国王に厳命されたんだね。)


モラド王子の背中に足を乗せる。


モラド王子が怒りながら、背中に靴跡のついたシルクの薄手のシャツを手ではたく。



テラは荷台に上がって、箱の中を覗く。


泥に触るとひんやりしている。

箱3分の2ほど泥で埋まっている。

ぬちゃりと手を入れた。


(さ、集中)


テラの体を魔力が巡る。

魔力の放出で髪が軽く波立つ。

体の表層が淡く発光する。


モラド王子と御者が、不思議な光景を口をポカンと開けて見詰めていた。


魔力を巡らせ放出するとその間は体温が上昇する。

顔が火照るのが自身でわかるぐらいだ。


(これぐらいか?)

泥がボコッと跳ねた。微生物が活性化しているのがわかる。

テラが、荷台から下りるのに飛ぼうとすると、手が差し出される。

モラドが手を差し出している。


(え...いいのか?)


テラが迷っていると、もう一つ手が差し出される。


「ティルケル卿。」

「テラさん遅くなって、済まない。ベルデ閣下に挨拶をしてきたもので。」

テラはせっかくなので、ティルケル卿とモラドの手を借りて荷台から下りた。


「おい、なんで私の方を泥の付いた方の手で掴む?」


モラド王子が泥の付いた手をこすり合わせ、むくれながらテラに言う。


「後ろ向きには下りれないでしょう。殿下がたまたま泥付きの方に、手を差し出されたから。」


モラドが、手に残った泥をハンカチを出して拭う。


「ティルケル卿、蓋を開けたまま運んで下さい。閉めちゃうと中が充満して爆発しちゃうかも...」


「そんなに...これは楽しみだな。魔力水なしでもいけそうだな。」

「私もそう思います。」





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