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お昼からレーツェル国王と面会だったので、朝から支度が始まる。


侍女が2人がかりで、国王と面会するためのドレスをテラに着付ける。


フェムトが用意したドレスは、ピンクベージュを基調として、ゴールドで花の刺繍がしてある。


立ち襟の内側に繊細なレースがあしらってあり、上半身はタイトに、スカート部分は上品なボリュームをもたせてある。


侍女がテラの暗めの赤い髪を編み込んで片側に垂らす。


テラが支度を終えてリビングに行く。


準備が終わったフェムトが長い足を組んで、ソファで待っていた。


フェムトは、ブラウスの胸元にひだ飾りが付いている白のシャツと、金糸で刺繍が施されているチャコールグレーのジュストコールを着用している。

同色の膝下丈のズボンに靴下と革靴を履いていた。


テラはドレスを贈ってくれたフェムトに披露をしたくてフェムトの前で、くるりと回ってみせた。


フェムトが、あどけない振る舞いをしたテラを見て目を細める。


「美しいテラ、もう一度回って見せてくれ。」

ソファから立ち上がりテラの手を取り、もう一度ターンさせた。


テラもフェムトの方を見上げて微笑む。

「フェムトも素敵だね。」


侍女が戯れている二人を見て微笑んだ。


「仲がよろしいのですね。そろそろ時間ですので、ご案内いたしますね。」


テラとフェムトは見つめ合って笑う。


(自然にしてたけど、フェムトのおかげで仲睦まじい感じに見えたみたい、よかった。)


侍女が扉を開けると、ジークとエルデがもう支度を済まして待っていた。





テラはフェムトのエスコートで、侍女の後を付いて進む。

後ろからジークとエルデが付いてくる。


部屋から出て、廊下を真っすぐ進んで右に折れると応接室があった。

豪華な装飾が施されている木製の両開きの扉があり、近衛兵が扉の両側に立ち警備している。


侍女が近衛兵に頭を下げる。


近衛兵が扉をノックすると、家令のクレーメンスが中から扉を開けた。

「お待ちしておりました、中へどうぞ。」

フェムトが会釈したのを見て、テラも会釈する。


(はあ…もうすぐ苦手なカーテシーを披露しなきゃ)


応接室に入ると、椅子に体格の大きな男性が威厳のある風に腰掛けている。


フェムトとジークが会釈した。


「久しいなフェムト卿、ジーク殿。そちらのお嬢さんが話しにあった人かね。」


「レーツェル国王陛下、拝謁の機会を賜りありがとうございます。」

「妻を、紹介させていただきます。」

フェムトがテラの腰に手を添えて合図をした。


「初めまして、レーツェル国王陛下。テラと申します。」


テラはカーテシーを披露した。


ドレスにコルセット、ヒールの安定の悪さに体幹がグラグラ揺れる。

周りから見ると、起き上がりこぼしのように左右に揺れる。



(足元はドレスで隠れているし、スクワットの体制でもバレなかったんじゃないかな…そっちのほうが安定がいいよね、絶対。)


次があればそうしようと決意する。



レーツェル国王の視線がテラの体の揺れに合わせて一緒に目で追う。

レーツェル国王は獅子の獣人だ。

テラの動きに反応してしまうようだった。

レーツェル国王が一度目を逸らして、息を吐き出し気をそらす。


今度はテラの真剣な表情を見て堪えきれず笑い出す。


「テラ嬢……ハハハ。済まない笑っては申し訳ないが。3歳のレディでももう少し…まともハハハハ…失礼。」


「陛下、妻が失礼しました。」

フェムトがテラが自分でもとの体制に戻れないと察して、テラの腰を支えて揺れを止めた。


陛下が目を丸めた。

「テラ嬢ではなく、テラ夫人だったか…」


後ろでは、まだジークとエルデが笑いを堪えていた。

レーツェル国王がジークとエルデも夫婦関係なのかと様子を伺う。

「ジーク殿と、エルデ嬢も…」


ジークがレーツェル陛下に会釈をして、エルデが美しいカーテシーを披露した。

「私どもは、婚約はしておりますが婚姻はもう少し先の予定です。」

ジークが答えた。


レーツェル国は獣人が治めているので、獣人の婚姻は同族同士であることが多いこともあり、王家が婚姻に口を挟むことはほとんどなかった。


「さ、では皆掛けてくれ。」


先にレーツェル国王が中央の椅子に掛けて、ローテーブルを挟んで両サイドの長椅子ににそれぞれ2名ずつ腰掛けた。


「テラ夫人が、第2王子の病を治せるというのは真か。」

レーツェル国王の目が真剣な色に変わった。

「私の父は、妻のおかげで回復をしました。」

「なんと、ネーベル辺境伯は長患いをしておったよな。」


「ただ、テラの魔法については、どういう作用なのかはっきりわかっておりません。私も魔力持ちですが自分の魔力のルーツがわからず、ずっと思い悩んでおりました。治療に当たる前にそこをしっかりと解明したほうがより良いアプローチができるのではと私も妻も考えております。」


「妻の故郷のネフライト国は歴史が浅いせいかその辺の書物などがありません。」


「なるほど、禁書を読みたいということか。」


「あれを禁書にしているのには理由がある。そなたら魔力持ちの立場を守るためだ。口外せんなら見せよう。」


「10年ぐらい前に禁書庫に無断で入ったものがおるようでそれ以降、禁書庫の管理を厳重にしておる。クレーメンス案内してやってくれ。」


「かしこまりました。」

クレーメンスが一礼した。


「私は執務室に戻る。」

レーツェル国王が席を立ち、4人も席を立った。

「治療は明日からでも良い、頼む。」

国王の言葉に4人とも頭を下げる。


レーツェル国王が応接室をあとにした。


「では、私に付いて来てください。」

クレーメンスは会釈して、目で付いてくるよう合図をした。


4人はクレーメンスの後を付いて行く。


応接室を出て、右に向かうと螺旋階段がある。

階段を上がると目の前に王宮の図書館があった。


木目調の大きな扉がある。

クレーメンスが扉を開け、4人がクレーメンスのあとに付いて中に入る。














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