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テラは、平民の出身で実家は農業を営んでいる。


3年前に実家の近くの土手から転がり落ちた拍子に、前世を思い出した。

その時から、力が使える。

テラの力は、すべての生物にエネルギーを与えるようなのだ。テラ自体も自分の能力についてよくわかっていない。



この国は3年前から下水道を整えた。

まだ主要なところだけで、全ての領地で下水道が通っているわけではない。


下水道の汚水処理に微生物が使われているのだが、テラの作る魔力水を何滴か汚染水の貯留槽に混入させると物凄い浄化効果があるということだ。

微生物にもエネルギーを与えるらしく汚水の浄化速度が上がるらしい。


通常の何千倍のスピードで浄化されていき、浄化された水は水質検査を経て海へと流されていく。


東西南北に水門があり、ここで全ての管理がされていて、水門は辺境伯が管理している。


貯水槽へ滴下する量は毎日2、3滴を滴下しているらしいが、フラスコ一本分の魔力水をモラド王子がこぼしてしまった。


平民なら極刑ものだ。

テラは一年にフラスコ12本分の魔力水を溜めて、それを東西南北の辺境伯がそれぞれ3本ずつ持って行く。


使用用途それだけではなく、体力の回復なんかにも分けて使われているようだった。


王族も貴族も下水道の普及に心血を注いだ。


もう2週間に一度、肥溜めのような匂いがする城を移らなくてよくなったのだ。


テラが直接水門に行ってその力を使うわけじゃなく、城の与えられた部屋で水に魔力を込める。それを辺境からの使者がやってきて持って帰る。



生命体に魔力を通してエネルギーを与えるのと違い、水に込めるのはかなり効率が悪いとテラは感じている。


一年でフラスコ12杯分が精一杯なのだ。

つまり余分がない。


(ないならないでも、浄化速度が落ちるだけなので機能しないわけではない......ただ北の方は新規事業で人手が増えてるからあったほうがいいよね。汚水の貯留槽も容量に限りがあるし。)

(まあ、回復薬に回さず全部を汚水処理に使えばぎりぎりいけるのかな?)




テラは、インフィート領から久しぶりに山の中腹にある森の中の家に帰った。2階建ての木造建築だ。

家の周りは木々に囲まれ、近くに川が流れている。


この家はもともと住んでいた年寄り夫婦が、王都に引っ越すという話しを聞きつけて購入した。場所が場所なので破格だった。




玄関の扉を開けると、上がり框がありそこに銀色の毛並みの狼が待ち構えていた。


『おかえり、テラ』


「ただいま、フェムト〜!」


テラは膝を床に付いて、狼のフェムトの首に抱きつく。


「寂しかったよね、お留守番ありがとう。」


フェムトの毛をくしゃくしゃと撫でてから立ち上がり、リビングに入って右奥にある3人掛けのソファにドサっと飛び込んだ。


フェムトが後を付いてくる。


テラは仰向けに寝転がったまま、調剤室で着用している白の上下ひと繋ぎのユニフォームのボタンを外していく。

そのまま、ソファで全部脱ぐとフェムトがワンピースを持って来てくれる。


「フェムフェムありがと〜」


『まったく...行儀が悪いぞ。』

呆れながらテラの脱ぎ捨てたユニフォームをフェムトが洗濯籠に(くわ)えて持っていく。


ワンピースを頭からすっぽり被る。


『もう、ゆっくりできるのか?』


「寂しい、フェムト?」

『バカをいえ、騒がしくない方がよいわ。』


フェムトは森で怪我しているところをテラが力を使い、治癒力を高めて治してあげたのがきっかけで、それ以来ずっと一緒にいるが、犬かと思って助けたら喋る狼だった。


「ファンタジーよねぇ。」

『なんの話だ?』

「独り言だよ。」


(王子が零したフラスコ一杯分、何か補う方法を考えなくちゃ。)


「昨日ようやく魔力水が完成して、缶詰め状態から開放されたばっかりなのに...しばらくここでゆっくりしたいな。」


フェムトがテラの寝そべっているソファに上がってきた。


テラが少し足をよけると、そこに丸まる。


「フェムトは、森で適当に食べたんだよね?」


『裏の川で捕れた魚を塩漬けして干してある。』


「フェムトって、謎だわ〜。」

(狼のくせに喋るし、器用だよね。)


『文句があるなら食べなくともよろしい。』


「駄目、いただきますから!」


テラはそのまま知らない間に眠ってしまっていた。
















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