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テラたちは寝室から出て、リビングに案内された。


リビングの壁紙は薄いピンクを基調としていて、磨かれた大理石の床に白の絨毯が敷かれている。

白のローテーブルを囲むように、長椅が1つと1人掛け用のソファが3つ置いてある。


テラは、フェムトと一緒に長椅子に掛けた。


メイドが紅茶を入れて退出するのを見届けてから、シュネーが口を開いた。

「テラさんの魔力は、治療をすることができるの?」

「多分そうなんじゃないかと思っています...私は自分の能力のことをよくわかっていないので、フェムトさんのお父様に効果があるか、わからないんですが。」

テラが遠慮がちに言う。


「お義母(かあ)さま...あっ、もうフィーの婚約者じゃなかったですね、シュネーさま...」


エルデの発言にジークが、面白くなさそうな顔をした。


「エルデ、いいのよ。そのまま呼んでくれたら嬉しいわ、私には娘がいないから昔からあなたを娘のように可愛がってきたのだもの。」

「では...お言葉に甘えて。お義母さま、私もテラさんに治療してもらっているんです。」

「まあ、エルデも?」

フェムトがそっぽを向く。


シュネーはエルデの話を聞いて、期待を込めた目をした。

「ずっと、打つ手が無い状況だったの...光明を見出せたようで嬉しいわ。」

「テラさん、よろしくお願いしますね。」

シュネーがすすり泣きをしながら、テラに頭を下げた。


「精一杯...ご期待に添えるよう尽力いたします。」

テラも深々と頭を下げた。

シュネーのすすり泣きに、その場にいた者も胸が熱くなった。


フェムトが、シュネーの手を包み込み優しい口調で訊く。

「母上、明日の昼過ぎから早速取り掛かろうと思っているが、都合はどうですか?」

シュネーが、フェムトとテラの方を見て頷いた。

「ええ、もちろん大丈夫、待っているわ。」



テラとフェムトが部屋に戻ると、使用人が扉の前で待っていた。

「どうした?」

フェムトを見て、使用人が頭を下げる。

「実は最近入ったばかりの使用人が、屋敷の裏の山に行ったきり戻って来なくて...奥さまに相談したらフェムトさまに力になってもらうようにと。」


フェムトがちらりと、テラを見る。

「そうか...母上が。」


「いいよ!行ってきて。」

「着せるのは私がしたが、テラ1人でドレスを脱げるか?」

使用人がフェムトの言葉に目を丸くしたが、その役に名乗り出てくれた。

「私が手伝います。」


「そうか...君、名前は?」

「ファルファラと申します、フェムトさま。」

「ではファルファラ、テラを頼む。」


ファルファラがフェムトに頭を下げる。

「かしこまりました。フェムトさまにご同行させていただく者が、エントランスで待っております。よろしくお願いします。」


フェムトがテラの方を向いて、目を見つめる。

「テラ、先に休んでいてくれていいから。」

テラもフェムトを見上げて見つめる。

「わかった。フェムト、気を付けてね。」


テラとファルファラで、フェムトを見送った。



「では、ドレスを脱いで入浴いたしましょう。」

テラと、ファルファラが部屋に入った。


(最初の使用人の人じゃなくてよかった。)




テラはドレスを脱がせてもらって、浴室に案内された。

浴室は洗い場が広く、眺望の良い大きめの窓と石の浴槽が設置されている。

浴室の入り口付近に、マッサージ用のベッドがおいてあった。


「テラさま、よければこちらの台にうつ伏せになってくださいね。マッサージをしましょう。」


テラは手厚い扱いに慣れてないので恐縮した。

「いえ、そんなの悪いし。」


ファルファラが台に布を敷いて準備をする。

浴室は温められていて裸でも寒くない。


「フェムトさまも、マッサージをよくご所望なさるらしいですよ。テラさまもいかがですか?」

「フェムトも?」

「私は、担当したことないのですが、ラメットが自慢しておりましたから。」


テラはファルファラの厚意を無碍にしないように、お願いをすることにした。


「じゃあ、お願いしようかな。」

「はい、どうぞどうぞ。」


テラは台の上にうつ伏せになった。


ファルファラが柔らかい布を背中側にかけて、足にオイルを塗って足の裏からマッサージを始める。


「ファルファラさん、気持ちいいです。」


「良かったです。」


テラは知らず知らずのうちに、眠ってしまった。


最初にテラを部屋に案内した使用人が、浴室に入ってきた。

「ファルファラ、奥さまがお呼びよ。」


ファルファラがマッサージの手を止めた。

「ラメットさん、今テラさまのマッサージ中で...」


「代わるわよ。」


「でも...」


「あなた、早く行ったほうがいいわよ!奥さまがお呼びなのよ。」


「すみません!よろしくお願いします。」

ファルファラが慌ただしく浴室を出ていった。











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