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馬車が森の中のテラの家の前に付ける。


フェムトは、獣化する前にジュストコールだけは脱いでいたが、他は破れてしまっていた。


『ジーク、衣類は全て持って帰ってくれ。』


「...兄さん、領主にならないならぼくに命令口調は止めて欲しい。」


ジークは完全にへそを曲げてしまっていた。


『そうか、確かに...頼む...いやお願いします。』


テラは嫌な予感がした。


兄を慕っている弟が拗ねて言ったことに、弟の神経を逆なでする返しだと思った。


ジークを見ると案の定、傷付いた顔で俯いた。


「フェムト、今のは......」

テラが可哀想に思い、ジークの擁護をしようと口を開く。

あっという間に腰に腕を回され、ジークの膝に抱え込まれていた。



馬車が停車して、扉がちょうど開きそのまま外に連れ出される。


『テラ!』


「兄さん、許さない!」


ジークが、テラの首に手をかける。ジークは本気で首を絞めようとはしていないが、恐怖でテラの顔が青ざめる。


『ジーク!テラを傷付けるな!』

ジークの理性を失っている様子に、テラの安全を考えるとフェムトは不用意に近付けない。


フェムトが悲痛な声で、懇願する。

『頼む...テラを傷付けないでくれ...』



ジークは一瞬顔を歪めると、テラを引きずってその場から離れていく。


テラの細い首にジークの指が回っているのを見て、フェムトは為す術もなかった。


「次期当主のぼくが命じる。フェムトを拘束しろ。」

ジークが護衛に命じた。


護衛が一瞬躊躇したが、すぐにフェムトを拘束する。


フェムトが魔力を放ってこないのを見て安心したジークは、テラを引きずって森の中に入って行く。


テラの耳元でに囁くように言った。

「この奥から『迷宮の森』に繋がる道があるんだ。次期当主にしか教えられない秘密の通路だ。兄上は残念ながらまだ知らないはずだよ、追ってこれないい。」


ジークの拘束の手が緩む。


「...弟さん、フェムトはエルデさんを殺そうとしたよ。理由はわからないけど...弟さんエルデさんのことを気にかけているけど、いいの?」


「兄上がエルデを殺すなど...あり得ないし、戻ってきたエルデも傷跡などなかった。」


「私が治したからね。」

テラは自信満々に胸を張ってジークに言う。


森の奥に入ってけっこう経つが、獣に遭遇しないのはジークの影響だろうかと考える。



ジークは、エルデが深い傷を負った話を全く信用しなかった。


テラは、抱えられているから全く足の疲れはないが、押さえられているので体の節々が痛い。


暫く進むと遠くの崖の上に、城が見える。


「あそこに見える城が、ネーベル城だよ。」

「あんなとこまで行くの?」

今いる場所から、まだかなり小さく見えている。


ジークが、ジュストコールとベストとシャツをテラの目の前で脱いだ。


テラが質問する前に、目の前でジークの体が変化していく。

ジークが、狼の姿になった。


濃紺の艶のある毛並みは雄々しく美しい。


『背中に乗って、首に腕を回せ。』


テラは言われたとおりにする。


ジークは脱いだ衣類を全て口に加えた。

テラがしっかりしがみついたのを確認して、ジークは速度を上げた。


この先は道が急勾配になっているので、狼の姿のほうが進みやすいようだ。


景色が目まぐるしく変わっていく。凄いスピードに振り落とされないように必死でしがみつく。


テラはだんだん手の力が入らなくなってきた。

体感的には30分ぐらいこうしている気がした。


テラが気を失いかけたところで、スピードが落ちる。城門が目の前に現れた頃には、テラは意識を手放した。



城門は石造りになっていて堅牢で壮大だ。



ジークは、テラをジュストコールで顔がわからないように包んで、シャツだけを羽織る。


ジークの帰城に合わせて、城門で待機していた人物に「ネルフ、頼む。」と声を掛けて、テラを託しジークは居館の方へ向かう。


ジークは整えられた庭園を通り、正面のエントランスに向かう。


家令がジークを出迎え、目を見開いて驚きすぐに使用人にローブを持ってこさせる。


ジークは、使用人からローブを受け取り頭から被った。


エントランスホールで、ジークがひと目を集めている間に、ネルフがテラをひっそりと使用人棟の一室へ運ぶ。


ジークを出迎えに向かったエデルが、たまたま窓の外を見てテラが運ばれているところを見る。


テラは一番奥まった部屋へ連れて行かれる。


エルデはこっそりと後をつけて、一部始終を使用人棟の陰から覗いていた。


ネルフが部屋から出て、外から鍵を掛けていく。


「外から鍵を掛けられる部屋に、わざわざ運び入れるって物騒な感じね。しかもネルフってジークの専属の護衛だわ。...厄介ごとの予感だわ。」


エルデは帰ってきたジークのところへ、状況の確認に向かうことにした。




意識が戻ったテラは、船酔いのような状態になっていた。


気持ちが悪くて洗面所へ駆け込む。


テラは驚いた。

(ここも下水道完備されてる、ネフライト王国と変わらない。前世の知識がある私としてはかなりありがたい。)


「出すもの出したら、ちょっと楽になった。」


部屋の中は簡素だが、すっきりとしていて清潔感がある。

ベッドとドレッサーと、小さなテーブルと椅子がありお手洗いが付いている。

ベッドの近くに小さな窓がある。


窓から外を覗く。


近くに、シーツがいくつも干してあり、時々風がそよいでシーツをはためかせる。


奥には芝の手入れされた、だだっ広い庭園があり、噴水とちょっとしたガゼボがある。


少し離れたところに城が見える。外観はネフライト王国の貴族の城より堅牢な作りに見える。




扉をノックする音が聞こえる。


テラが開ける前に、ガチャガチャと鍵を開ける音が聞こえて勝手に開いた。


「テラさん、大丈夫?」

エルデが素早く体を、室内に滑り込ませてきた。


「エルデさん!」


エルデがテラの両腕を掴んで、全身を上から下までくまなくチェックする。

「良かった、怪我は無いようね。どうしてここに?」

エルデがベッドにテラを掛けせせる。


「それが、脱いだ服を持って帰ってくれってフェムトが言ったら、もっと丁寧に言うようにジークさんが言って...フェムトがそのとおりにしたら、ジークさんが怒って私をここに連れて来たの。」


テラは事実だけを言った。



「ちょっと、それだけじゃ要領を得ないわね...テラさん話を端折ってない?」


「端折ってないよ、ジークさん本当は丁寧に言って欲しくなかったんだと思う。ほら、他人行儀な言い方になるから。」


「話の前後がわからないけど、でもジークがそうしろって言ったんでしょ。」


「それは拗ねて...かまって欲しくて言ったんだと思う。」

エルデが、困った顔をした。


「あ...多分、兄弟喧嘩みたいな感じ?」





















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