表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/39

14

医療室は王宮の一階の西側にある。

ちょうど調剤室兼救護室とは真反対にある。


研究棟から搬送されて、6人が医療室のベッドに寝かされた。



看護員がクエラに感謝を告げる。


「クエラさま、ありがとうございました。ここまでしていただけたら、あとは本人の持っている自然治癒力に頼るのみです。」


「手はいりませんか?」

クエラが看護員に確認する。

「もうお手をわずらわせることはないと思います。」

「では、我々は引き上げます。」

二人は挨拶をして医療室を後にした。


医療室から調剤室兼救護室は真反対なので、廊下を歩いて5分程かかる。



「私は、今日はもう疲れたので帰ろうかしら。テラ、あなたはどうするの?」



「いいよ、帰って。私が残っておくよ。」

テラは昨日無断欠勤したので、気安く引き受けた。



二人で調剤室に戻って、クエラが更衣室でユニフォームを着替える。


帰り支度を済ませてテラに声を掛けた。

「じゃ、後はよろしくね。」



テラは、一人になってからハーブティーを淹れた。


しばらくのんびり過ごしていると、扉をノックする音が聞こえる。


「はい、はーい。」

テラが、開ける前に扉が勝手に開いた。


「お前、今日はどうしたんだ?急に色気づいて......」

ワンピース姿と、ほんのりピンクに色付いた唇を見て、モラドが目を丸めた。


「殿下、暇なんですか?」

テラが呆れた目で見た。


「昨日、無断欠勤しただろう。よっぽどショックだったのかと思ってな、今日は出勤していると聞いてな...様子を見に来たのだ。」


「ショック?」


「処女じゃなくても、お前に限り良いと父上に許可をもらった。安心したか?」


「あの森の小屋はすぐに引き払え。」


モラドが昨日の光景を思い出して、不快な表情で告げる。


「あの...なにか大いなる誤解が...」


モラドがテラを舐め回すように見てから、満足そうに言った。

「そういう格好ならお前とて、きれいに見えんこともない。」

「今夜から、私の部屋の隣にお前の部屋を設けたからそちらへ移るように。」

「時間になったら、迎えに来る。安心しろあんな男のことはすぐに忘れる、寂しいと誰でも良くなるときもあるからな。」


「あの、私......平民ですよ。」


「心配するな、公爵家に養子に入れるよう手筈を整えている。」


(なに、知らない間に周り固めてきてる...怖っ。)


不意に腕を取られて、抱きすくめられる。

(いやいやいや...無理無理!)

腐っても王子、テラが抵抗したぐらいではびくともしない。


「今夜が楽しみだ。一緒にディナーをとろう。」

モラドがテラの耳元で囁く。


後ろで護衛が咳払いをした。


王子が、名残惜しそうにテラを解放した。


そして、笑顔で護衛とともに調剤室を去った。



テラは急いで荷造りした。


(このままだと、無理やり嫁取りされる!しかも処女じゃなくていい特例ってなに!?大変だ......王都から逃げ出そう!)


王宮から出て王都の馬車の待合所に行ったが、家に帰れないことを思い出す。


(さっき、王子に抱きつかれた〜!やばいテリトリー内に自分の匂い以外受け付けない狼がいたわ!)


エルデを噛み殺そうとしていた光景が蘇る。


(まずいまずい...ほとぼりが覚めるまで身を隠さないと...番じゃないから殺しはしないと思うけど、フェムトにそのつもりがなくても噛まれたら死ぬ...)




待合所に駅馬車が着いた。


顔見知りの御者が、テラの顔を見て声をかけてきた。

「お嬢さん、今日はこんな時間に帰るのかね?」



「おじちゃん、こんにちは。ね、安くて治安が良い宿屋屋さん知らない?」


「そうじゃね...3つ先の待合所にある宿屋はどこも評判がいいよ。」

「じゃ、今日はそこで下りる。」


テラは馬車に乗り込んだ。


客は3人ほどで、みんな居眠りをしている。


馬車が走り出してから、テラは窓から外を眺める。

王都も王宮に近いところは、オシャレなお店が立ち並んでいて活気がある。


(3つ目か、通り過ぎることはあっても、下りるのは初めてだ...)


ウトウトしていると御者が声を掛けてくれた。

「お嬢さん、着いたよ。ファルケンだよ。」

「あ、ああ...ありがとう。おじさん。」


テラは、馬車から下りる。

「女のコ一人だ。治安が良い方だと言っても気を付けてな。」

テラは会釈してから、宿屋を探す。



いくつもある宿屋から、こじんまりしたところを探す。


「ここにしようかな。」

外観があまり古くない2階建てで、1階が食事処で2階が宿屋になっていた。

外から見ると、食事処が清潔感があって活気があって好ましい。


「お邪魔します。宿泊したいんですけど。」

引き戸を開けた。

「いらっしゃい~」

昼過ぎだが店内はお客がけっこう入っている。


恰幅の良いおばさんが近寄ってきて、対応してくれる。

「2階の部屋がまだ空いてるよ。」


テラは先に支払いをして、鍵を受け取り2階に上がった。

「早めに決まって良かった。」


2階の奥の部屋に進む。

扉を開けると中は一部屋だが、浴室とトイレが付いていた。


「まあ、いいほうかも。きれいだし。」

テラは窓を開けて、ベッドに腰を下ろす。」


(今後のことを考えなきゃ......)


(今日は、魔力水を作った後に魔力を放出したから眠たくなってきた...)





















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ