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テラは温泉に入るために、翌日早い時間に起きた。

玄関のドアを静かに開けて外に出る。


(もう、フェムトに見張り頼めないしね。でも、この間の温泉に入ってた男ってフェムトだったのかな......)


テラは、背中や肩を大きく開けた肩紐の太股丈の下着を念のため着用して入浴することにした。


「下着を着て入浴することになるなんて...面倒くさい。でも、フェムトがいるしね〜。」


「一応よ一応、外だし...身の安全のために裸は避けなきゃね!」


(昨日から、狼に戻ってくれないんだよね。まあ!私は好みじゃないんでしょうけど...念の為ね!)



一人ごとを言いながら、桶でじゃぶじゃぶかかり湯をしてから温泉に浸かる。



「うん、うん。いい湯加減〜!朝の温泉最高だね。」



下着の裾が湯に入って捲くれる。


朝の清涼な空気と、時折吹く風で葉擦れの音がする。朝の温泉は自然を感じることができて、とても気持ちがいい。




テラが温泉を堪能していると、急にフェムトが狼の姿で2階から飛び降りて、テラの前に軽やかに着地した。


『すぐに、出ろ。』


「フェムト?」


『微かにだが、同胞の匂いがする。』


「まずいの?」


『こちらが風上だからな、狼の獣人であるとは思うがそれ以上は......』


『もし番を探してここまで出てきたなら、一応お前は警戒したほうがいい。見境なく襲うものもいる。』


(見境なく襲うって、私に全く魅力がないってこと?フェムトの言い方、相変わらず失礼ね!)


テラは拗ねてはいたが、フェムトの緊迫した雰囲気に湯からすぐに上がることにした。


ざばんという音と共に勢いよく出る。


フェムトが目を丸めた。


狼の目でも、目を見開いているのがわかる。


(何かあった??)


テラは、警戒して後ろを振り向き確認する。



『お前、私を誘惑するつもりなら成功だ。』

「え?」

『違うなら、即刻この場を去れ。』



テラは、わけがわからず急いで家の中まで走る。

背中にフェムトの強い視線を感じる。


(さっきのフェムト凄みがあったけど、そんな危険な感じだったのかな......)


ドッレサーの前に立って初めて気付いた。


「これは......ひどいかも...しれない。」


(なにが危険って......私が危険なやつだわ、これじゃフェムトの全裸を非難できないわ...私も立派に変態。)


薄い下着が濡れて体に透けて張り付き、体のラインがしっかり出ていた。


(うわああああああぁ!恥ずかしいわ。違う、誘惑しようとしたわけじゃないんだよぉ......)


急いで下着を脱いで体を拭きあげて、紺色の前ボタンのワンピースに着替える。


「次からは気を付けよう......私を好みじゃないと言ってたフェムトがあんな言い方するぐらいだからね。」



外から甲高い獣の鳴く声がする。


(まさか...フェムトに何かあったんじゃ...)


テラは心臓がぎゅっと握り潰されたような痛みを覚える。


(怖い...何かあったらどうしよう!どうしてあんな緊迫した雰囲気のフェムトを見たのに、大丈夫だって安心してたんだろう......フェムト!)


足がもつれそうになりながら、外に様子を見に出た。


テラは、目の前の光景に息が止まりそうになった。



銀の狼が、白い狼の首に噛み付いてそこから血が流れていた。


「フェムト......は無事だったんだ。」

安心したせいでテラは涙がぼろぼろ出た。


(人って安心すると涙が出るんだぁ...)


フェムトの瞳が、テラを見つめる。


白い狼が、テラを見て唸り声をあげる。

フェムトが更に牙を食い込ませた。


テラはフェムトの瞳を凝視した。


(フェムトの瞳が、この状況を本意じゃないって言ってる気がする...)


「フェムト、よくわからないけど...その白い子も獣人なの?仲間を殺していいの?その子も家族がいるんじゃない?」


フェムトの瞳が、揺れて伏せられた。




テラを見つめながら、フェムトが口から白い狼を吐き出した。

ドサリとしろい狼が地面に落ちる。


『放っておけば力尽きる。私は部屋に戻る。』



(よくわからないけど、治療していいってことよね。とどめを刺さなかったし。)



目をつむってしまった白い狼に触れた。

テラは右手を傷口に当てて魔力を流す。


(すごい、本気でこの子を殺す気だったんだ。回復にものすごい魔力を持っていかれる。)




「眠たくなってきた〜!がんばれ私...このコが野生に戻るなら完全回復させないと!」
















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