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終末の七勇者(改)  作者: ヤミ
三章 《王の茶会》
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第五十四話 闇の底

皆さんこんにちは。

ヤミです。

本日は第五十四話を投稿させていただきました。

星影は母親亡き今何を思うのか。

是非お楽しみください。

 星影は暗い、暗い水の中に溺れていた。一筋の光すら届かない深淵へと深く、深く引きずり込まれていく。胸を貫かれ血塗られて俯いた母親の姿が脳裏をよぎる。それに続いて育ての親であった祖父が自室で息を引き取った時の情景が流れてくる。次々と押し寄せる記憶の奔流の中、五年前の記憶が蘇る。星影は祖父影塚暁彦に拾われるまでとある孤児院で生活を送っていた。


「星影くん。今日も元気ですか?」


 孤児院の院長は優しい眼差しで星影に微笑みかける。


「元気です。」


 当時十二歳だった星影は、大人たちに良い感情を抱いていなかった。自分たちがあれは駄目、これも駄目と制約される一方で、大人だけが享受する特権を羨んでいたからだ。しかし、そんな星影にも、孤児院には心許せる親友がいた。彼の名は後藤剛。そして、孤児院の近所に住む五十嵐悠都と夕凪茜もまた、親友と呼べる存在だった。四人は孤児院近くの小、中学校へ共に通い、親友であり幼馴染として、かけがえのない日々を過ごしていた。他にも学校には星影たちと親しくしてくれる友人もおり、孤児院とは異なる環境で、星影は充実した毎日を送っていた。しかし、その平穏は突如として破られた。ある日、オリジンたち《プレデター》と異世界の怪物たちが襲来したのだ。その時、星影たちは地域のお祭りに参加し、屋台が立ち並ぶ町を楽しんでいた。だが、彼らの襲撃によって、目の前の光景は一変する。次々と蹂躙されていく人々の命。星影たちはただひたすらに逃げ続けた。しかし、後藤剛が燃え盛る鬼に足を掴まれてしまう。星影は剛を助けようと引き返し、悠都と茜もまた、剛の元へと駆け寄った。しかし、鬼の力は人間とは比べ物にならないほど強く、剛はそのまま連れ去られてしまう。星影は鬼を追おうとするが、いつの間にか周囲には他の怪物たちが迫っていた。そこへ一人の男が駆け寄ってくる。


「早く逃げなさい!」


 それは院長だった。


「院長も一緒に逃げようよ!」


 星影は院長の手を取った。しかし、院長はその手を無理やりというほど強引に振り払い


「早く逃げなさい!星影くん!悠都くん!茜ちゃん!これは大人の仕事なんだ!子供は早く逃げなさい!」


 茜は涙を流しながら星影の手を引いて走り始める。悠都もそれに続いて走る。星影は振り返りながら


「院長!院長!」


 と叫んだ。だが星影の叫び声は虚しく響くだけで、院長は怪物の鋭い爪に切り裂かれ血飛沫を上げ倒れた。悠都と茜はただ前を見て走っていたが、星影だけはその光景を目撃してしまった。


「ぁ…。」


 その後悠都と茜の元へ彼らの親が迎えに来た。星影の元には暁彦と名乗る男が迎えに来たのだった。


 星影は昔から多くのものを目の前で失ってきた。それは星影だけでなく、他の人々も同様だろう。しかし、何もできずにただ奪われる世界は、あまりにも残酷だった。十二歳の少年に、あの時何ができたのか。今のような力があれば守れたものが、あの頃は守れなかった。いや、今でさえ力を持ちながらも、目の前で母親を失うことになった。力があっても守れないものがある。それは、何かを奪う者が何かを守る者以上の力を持っているからだ。これほど残酷で理不尽な世界ならば、無い方が良い。否、世界は悪くない。残酷で理不尽を突き付けてくるのは、いつだって力を持つ者だ。ならば、この世から何かを奪う者は消してしまえば良い。そんな存在がこの世にいなければ、人々は大切なものを失わずに済むのだから。この時、初めて星影は決意した。


「みんな、殺してやる…。」


「…星影…。」


「…パーシヴァルさん…?どうしてここに…?」


「…目が覚めましたか。ここは魂の世界です。」


 星影は何がありここにいるのか理解できていなかった。


「どうして俺はここに?」


「あなたのお母さんが目の前で殺害されたことにより、あなたは心神喪失に近い形で自我を失っていました。そこをオリジンがあなたの人格と代わりあなたの体を使っているのです。」


「…。」


「すいません。思い出したくありませんでしたよね。」


「…いえ。今オリジンはどこに?」


「《世界政府》を出て異世界に向かっている所です。あなたのお母さんも連れて来てくれています。」


 星影は少し驚いた。オリジンがまさか母親の亡骸を持ってきてくれたことに。


「そう、なんですね…。」


「星影。さっきあなたはみんな殺してやる。と言っていましたが、何をする気ですか?」


「…。いえ…ただ皆のために敵を倒すだけです。」


「…そうですか。星影、自分を見失わないでくださいね。」


「大丈夫です。進むべき道は《王の茶会》で決めてますから。」


「…なら、良かったです。」


───


「星影!戻ったか!」


 いち早くに星影が異世界に戻ったことに気付いたルベルが駆け寄る。その後すぐにノワールとアランも寄ってくる。しかし、星影が抱えていた女性を見たときに三人は何も言えなかった。


「私はオリジンだ。星影はショックにより今は眠っている。それからルベル。ヴァイオレットという吸血鬼を連れてきた。」


「っ!ヴァイオレット!なぜお前がここに!」


 ヴァイオレットはルベルに抱きつきすすり泣き始める。


「会いたかった…。」


「…《世界政府》か?」


 ヴァイオレットはルベルの腕の中で小さく頷く。


「島の奴らはどうした?」


「みんな…殺された…。」


「母さんも…父さんも…か?」


「…。」


 ヴァイオレットはただ頷く。


「…そうか。」


 ルベルの瞳が黄金に輝き始める。


「ルベル!気持ちは分かるが落ち着け!」


 アランがルベルの腕を掴む。


「今はこれから攻めてくる奴らに備える時だ。故郷の事はどうでも良いなんて言わない。ただ今やるべき事だけ考えろ。」


 ルベルの瞳は元に戻り黙り込む。


「…。」


 それからアランは星影、ともいオリジンに目を向ける。


「それでオリジン。その人が星影の母親なんだな?」


「そうだ。」


「奴らは来るか?」


「十中八九来る。星影は一度天界王によって殺された。しかし、ヴァイオレットにより半吸血鬼として覚醒し蘇った事がバレた。次こそ殺すと意気込んだバカな王が少なくとも二人以上現れる可能性がある。」


「つまり星影が危惧してたよりもヤバいことになってるってわけだな?」


「ああ。」


「ノワール、全員に知らせてきてくれ。」


「わかりました。」


 アランにノワールは頭を下げ姿を消す。ノワールが報告に行ってすぐ、ダルヴィッシュ達がアラン達の元へ集まる。


「話はノワールから聞いたな?」


「聞きました。」


「いつでも戦えるように備えておいてくれ。」


「分かりました。それで星影殿は今どうなのですか?」


 ダルヴィッシュがオリジンに問う。


「確認したが星影は目を覚ました。待ってろ。」


『星影、代われ。』


『分かった。』


「…みんな、ただいま。」


 すると悠都と茜が抱きついてくる。


「星影…大丈夫だからな…。」


「大丈夫だよ。星影…。」


「二人とも…ありがとう。俺は…大丈夫だよ。」


 星影はヴァイオレットへ目を向け


「ヴァイオレットさん。改めてありがとうございます。」


「いえ。私は…。」


「あなたのお陰で最後に…母さんに会えました。」


「…。」


 ヴァイオレットは感謝されても心苦しく何も言えなかった。


「みんな。オリジンから聞いたと思うけど敵が攻めてくる。俺は《終末の七勇者》として奴らを滅ぼす。これ以上あいつらに奪わせない。だから、協力して欲しい。」


 アランは星影の頭を軽く叩き


「まだ寝ぼけてんのか?俺達は仲間だ。今さら協力してじゃねぇ。俺達でやるんだ。世界を救うために世界を滅ぼすぞ。」


 シエル、アリス、ルベル、ダルヴィッシュ、ルシファーは頷き、ノーザ、アッシュ、オベイロン、ノワール、アルケイン、悠都、茜、神木、リリィ、クラウス、トーマス、スティカ、キツネ、ヤミ、ゴリラ、ナグリトバシ、マサ、セン、クラールハイト、龍馬、風靡、アルベルト、照井は「おう!」と声を上げる。そこへ聞こえるはずもない声が聞こえる。


「母親を失ってもなおその目をするのか。影塚星影。」


 突如マーリンが現れ指を鳴らす。


「ゲート・オブ・リベレーション。」


 するとユートピアを覆っていた結界が開かれる。


「結界が…!」


 オベイロンが少し焦りを見せるとマーリンの背後、グリートーネア、《強欲》のヴィルヘルム・ルージュ、《暴食》のザムザ・ジョーヌ、《怠惰》のルイ・ヴェール、《憤怒》のバレン・ヴィオレ、鬼人王イグニス、巨人王アトラス、百獣王ガルム、冥界王タルタロス、そして王達の配下が大軍となって並んでいた。


「影塚星影。これでもお前は甘ったれた幻想を語るか?」


「当たり前だ。お前達を滅ぼして世界を救う。それが俺達の使命だ!」


「…愚か者が。」


 マーリンは舌打ちして星影を睨む。


「全員!捕食王!妖精王率いる《終末の七勇者》とその一派を蹂躙せよ!」


「あいつらを倒して世界を救う!」


 マーリンと星影が声を上げ両軍の指揮を上げる。


「殺れ!」


「いくぞ!」


 マーリンと星影の合図に全員が動き出す。


 西暦二〇三〇年、異界歴一一〇一年、八月。捕食王、妖精王率いる《終末の七勇者》一派と魔王、冥界王、鬼人王、巨人王、百獣王連合により第二次異世界大戦が勃発した。

皆さん、いかがだったでしょうか。

過去の記憶が蘇る星影。

その中で新たに決意を固めた星影と魔王たちがついにぶつかる。


次回第五十五話 七勇者の意志

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