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終末の七勇者(改)  作者: ヤミ
三章 《王の茶会》
52/56

第五十二話 王権

皆さんこんにちは。

ヤミです。

本日は第52話を投稿させていただきました。

《王の茶会》にて星影とオベイロンは王権を授かるためとある人物に接触する。

是非お楽しみください。


 オベイロンは扉を開け、部屋の中を見渡す。何も無く薄暗い中、火の玉が二つほどオベイロンへ近付いてくる。


「これは…?」


 オベイロンが不思議そうに見ていると


「妖精王、オベイロン。随分とここへ来るまでに時間が掛かったな。」


「あなたは?」


「私は管理者アドミニストレータだ。ここへ来たのであれば王権を授かりに来たのだろう?ほら受け取れ。」


 管理者アドミニストレータは自らの手をナイフで切り、小さな盃に血を注ぐ。それを渡されたオベイロンは


「これをどうすればいいのですか?」


「飲め。お前には王権を授ける代わりに私と血盟の儀を結ぶことになる。」


「分かりました。」


 オベイロンは盃に口を付け注がれた管理者アドミニストレータの血を飲み干した。


「これでお前は私と繋がり王権を使うことが出来る。これで用は済んだな?帰れ。私は忙しい。」


「あ、すいません。失礼します。」


 オベイロンは一礼してから部屋を出る。一方星影は部屋の中に入るも一向に誰も姿を見せずにいた。


「あのー。誰かいませんか?」


 そう聞いても誰もいない部屋に声が反響するだけだった。


「オリジン、本当にここで合ってるんだよな?」


『間違いない。私はここで王権を授かったのだから。』


「そうか。お前の時も誰もいなかったのか?」


『いや、部屋に入った時には目の前に管理者アドミニストレータがいたが。もしかしたらイレギュラーであるお前に王権を授ける気が無いのかもな。この世界を滅ぼされては敵わないからな。』


「どうして俺が?」


『お前が《終末の七勇者》の一人であるからだ。』


「何で《終末の七勇者》だと駄目なんだ?」


『それは《終末の七勇者》は今ある世界秩序を滅ぼす存在だからだ。そしてこの秩序を創り出したのは他でもない管理者アドミニストレータだからだ。自分達の世界を破壊されたくないんだろう。』


「じゃあ管理者アドミニストレータもマーリンと同じく敵なのか?」


『お前達からしたらそうなるな。きっと《終末の七勇者》は奴らを滅ぼす為に長い時間を掛けて紡がれてきた意志の結晶だ。』


「そうか。…おい!管理者アドミニストレータ出てこい!お前らの作った秩序を滅ぼしてほしくないなら俺に王権を寄越せ!」


 星影が大声で叫ぶ。それを聞いたオリジンは


『止めろ!馬鹿なのか?管理者アドミニストレータはこの世を創造した者。いわば神だ。それを相手にお前は…消されるぞ。』


「…え?それは…俺ヤバいことした?」


『あぁ。』


「…。」


『…。』


「まさか私にそのような口を利くとは。」


 すると部屋に明かりが灯り一人の男が歩み寄ってくる。


「あいつか?」


『ああ。』


「お前が管理者アドミニストレータだな。」


「いかにも。」


「王権をくれ。」


「断ると言ったら?」


「それを断る。」


「実に傲慢だ。」


「人生で初めて言われた。」


 星影は肩を竦める。


「そんなことはどうでもいい。」


 フンッとオリジンが鼻で笑った気がしたがそれはスルーして


「それで、王権をくれるのか?」


 管理者アドミニストレータは一呼吸おき


「断る。お前は危険だ。私がお前達を消そうとしても消すことができない。そんな危険因子に王権なんてやれない。いつお前が世界を滅ぼすか分からないからな。」


「俺は世界を滅ぼす気はない。」


「いや、嘘だね。お前は自分の理想を現実にするために今ある世界を滅ぼす。つまりは私を滅ぼすということだ。」


「そっか…。」


「分かったなら帰れ。」


「断る!」


 星影は堂々と管理者アドミニストレータの言葉を拒否する。


「俺は仲間を守るために王権が必要なんだ!」


「いいや。そうだとしてもお前には渡さん。帰れ。」


「…。」


『星影。諦めろ。』


「オリジン。王権ってどう授かるんだ?」


『…王である者が管理者アドミニストレータの血を飲む。』


「あんたが俺を次の捕食王として指名したんだよな。なら血を寄越せ。」


「指名したのは私ではない。だから王権は渡さん。帰れ。」


「じゃあ誰だ俺を指名したのは?」


「そりゃ俺だ。」


 突如虚空から一人の男が現れる。黒いローブに身を包み顔がよく見えない。ただその口元はどこか見覚えがあった気がしたが、気のせいであった。


「っ!何故ここに!」


 管理者アドミニストレータは驚いたように早口になっていた。


「あんたは?」


「俺か?俺は…管理者アドミニストレータの一人。影塚星影。お前を選んだのは俺だ。」


「どうして俺を?そこの管理者アドミニストレータは俺が世界を滅ぼす存在だから嫌みたいだけど。」


「そうだな。世界を滅ぼされるのは困る。しかしお前には《堕天使》を倒してもらわなければならない。」


「そんなの管理者アドミニストレータのあんたがやればいいだろう?」


「それは出来ない。あいつは俺達と同じ《管理者》の一人であるからだ。」


「っ!」


『何だと…。』


 星影とオリジンは衝撃の事実を知る事になった。


「何で倒せないんだ?」


 その問いに虚空から現れた管理者アドミニストレータ


俺達管理者アドミニストレータはこの世界を共に創る存在として互いを裏切り攻撃することが出来ない。そういうように創られているからだ。」


「誰にだ?」


 虚空から現れた管理者アドミニストレータは一瞬躊躇い


「それは言えない。が、一つ言えるとすればそれは《運命》を司る神だということだ。まあそれはいいとして、お前達にあの愚かな堕天使アドミニストレータを倒して欲しいのは事実だ。そのために俺はお前を捕食王として任命した。分かってくれるな?」


「…分かった。じゃあ王権をくれ。俺が堕天使アドミニストレータを倒して仲間を守る。」


「ではこれより血盟の儀を行う。お前が《終末の七勇者》に王権を授けるのを嫌がるのは分かる。しかしいつ《堕天使》が封印から目覚めるか分からない。その為にはこいつに王権を託すのが最適解だと思っている。」


 『食』の部屋にいた管理者アドミニストレータは渋々受け入れ小さな盃に自らの血を注ぐ。


「チッ…。新入りのくせに…。ほら、受け取れ。これがお前の王権だ。」


「ありがとう。」


 星影は盃を受け取るとその血を一気に飲み干した。


「人の血、初めて飲んだ。本当に鉄みたいな味だ。」


 星影は舌を出して嫌な顔をする。


「こいつ、人に寄越せと散々言っておいて何なんだ、この言い草は。」


「まあ良いじゃねぇか。こいつもまだ俺からしちゃ子どもなんだから。それじゃ任せたぞ。影塚星影。俺が任命したことを後悔させるなよ?」


「分かった。必ず《堕天使》は倒す。」


 そして星影は『食』の部屋から出てきた。そこではすでにオベイロンが血盟の儀を済ませグラヴィールと共に星影を待っていた。


「遅くなりました。」


「星影様も王権を授かりましたか?」


「はい。色々ありましたが授かりました。」


「それでは円卓の間へ戻るぞ。掴まれ。」


 そして星影とオベイロンはグラヴィールと共に円卓の間へとテレポートして戻ってきた。


「帰ってきたか。」


 メフィストは円卓の間に戻ってきた星影達を見て薄い笑みを浮かべた。


「これで妖精王、捕食王、お前達は真の力を手にした。これにて《王の茶会》を閉会する。楽しませてもらったぞ。」


「ありがとうございました。」


 星影とオベイロンは同時に頭を下げ、ノワールとルベルを連れて円卓の間を出ていった。


「さて、これからどうするか。」


 メフィストが声のトーンを落とし口を開く。


「そりゃ決まってるだろ。妖精王と捕食王は殺す。生かしてちゃおけないからな。」


 釈迦は至って真面目に答える。


「冥界王。お前はどう思う?」


 メフィストはタルタロスへ目を向ける。


「我も同意だ。奴がいると我の立場が危ういからな。皆、同じことを思っているのだろう?奴らによって今の管理体制が崩壊するかもとな。」


 タルタロスの言葉にメフィスト、釈迦は頷く。しかし頷かなかったグラヴィールにタルタロスは顔を顰め


「龍王。貴様はどう思っているんだ?」


「俺はもう少し奴らがどう動くのかを見定めてから動く。お前達は好きにやるといい。」


「ほう。そうか。まさか奴らと組みしよう言うのではあるまいな?」


 タルタロスの言葉にメフィストと釈迦が目の色を変え体から隠しきれない魔力が溢れ出す。


「早まるな。誰も奴らと組みしようなどと言ってはいない。俺は奴等が管理者アドミニストレータの敵になるかを見定め動くと言っているんだ。」


「そうか。」


 タルタロスは頷き、メフィストと釈迦は魔力を抑え込む。


「それでは俺も失礼する。」


 グラヴィールは扉を開け出ていく。


「魔神王、天界王よ。我に任せてくれぬか?魔王と共に奴を捻じ伏せてくる。」


 タルタロスの発言にメフィストは目を細め


「油断するなよ。これ以上王が敗れるなどと言う不名誉を歴史に残すな。」


「任せておけ。我にはとっておきがあるのだからな。手土産を期待しているといい。」


 そう言いタルタロスも出ていく。


「こっちもこっちで《世界政府》の奴らと共に《終末の七勇者》の対策を考えておく。」


「ああ。頼んだぞ。」


 そして釈迦も出ていき静寂が訪れる。円卓の間に一人残ったメフィストは椅子に座り不適な笑みを浮かべる。


「遂に始まった。《終末世界》により生まれる《新世界秩序》。この世の穢れを滅ぼし、選ばれし魂だけがその先へ進む。この忌まわしき歴史に終焉をもたらす最終戦争(ラグナロク)。ようやく実現するのだ。十三の王による世界統一が。」


 メフィストの不気味な笑い声が円卓の間に響き渡る。一方、ユートピアに帰ってきた星影とオベイロンはすぐに仲間達と国民達のいる奥地へ駆ける。


「皆様!ご無事ですか!」


 オベイロンの声にアランは声のする方へ目を向ける。


「おう。お前らは大丈夫か?」


「はい。大丈夫です。負傷者はいませんか?」


「安心しろ。奴らも本気じゃなかった。誰も犠牲にゃなっちゃいねぇ。」


「良かったです。」


「星影!」


「星影ぇ!」


 星影の共に茜と悠都が駆けてくる。


「二人とも無事で良かった。」


 星影は二人を抱きしめる。悠都は安堵してか雄叫びを上げながら泣き叫び、茜は耳まで真っ赤にして星影の胸に額を押し付ける。


「アラン様。他の皆様は?」


「みんな集落にいるさ。」


「無事でよかったな。お前は死んでるかと思ったぞ。」


 ルベルは口角を上げアランに言う。


「なんだテメェ!ナメてんのか!ぶっ飛ばすぞ!」


「体力を消耗してるやつが万全の俺に挑むのか?」


「当たりめぇだ!俺はお前よりも強いからな!」


「強がらなくていいんだぞ、人間。」


「クソ野郎!」


 アランは剣を抜き、ルベルは血で剣を作るとぶつかり始める。


「元気そうで何よりです。」


 その光景を見たオベイロンは安堵のため息を漏らす。そこへ集落の方からダルヴィッシュ達が歩いてくる。


「星影殿、オベイロン殿、ルベル殿にノワール殿。お疲れ様でした。」


「皆様も大変だったでしょうがありがとうございました。」


「私達は私達の国民を守ったまでです。それで、《原初の悪魔》が動いたという事はそちらで魔王と何かあったのですか?」


 ダルヴィッシュの問いにオベイロンは


「はい。星影様に対する憎悪故に今回の犯行に及んだようです。魔神王の仲裁により《原初の悪魔》達を撤退させられましたが、一時はヒヤヒヤしました。」


「そうでしたか。こちらではルージュ率いる《原初の悪魔》の襲撃でしたが、そこまで大掛かりな攻撃ではなかったと思いました。」


「そうでしたか。やはり魔王の目的は星影様の怒りを買い他の王と同様に力を使わせることが目的だったのかもしれませんね。」


「しかし犠牲者が出なかったことは嬉しいことです。さすがに彼らが本気で攻めてきたらもう少し危なかったかもしれません。」


 ダルヴィッシュは少し暗い表情で言う。


「そんな顔しないでください。ダルヴィッシュ様方は民の皆様を救ってくださったのですから。」


「そう言っていただけるだけでも救われます。」


 そこでノワールが口を開く。


「皆さん。少しよろしいでしょうか?」


「どうしたのですか?」


 オベイロンがノワールへ向く。


「私も一応《原初の悪魔》として魔王と共に行動していた時期があったので今後の動きについて聞いたことがあるので今更かもしれませんが話しておこうと思います。」


 この場に一気に緊張が走る。


「魔王マーリンはオリジンが主に敗れる前にとある計画を企てていました。それは《世界政府》とオリジン、魔神王メフィストの力を利用し、《堕天使》の封印を解くこと。」


 その言葉に星影が反応する。ノワールは星影の反応に気付くも今は話を続ける。


「彼らの真の目的は《新世界秩序》。つまり今ある世界秩序を滅ぼし、最終戦争により魂の選別を行い生き残った者と十三の王による世界統一を行う事が目的のようです。」


「それは事実ですか…?」


 オベイロンは血の気の引いた顔色でノワールに聞く。


「はい。間違いないと思います。」


「最終戦争とは…《終末世界》の最終段階であると《預言の書》に書かれていました。最終戦争の切っ掛けは十三の王と《終末の七勇者》、《堕天使》によって引き起こされると。」


「その話知ってるぞ。」


 龍馬が手を上げて口を開く。


「《世界政府》直属の騎士団である、《整合騎士団》の中に未来予知出来る能力者がいる。その人の話の中で聞いたことがある。」


「アタシもだ。」


「右に同じく。」


「ああ。」


 クラールハイトは頷くだけだったが、その他に風靡、アルベルト、照井もその話を知っているようだった。


「俺達はそんな話聞いたことねぇぞ。なぁ?」


「ああ。」


「そうだな。」


 ゴリラとナグリトバシ、ルベルは元《整合騎士団》であったもののその話を知らなかった。


「私もおばあ様からそう言った話は聞いたことがありませんでした。」


 アリスも言う。


「もしかしたら暁彦さんと一緒にいた人達には《世界政府》が伝えていないんじゃないか。暁彦さんを殺そうとしてたくらいの奴らの事だし。」


 クラウスがそう言い出す。それにゴリラは


「確かに…。それはあり得る話だ。つまり龍馬達は仲間として見られていた。でもよ、それなら星影の母親は大丈夫なのか?お前達が帰ってこないことに《世界政府》は不信感を抱くだろ?」


 ゴリラは龍馬達に言う。


「確かにそれはあるかもな。だが前にも言ったようにあの人には俺達よりも強い人が付いてる。そう問題はないはずだ。」


「それなら良いが…。」


「でももしそれが本当の話なら母さんが危険だ。…俺母さんの所に行く。」


「星影、気持ちは分かるが敵地に乗り込むって事だぞ。」


 ゴリラはそんな星影を止めようとする。だが


「それでも俺は大切なものをもう失いたくない。」


 その言葉にゴリラは口を閉ざす。


「星影。行ってこいよ。その間のことは俺達に任せとけ!」


 悠都は自分の胸をバシッと叩き笑顔でそう言ってくれた。


「私も、私も星影に行ってほしい。これ以上星影に何も失ってほしくない。」


 二人がそう言う中、ルベルも


「星影。行って来い。失ってから悔やんでもどうにもならない。俺も兄貴を失ってるから分かる。」


「みんな…。」


「こりゃ行く感じだな。」


 龍馬は星影に寄り


「これを使え。」


 龍馬は星影に小さな機械を手渡す。


「これは?」


「ワープゲートを開く装置だ。これで現世と異世界とを行き来できる。」


「ありがとう。」


 星影は機械を受け取る。


「主。私もご一緒します。」


「ノワール。ここに残ってくれ。多分魔王は絶対ここに来るしルージュも一緒にいるはずだ。」


「御意。…しかしお一人で大丈夫ですか?」


「大丈夫。俺にはオリジンが付いてる。」


「そうですか。ではお気を付けて。」


「うん。」


「星影。」


 ゴリラは星影の名前を呼ぶ。


「ゴリラ…。」


「死ぬんじゃねぇぞ。」


「大丈夫。生きて帰る。」


 星影はワープゲートを開く。


「みんな。こっちの事よろしくお願いします。」


「あぁ。」


「任せてください。」


 ルベルとオベイロンは頷く。星影は悠都と茜に目を向け少し微笑む。そしてワープゲートの中へ入っていく。するとワープゲートは閉ざされる。


───


「ここが、《世界政府》の本拠地なのか…?」


 星影は周りを見渡している。


『おい。姿を変えろ。』


「あぁ、分かった。」


 星影はオリジンの記憶で見た《世界政府》の人間の姿に変身する。


「これでいい?」


『ああ。』


「あれ?ここで何してんの?」


 声が聞こえ振り返るとそこには釈迦が立っていた。


「えっと…。」


「お前、影塚だろ?まさかこんなに早くに再開することになるなんてな。」


 星影はドキッとする。


「何を言うんですか…。俺は違いますよ…。」


 釈迦は拳を振るうが星影はそれを躱す。


「俺さ、目が良いんだよ。見れば分かる。例え姿を変えたとしてもな。」


 釈迦はニヤッと笑う。星影は元の姿に戻り


「そこを退いてくれ。」


「どうして他所の王がうちに用があるんだ?何か大事なものでもあるのか?そうだな…。」


 釈迦は少し考える素振りをしてから星影に目を向け不敵な笑みを浮かべ


「母親かな?」


 と言う。星影の表情が一気に強張る。それを見た釈迦は


「図星か。それは良かったよ。お前の母親は今日公開処刑が決定したところなんだよ。目の前で首が撥ねられるところを見れるな。影塚。」


 釈迦は楽しそうに笑う。


「何なんだ…。」


「ん?」


「マーリンもお前も何なんだ!他人から大切なものばかり奪って!」


 釈迦は鬱陶しそうに星影を睨み


「怒鳴るなよ。俺はただ世界のために戦ってるだけだ。お前らのような悪魔共を殺すために。」


「悪魔だと…。悪魔はお前らだろ!どれだけの命を弄べば気が済むんだ!」


「悪魔ね。そう思われるのは仕方ないな。けど世界を救うためには悪を根絶やしにしなきゃならないからな。お前達からしたら悪魔かもしれないが世界の人々からしたら俺達は救世主な訳よ。」


「母さんはどこだ?」


「ここの地下牢獄に幽閉されてるよ。今日の日の出頃に処刑だ。もう数時間しかないな。残念だが諦めるんだな。」


「お前は、どうして俺に王権を授けたほうがいいとメフィストに言ったんだ。敵対するのであればそんなことしなくても良かっただろ。」


「さっきから急に質問してくるな。」


 釈迦は頭をポリポリ掻きながら


「まあ教えてやるよ。血盟の儀を交わしたということは管理者アドミニストレータに監視されている状態だ。だから管理者アドミニストレータの思い通りにならなければお前の中に注がれた血でいつでもお前を止められるんだよ。お前は誰かを救うための力だと思ってただろうが罠に掛かったんだよ。管理者アドミニストレータ達は俺達の行動を支援してくれる。逆にお前の助けなどしてはくれない。」


「…。そうか。分かった。」


 星影の瞳が黒紫色に濁る。


「ガチになったな。だが俺にお前は勝てない。」


「そんなことどうでもいい。今は母さんを救い出す。」


「へぇ。そうかい。できると良いな!」


 釈迦は一瞬のうちに星影の間合いに入り強烈なパンチを鳩尾に叩き込む。


「くっ!」


「遅い遅い!」


 釈迦は次から次へと星影を殴り続ける。星影は体を硬化しているのにも関わらず釈迦の打撃にダメージを受ける。


「どうした?母親を救うんだろ?そんなんじゃ公開処刑までに間に合わないぞ?」


「オリジン…。奴の…能力は…?」


 星影は釈迦から距離を置き息を荒げながら聞く。


『私の知っている限りでは六つの能力がある。特にあの目だ。見たものの全てを理解する。お前はあの視界に捉えられてる限り、弱点を見出され、そして少し先の未来も見ることが可能だ。』


 星影は神器を足元の影から取り出し構える。


「魔力を吸い取る神器ね。でもそれでどうにかなると思ってる?」


 釈迦は余裕の笑みを浮かべて一歩、また一歩と星影へ近付いていく。


「黒曜滅雷!」


 黒い稲光を纏った斬撃が釈迦へ向けて飛ぶ。斬撃は釈迦に命中するも効いていないようだった。


『あれも能力の一つだ。攻撃の無効化。奴が能力を解除すれば、または魔力切れまで持ち込めればこちらの攻撃も通る。』


「分かった。」


 星影は剣を構え直す。


「影塚。お前は人を殺せるか?」


 一歩一歩迫る釈迦が問い掛けてくる。


「…。」


「お前の意思で殺したことはないよな。俺はお前の行動を見てきたからわかるよ。殺すんじゃない。倒す。お前はそれを考えている。それにお前が敵を殺したとき、お前は影に呑まれお前自身の意思はなかった。つまりはお前にどうこう出来るわけないんだよ。人を殺せない弱いやつには何も変えられない。仲間すら救えないんだよ。」


「そんなことない!相手を殺したらやってることが同じだ!倒さなきゃいけない相手でも殺すのは…。」


 星影は言葉に詰まる。


「お前の仲間はマーちゃんの仲間を殺してたぞ。お前の幼馴染だってひたすら銃弾を敵に撃ち込んでたよな。」


「…。」


「影塚。お前は弱い。だから戦うな。お前が戦わなきゃ俺達もお前達の仲間を殺す必要ないんだよ。分かるだろ?」


 星影は何も言い返せずに黙り続けていた。


「お前が戦うのを止めるなら母親は助けてやるよ。」


 その言葉に星影は釈迦を見上げる。


「分かってくれるな?」


『星影。そいつの言葉に耳を貸すな。《世界政府》がどれだけ汚い奴らか知ってるだろ。魔王と共に現世に怪物達を送り込み全ては《プレデター》による犯行だと言い、人類に自分達が正義であると植え付けた。』


 星影はその言葉に自我を取り戻したかのように釈迦を睨みつける。


「お前の言葉は信じられない。」


「そうか。じゃあ死ね。」


 釈迦の目の色が変わり一瞬で星影は心臓を釈迦の腕に貫かれていた。


『星影!』


「もう少し聞き分けがいいと思ってたが。」


 釈迦は腕を引き抜き血を払う。


「しばらくしたらそっちに母親も送ってやる。待ってろ。」


 釈迦はそう言って立ち去りながら


「こちら釈迦。ゲート付近にて影塚星影を仕留めた。死体を回収して研究室に送れ。それから所持品はすべて俺の部屋に運んでおけ。」


 と腕に付いていた機械を通して研究員に連絡を入れる。星影の体はだんだん冷たくなっていく。オリジンはそれを感じながらも


『目を覚ませ!星影!星影!』


 しかしオリジンの声はもう星影には届いていなかった。

皆さん、いかがだったでしょうか。

王権を授かった星影とオベイロン。しかし、星影の母親の安否を確認するため《世界政府》へ単独で向かった星影は釈迦にその目的を阻まれる。

星影の生死は…。


次回第五十三話 集う王達

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