第四十二話 動き出す者たち
皆さんこんにちは。
本日は第四十二話を投稿させていただきました。
魔王軍、アンデッド軍とエーデル兵、《暁》がぶつかり合う中、フロンティアとエーデルへ新たな勢力が加わり始め、さらに戦いは激化していく。
是非お楽しみください。
モルゲンは神木、茜、キツネの前で動きを見せずにいた。
「彼女の能力は波動です。遠距離攻撃も出来ますが、何より近接戦に優れています。」
キツネの助言に下手に動くべきでないと神木は感じた。
「分かった。茜、近接戦に強くて遠距離も出来るってなると勝負は一瞬で着けなくちゃならねぇ。頼むぞ。」
「うん。」
茜はコクリと頷く。
「私も一度であれば魔法を使えます。彼女の動きなら五秒程なら止められるかと思います。」
キツネの言葉に
「そうか。それなら俺達はお前の合図で動く。」
「分かりました。」
「コソコソ何を話しているの?早く掛かってきなさいよ。」
「あぁ!やってやるよ!」
「今です!」
キツネの声にモルゲンは何か来ると身構える。しかし、キツネが仕掛けたのは金縛り。目に見えるわけでもなくモルゲンはどうしょうもない。茜はキツネの声が聞こえたと同時にモルゲンの足に三発、頭部に三発発砲する。銃弾は狙い通り足と頭部に命中する。だがアヴァロンの魔女だけあり、この程度では死なない。残り時間三秒時点で、神木はモルゲンの間合いに入る。残り時間二秒、神木は剣を鞘から抜刀し、残り時間一秒、神木は身動きの取れないモルゲンへ刀を振るう。
「絶対切断!」
「ぐっ!」
モルゲンは胸を斬られ鮮血を溢す。致命傷は与えられたであろうが、モルゲンは後方へ飛び退き掌をキツネへ向けると波動砲を放つ。神木はすぐさまキツネを突き飛ばし波動砲の射程から外す。しかし、神木は波動砲に撃たれ吹き飛ぶ。
「っ!」
神木は地に転がり、少しして刀を地面に突き立て立ち上がる。
「神木さん!」
「先生!」
「余所見…してんじゃ…ないわよ!」
モルゲンは吐血しながらも続けて波動砲を茜、キツネへ放つ。二人も目に見えない衝撃に撃たれ倒れる。
「茜…、キツネ…。」
神木はモルゲンを睨み、駆けていく。
「悪いけど一人で死ぬ気はないわ。」
モルゲンは不敵な笑みを浮かべると、地面に手を付き波動を放つ。地面は砕け地割れを起こす。神木と倒れている茜、キツネは地割れした底へ落ちていく。
「茜ぇ!キツネェ!」
神木は二人の名前を叫び手を伸ばすがどうしても届く距離ではない。地から崩れてきた土砂は神木達を襲う。
「ふふ。これで三人は…倒した…。」
モルゲンは膝を付き息を荒げながら笑う。
「ずいぶんやられてるね。生き残ったのは君だけかい?」
モルゲンが顔を上げるとそこには《原初の悪魔》の《強欲》、ヴィルヘルム・ルージュがいた。
「っ!…ルージュ…。助けて…。」
「もちろんだよ。一人でも生き残っててもらわないとね。」
ルージュが懐から魔導具を取り出し、モルゲンへ渡そうとしたとき、モルゲンの首は飛ばされた。
「っ!誰だ!」
ルージュは周囲を見渡す。しかし気配を丸っ切り感じない。背後へ振り返ったとき、そこには血で汚れた白い布を身に着けた男が神木、茜、キツネを地割れから救い出し横にさせていた。
「いつからそこにいた?」
ルージュの問いかけに男は立ち上がり背中から首切り包丁を抜くと剣先をルージュへ向ける。
「お前も処刑対象だ。」
とだけ言う。その場に戦闘を終えたアラン、ダルヴィッシュ、アルケインが現れる。
「なんだ…?この禍々しい魔力は…。」
ダルヴィッシュ達はルージュから溢れるような魔力に一歩引く。
「おい、お前達。こいつらを連れてフロンティアへ向かへ。フロンティアにいるのは《プレデター》だけでなく魔王もいる。」
男はそれだけをアラン達に言い、ルージュへ向けて駆け出す。
「っ!速い!」
魔力も感じられないただの人間が禍々しい程に強力な魔力を持つルージュへ高速の連撃を放つ。ルージュは魔剣で男の攻撃を防ぐだけで精一杯なほど追い込まれていた。
「よく分からねぇが行くぞ!」
アランの声にダルヴィッシュとアルケインは茜達を抱えフロンティアへ向かう。その途中、倒れていたアリスも抱えて行く。
「あなたは何者なんですか?」
「《処刑人》クラールハイト。」
「そうですか…。」
ルージュはクラールハイトの剣撃を受け流しながらもう一振りの剣を握り
「花吹雪!」
と剣を振るう。剣身はガラスの破片の様に細かく散り、クラールハイトへ襲い掛かる。クラールハイトはルージュから飛び退くと花吹雪を首切り包丁ですべて捌く。
「あの数をすべて捌くのか…。相当化け物だな。でも本気を出していないだろ?」
ルージュは楽しそうに引き攣らせた笑みを浮かべる。
「それはお前もだろ?」
クラールハイトの言葉にルージュは嬉しそうに
「お前とは本気でやれそうだ。」
ルージュは魔剣を力強く握ると
「リリースソウル!」
と叫ぶ。魔剣は赤く輝き一気にルージュの力と魔力が跳ね上がる。クラールハイトは血で汚れた布を身から外し地に落とす。地に落ちた時に布とは思えないほどの音を立てる。
「ずいぶんと重そうな布だな。」
「あぁ。鎧が中に付いているからな。これで軽くなれた。」
二人は向き合い同時に飛び出す。二人は目にも留まらぬ速さで互いの獲物をぶつけ合う。至る所で火花が散り、地面にはくっきりと幾つもの足跡が残る。
「まさかこの僕に付いてこれる人間がいるなんて驚きだ!」
「これだけ処刑しにくい生物は初めてだ。」
ルージュは魔剣を振りながらもメルダインの剣を握り
「花吹雪!」
と舞い散る斬撃を放つ。クラールハイトはすべての欠片を捌くことができず、体の至る所に切り傷が生まれる。が、クラールハイトは花吹雪の中を傷を負うことを構わず突っ込んでいき、ルージュの魔剣を打ち返すだけに専念する。
「君、本当に人間か?頭おかしいだろ?」
ルージュは無謀にも見えるその姿を嗤う。だがクラールハイトの表情は一つも変わらない。ルージュは花吹雪は止め、クラールハイトから一歩退く。
「体がボロボロだね。それじゃもうあそこまで素早く動けないだろ?」
ルージュの魔剣に纏っていた赤いオーラが消え、ルージュはクラールハイトの間合いから出る。
「時間制か。」
クラールハイトの言葉に
「そう。命を一つ消費し終わってしまった。手に入れたばかりの命だったが問題ないだろ。残りは寿命を削りながら弱った君を潰すとするよ。」
「そうか。もうこの戦いは終わるのだな。」
「そうさ。最後に言い残すことはあるかい?」
「二段裂き。」
「え?」
ルージュの体は反応できずに頸と胴体が裂かれていた。ルージュの体はその場に崩れ落ちる。
「バカな…。」
「まだ喋れるか。」
クラールハイトはルージュに寄り
「乱れ裂き。」
ルージュの体を細切れに裂いた。するとルージュの体は消えていった。
「任務完了。」
クラールハイトはその場からフロンティアへ向けて駆け出す。
───
時は魔王軍、アンデッド軍が動き始めた頃に遡る。フロンティアでは
「お前ら!王城へ避難しろ!」
「急ぐんだ!」
ゴリラ達が避難誘導をする中、フロンティアの国民達が王城の方へ向かって絶望の色を瞳に宿して逃げ惑っていた。
「まさかこんな早くに再開できるとは思ってなかったぞ。ゴリラ。」
「俺もだ。」
そこには因縁の相手、オリジンとその一派が門兵の死体を持ってフロンティア内に侵入していた。
「手土産だ。」
オリジンは門兵の死体をゴリラ達へ投げつける。センとマサはエデンに向けて駆け出す。
「あいつらの仇!打たせてもらう!」
センが怒鳴りエデンへ殴り掛かる。その隣からマサも攻撃を繰り出す。しかし、エデンは未来予知により全ての攻撃を回避する。
「無駄だ。」
エデンは二人を蹴り飛ばす。
「っ!」
「痛てぇ…。」
エデンは空間移動を使用し、瞬時にセン、マサの背後へ回り腰から抜いた剣で二人を斬り伏せる。
「グッ!」
「アガッ!」
二人は背中から血を流し倒れる。ゴリラとナグリトバシはオリジンへ向かって攻撃を仕掛ける。だが、二人の攻撃はオリジンに届かずワールドに阻止される。
「テメェ!」
「ここから先に行かせると思うか?」
ワールドは一瞬の内に二人を吹き飛ばす。オリジンは
「お前ら、この国を蹂躙しろ。」
と倒されたはずの拾から零とキューブ、ヘル、エターナル、それから無数の《血人》を呼び出す。彼らはオリジンの命令通り国の奥地へ向けて動き出す。
「待ちやがれ!」
ゴリラが追おうとするが
「お前の相手は俺だろう?」
ワールドは時を止めた間にゴリラへ打撃のラッシュを放つ。時が動き出すとゴリラは吐血し倒れる。
「次はお前だ。ナグリトバシ。」
ワールドがナグリトバシへ歩み寄る中、エデンもナグリトバシへと近付いてくる。
「セン!マサ!」
ナグリトバシが二人へ視線を向けるとそこには血溜まりに倒れた二人の姿がある。
「お前らぁ!」
ナグリトバシがエデンとワールドに駆け出した時、エデンがワールドを突き飛ばす。
「っ!何をする!」
ワールドがエデンの行動に訳が分からず声を上げる。エデンは肩から血を流していた。ナグリトバシもワールドも何が起こったのか理解ができなかった。
「元《整合騎士団》だって人達がこんな姿になってたら困りますよ。」
声がする方、建物の上に一人の男がスナイパーライフルを持って立っていた。
「お前は…。何故…ここに…!」
ナグリトバシは彼を見て驚きと疑問を隠せなかった。
皆さん、いかがだったでしょうか。
フロンティアでは《プレデター》の侵攻、そしてスナイパーライフルを持ったナグリトバシが元《整合騎士団》だと知っている男。それからエーデルでは謎の《処刑人》が現れる。
彼らは何者なのか。
そして何故、彼はナグリトバシの事を知っていたのか。
次回第四十三話 VS 《プレデター》〜その壱〜




