第三十九話 襲撃
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第三十九話を投稿させていただきました。
エーデル騎士団との修行中、とある一報の知らせが入る…。
是非お楽しみください。
修行三日目。今日も朝からダルヴィッシュ、アルケイン、メルダインと共に修行を行っていた。そこへ
「急報!急報!」
と一人のエーデル兵が馬で駆けて来た。ダルヴィッシュは修行をすぐに中断し、兵の元へ駆け寄る。
「どうした?」
「はぁっ!はぁっ!た!大変な!ことに!」
兵息を荒らげながら話していると、ダルヴィッシュは兵に水を渡し
「少し落ち着くんだ。」
「あ、ありがとうございます。」
兵は水を二口ほど飲むと
「っ!報告いたします!北から魔王軍!西からアンデッド軍が同時にここ、エーデル王国を目指して動き出したとのことです!そして同時刻、東のフロンティアにて、《プレデター》が現れたとのことです!」
「っ!」
「何だと!」
ルベルとアランは目を見開き、兵に寄る。
「全兵!並びに《暁》!これは一大事だ!これより王と共に今後の動きについて話し合う!全員王の間に集まるように!」
ダルヴィッシュの声に緊張が走り、全員王の間へと移動を始める。
「なるほど。ついに奴らが動き出したか。」
「はっ!」
「ルベルよ。フロンティアに、仲間がいると言ったな?何人いる?」
「戦えるのは四人だ。」
「そうか。」
ルベルの答えにエーデル大王は頭を悩ませる。そして
「では時間が掛かるが、クラウス、トーマス、リリィ、スティカ。君達四人はフロンティアへ向かえ。そして、メルダインはエーデル全兵と共にアンデッド軍を、残りの者達は魔王軍を迎え撃つ。良いな?」
「御意!」
「お任せを。」
「任せてください!」
エーデル騎士団の三人は声を上げる。クラウス達四人はフロンティアへ向かい、メルダインとエーデル兵達は西へ、ダルヴィッシュ、アルケインと残りの《暁》メンバーは北へ向かった。
「エーデルの兵達よ!俺達はアンデッドの野郎共を一体たりともエーデルに侵入させるわけにはいかない!あそこにはお前達の親や兄弟姉妹、恋人、大切な人達がたくさんいるはずだ!俺達がここで勝てなければ全てを失うことになる!覚悟はいいな?!」
メルダインの声に応じるように、おぉー!と轟音のような雄叫びが上がる。メルダインはエーデル兵達から西へと視線を向け
「行くぞぉ!突撃ぃ!」
メルダインの声と共に二千近くの兵達がメルダインを先頭に動き出す。西からは土煙が上がっており、千体を超えるアンデッドの大群が攻めてきているのが分かる。
「一斉攻撃だ!アンデッドを蹴散らせ!」
メルダインは叫ぶと、腰から剣を引き抜き
「花吹雪!」
と剣を振るうと、剣身は粉々に砕けたガラスの破片のように変化し、風に舞う花びらの如くアンデッド達へ襲い掛かる。
「流石はメルダイン様だ!」
「俺達もやってやるぞ!」
メルダインの攻撃は一気に十数体のアンデッドを斬り裂く。それはエーデル兵達の士気を上げる結果となり、エーデル兵達も次々とアンデッドを蹴散らしていく。
「喰らえ!」
「国を守るぞ!」
そうしてアンデッド軍とメルダイン達がぶつかり始め十分程経過した頃、メルダイン達は約千体近くいたアンデッド軍の半分以上を地に伏せさせていた。
「このまま押し切るぞ!」
メルダインがエーデル兵達の士気を今以上に引き上げるために喝を入れる。それに対して兵達は今まで以上の熱気を放ち雄叫びを上げる。だが、メルダイン達の最後列の兵士が
「おい、何か後ろが騒がしくないか?」
と言いながら振り返る。隣にいた兵も一緒になって振り返る。二人は驚愕の景色を見ることとなる。そこには、倒したはずのアンデッド軍が立ち上がり、エーデルへと攻め始めていた。
「なっ!」
「メルダイン様に報告を!」
一人はエーデルへ迫るアンデッド軍へ向かっていき、もう一人は、兵達の間を抜けていき、メルダインの元まで駆けていく。
「メルダイン様!」
切迫した声にメルダインは振り向き
「お前は最後列の…。どうした?」
「倒したはずのアンデッド達が蘇り、エーデルへ向かっています!」
それを聞いたメルダインを含めた兵達の間には戦慄が走る。だがメルダインはこんな時こそ落ち着き
「お前とそれからあと五人俺に着いて来い!後ろのアンデッドを潰しに行く!前線は任せるぞ。兵士長。」
「御意!」
メルダインは兵士長に前線を託すと、六人の兵を連れ後方へ駆ける。一方、後方ではすでに数十体のアンデッドによるエーデルへの侵入を許してしまっていた。
「クソ!俺一人じゃ止められない!」
一人残りアンデッドに向かっていた兵は、今のこの状況に苦しみながらもアンデッド達を叩き切る。しかし、アンデッドはすぐに蘇り侵攻を続ける。
「国の皆が…!」
「よく一人で耐えた!」
その時、アンデッド達が一斉に斬り裂かれる。
「っ!メルダイン様!」
「さあ!これ以上好き勝手させるわけにはいかない!叩くぞ!」
メルダインに続き七人の兵はアンデッド達へ攻撃を仕掛ける。
「花吹雪!」
舞い上がる刃の破片がアンデッド達を斬り裂くも、アンデッドは無尽蔵に蘇り、エーデルへ向かっていく。
「くっ!こんな時にダルヴィッシュがいればよかったが、仕方ないな。押し通るのみ!」
アンデッドをひたすら斬り倒していくメルダインや兵達。それを民家の屋根に乗り眺める者がいた。
「メルダイン様!あそこに新手が!」
「なっ!」
メルダインが見上げると、そこには黒い鎧に身を包んだ騎士がいた。
「何者だ!」
「まずはそちらから名乗るのが道理ではありませんか?」
黒騎士はそう言うと屋根から降りてくる。
「それもそうだな。俺はメルダイン!この国の騎士だ!」
「ほう。そうですか。私はリチャード・ノワールと申します。」
「お前はアンデッドの仲間か?」
「違うと言えば嘘になりますが、あなた方に危害は加えませんよ。私はある人を探しているのですよ。ただ見つからなく困っているところでしてね。」
「そうか。一応聞くが、探し人を見つける手伝いをする代わりにこのアンデッド達を倒すのを手伝ってくれないか?」
「おやおやこれは。とても良い提案ですね。ではあなたには生きていてもらわないといけませんね。」
そう言うと黒騎士は亜空間へアンデッド達を呑み込んだ。
「倒せてはいませんが西の国まで飛ばしておきました。」
メルダインと兵の七人は呆気にとられていたが、その時メルダインとノワールは強力な魔力を感じ
「すいませんがここにいるわけには行かなくなりました。どうか武運を祈りますよ。メルダイン。」
するとノワールは自分を先ほどの亜空間へ呑み込まれていく。
「なんだったのか分からないがこれであとは後ろのアンデッド達を追い払えば俺達の勝ちだ!」
「おぉ!!」
そしてメルダインを含めた八人が後方で戦う兵士長達の元へ向かおうとしたところ、兵士長達がいた方からアンデッド達が迫りつつあった。
「っ!どういうことだ…!」
アンデッド達の戦闘には赤い鎧に身を包んだ者がいた。
「あれ?ノワールの魔力を感じて来たんだがいないのか。」
「今度は赤か。お前は黒騎士の仲間なのか?」
メルダインが問うと赤騎士は
「黒騎士…。ノワールの事かい?」
と聞く。
「そうだ。」
「うん。ノワールの仲間だよ。でも何でノワールの事を知っているんだい?彼に会ったのなら君達は殺されてると思うけど。」
「っ!奴は人を探すと言ってどこかへ消えていったぞ。」
「人探し?誰を探しているんだろう?まあいいか。それよりも君達を殺すことの方が重要だ。この国には《終末の七勇者》の一人がいるらしいからね。それに、ここを落とすことがタルタロスの望みでもあるからね。」
「花吹雪!」
メルダインはすぐさま赤騎士へ攻撃をする。赤騎士は鎧を外すと、花吹雪へ向けてふぅっと吐息を掛ける。すると、花吹雪は散り、メルダインの元へ剣として戻る。
「その剣いいね。僕も欲しいな。」
「それよりお前に聞きたいことがある!向こうにいたエーデル兵達はどうした!」
赤騎士はメルダインへ近付き
「彼等なら僕がみんな殺してきたよ。先頭にいた奴は筋は良かったもののやはり人間だった。」
「貴様ぁ!何者だぁ!よくもぉ!」
メルダインが激怒し赤騎士へ怒鳴りつける。赤騎士は
「僕はヴィルヘルム・ルージュ。」
メルダインは剣を構え、兵達に
「お前達はアンデッドを止めろ!ここは俺がやる!」
「そうはさせないよ。」
兵達はメルダインの指示に従いアンデッド達へ向かおうとするが、ルージュは足を振り払う。するとそれによって生まれた衝撃波が異常な程強力なものとなり、兵七人と周囲の民家をぐちゃぐちゃに粉砕させた。
「あぁ…少し加減を間違えてしまったみたいだ。」
とルージュは苦笑してからメルダインへ向く。
「これで兵に構わず僕に集中できるかな?」
「き、貴様ぁ!」
メルダインは剣を振るい
「花吹雪ぃ!」
とルージュへ攻撃を放つ。ルージュは腰に下がった剣を引き抜くことなく花吹雪へ向かっていき、足を勢い良く踏み込む。すると踏み込んだ際に生まれた衝撃波が大きな地震を起こし、突風とともにメルダインを襲う。花吹雪は防がれ体勢を崩すメルダイン。
「っ!強すぎる…。」
メルダインは揺れる地に足を踏ん張り、ルージュを睨む。
「花吹雪!」
メルダインはもう一度花吹雪をルージュへ放つ。
「またそれかい?」
ルージュはまた地面に足を踏み込み花吹雪を弾く。だが、メルダインは違う剣を手に握り、それをルージュの胸に突き刺す。
「っ…。まさか短剣を隠していたなんて…。」
ルージュは鮮血を零し倒れるが、少しすると立ち上がり完全に傷は塞がっていた。
「お前はアンデッドなのか…?」
「いいや。」
ルージュは否定すると、メルダインのみぞおちへ強烈なパンチを炸裂させる。
「ごがぁっ!」
メルダインは吹き飛び崩壊した民家へ突っ込む。
「《原初の悪魔》の赤さ。」
メルダインは膝を付いてうつ伏せになると、逆流してきた胃液を吐く。胃液には血が混じっており、内臓を負傷しているようだった。
「これで終わりだよ。」
ルージュはうつ伏せのメルダインへ足を振り下ろす。だが
「動くな!」
と可憐な声が戦場に響き渡る。エーデル王国の中央街から女性が現れルージュへ剣を向ける。
「君は誰かな?」
「誰が話していいと言った?跪け。そして質問にだけ答えろ。」
ルージュはその場に跪く。ルージュは抗おうとするも、体が言うことを聞かない。それに焦り、冷や汗を垂らす。
「貴様は何者だ?」
「僕は《強欲》のヴィルヘルム・ルージュ。《原初の悪魔》の赤。」
「そうか。お前の目的は?」
「封印された仲間を解放するためにタルタロスと協力し、まずここ、エーデルを落とすこと。」
「仲間はどこに封印されている?」
「フロンティアの王城地下。」
女性はそれを聞くと、剣を振り下ろし、ルージュの首を落とす。
「お前はこの王国の騎士か?」
女性はそれからメルダインへ視線を送る。
「…そうだ。俺はメルダイン。」
「私は《終末の七勇者》アーサーの力を宿す者。オリジンとマーリンの子、ルシファーだ。」
「オリジンとマーリン…だと…。お前は味方なのか?」
「味方だ。そして私の弟と妹も《終末の七勇者》だ。」
「…つまり、俺の知人もオリジンとマーリンの子。それも二人も…。」
「面白い話だな。」
首を斬り落とされたルージュは起き上がり身に付けていた鎧が崩れ落ちる。
「まだ命が残っていたか。」
ルシファーの声にルージュは腰に掛かる剣を抜くと
「そろそろ幕引きといこうか。」
そして剣先をルシファーに向ける。ルージュの剣は赤いオーラを纏い始め、メルダインは剣から溢れ出る魔力に怯んでしまう。
「魔剣か。」
ルシファーの言葉にルージュは
「御名答。君のような強い相手には使おうと思っていてね。この魔剣は僕の命と引き換えに強力な力を引き出してくれる。」
「となると残りの命も限られてくるな。」
「そうだね。魔剣に使ってしまったから残りは一つだ。」
「ならばここで屠るまで。」
「君一人にできるかい?」
ルージュは余裕の笑みを浮かべルシファーを見る。だがルシファーはそんな事を気にすること無く
「アンデッド共!ルージュを取り押さえろ!」
とルシファーの可憐な声が響く。アンデッド達はルシファーの声に反応し、一斉にルージュへ飛び掛かる。
「厄介だな。」
ルージュは魔力を帯びた魔剣を振り払い、迫るアンデッド達を一体残らず灰にする。そしてすぐさまメルダインの背後へと回る。
「花吹雪!」
「遅い。」
ルージュはメルダインの腹部に魔剣を突き刺す。
「ぐっ!」
「君の命、使わせてもらうよ。」
ルシファーはすぐにルージュへ駆けながら
「メルダインから離れろ!」
と叫ぶ。ルージュの体は自分の意思とは反してメルダインから離れる。だが魔剣はメルダインに突き刺さったままだった。メルダインは魔剣の柄を握り、引き抜こうとする。しかし、魔剣はびくともせず抜くことができない。
「そこへ跪け!」
ルシファーの声でルージュは跪き、動きを封じられる。その間に、ルシファーはメルダインに刺さった魔剣を引き抜こうと試みる。ルシファーが引こうとも、魔剣はびくともしなかった。ルシファーは懸命にメルダインから魔剣を何度も引き抜こうとする。しかしメルダインはルシファーの手を握り
「ルシ…ファー…。もう俺は…ダメ…だ。」
「諦めるな!何故戦っているんだ!世界を救うためだろ?ならば諦めるな!」
「いいや…。自分で…分かる…んだ。もう、立ってるのも無理…そうな…んだ…。」
「くっ!」
ルシファーは目の前で味方を失いたくない一心で諦めようとしない。その間にもルージュは《声》を無力化し始める。
「少し時間が掛かったけど、ベルフェゴールの洗脳よりは手強くないみたいだね。」
ルージュはそう言いながらルシファーとメルダインへ近付いていく。そしてルシファーを蹴り飛ばし、メルダインの前に立つ。
「あっ!」
ルシファーは勢い良く民家へ激突し、頭から血を流して気絶する。
「ルシ…ファー…。」
「そろそろ全て取り込む頃だね。言い残すことはあるかな?」
ルージュはメルダインへ問いかける。
「ダル…ヴィッシュ…アル…ケイン…ありが…とう…。」
そこでメルダインはルージュへ倒れ掛かる。ルージュはメルダインを支えると、魔剣を引き抜きメルダインを離す。それから魔剣を鞘へ納めるとメルダインの剣を手に取り
「これは貰っていくね。…それじゃ、エーデル王国を落とすとしよう。タルタロスには後で謝らないと。アンデッドをみんな灰にしちゃったからね。」
そうしてルージュはエーデル王国の中央街へと向かっていく。ルージュの襲撃によりエーデル王国は破壊の限り破壊された。しかし、国民と王城に住まう者達から犠牲者は出ることはなかった…。
皆さん、いかがだったでしょうか。
アンデッド軍、魔王軍の侵攻が始まり、エーデル騎士団と《暁》がそれぞれを制圧するために動き出した。
しかしそこに現れた《原初の悪魔》が一人、ヴィルヘルム・ルージュ。
一体この戦いの行方はどうなってしまうのか。
次回 第四十話 迎撃




