第三十六話 北の地、西の地
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第三十六話を投稿させていただきました。
エーデルから北と西の王国へ手分けをして仲間たちを連れ戻すためアリスとヤミはダルヴィッシュとアルケインとそれぞれの地へ向かう。
是非お楽しみください。
ヤミとアルケインは馬車で北の地へ向かっていた。
「ヤミ殿、あなたはフロンティアから参られたのだな?」
「はい。そうです。」
「ヤミ殿達は魔王軍の幹部と戦ったと聞くが、どんな相手なのだ?」
「私はアヴァロン九姉妹のグレーテンとしか対峙してないのでそれしか分からないのですが、グレーテンの能力は姿を変幻自在に変えられるものでした。そして、分身もします。」
「なるほど。厄介な相手だったのだな。それをヤミ殿達が?」
「いえ、ダルヴィッシュさんが倒してくれました。」
「なるほど。ダルヴィッシュ様が相手をしたのか。やはり魔王軍は手練れであるには違いないな。北の地には狂暴なモンスターがたくさんいると聞く。魔王軍ほどではないだろうが。」
「そうなんですね。」
「しかし、北までとなるとまだ掛かりそうだな。いつでも動けるようしっかり体を休めておけ。」
「はい。」
その後二人の間には長い沈黙が訪れた。
「ヤミ殿。そろそろ昼時だがサンドウィッチ食べるか?」
「でもそれはアルケインさんのでは。」
「気にするな。まだある。」
「…ではいただきます。」
ヤミはアルケインから受け取ったサンドウィッチを食べる。
「これとても美味しいです!」
「ならよかった。」
「アルケインさんが作ったのですか?」
「いや、妹が作ってくれたのだ。」
「アルケインさん、妹さんがいるんですか?なんか以外でした。」
「そうか?…ヤミ殿、別に敬語でなくても構わんぞ。」
「わかりました。アルケインは妹さんと仲良いの?」
「まあ、それなりにはな。」
「そうなのね。今度アルケインの妹さんにサンドウィッチのお礼が言いたいわ。」
「そうか。なら魔王軍を倒したら家に来るといい。」
ヤミは貰ったサンドウィッチを食べ終わり、アルケインも昼を済ませた。それからしばらく二人の沈黙の中、馬の駆け音と馬車の車輪の音が鳴る中アルケインが外を、見やる。それと同時ほどに御者の兵士が
「そろそろ北の地に入ります。」
と報告をする。アルケインはヤミを見て
「準備は出来てるな?」
とだけ言う。ヤミは頷き
「もちろん。」
と答える。馬車は北の地へ入る。しばらくするとそこら中に魔族が倒れている。
「まさか、こいつらと交戦したのではないだろうな。」
「アランと神木ならやりかねないかも。」
近くにある森に馬車を止め兵士が手綱を木の幹に縛り付けておく。
「君はここで待機していてくれ。」
「了解です!」
アルケインは兵士に声をかけてからヤミと共に先へ進む。すると激しい交戦音が聞こえてくる。
「いくぞ。」
「ええ。」
アルケインとヤミは駆け足で向かうと、そこではアラン達が魔族と戦っていた。
「神木!茜!」
「っ!ヤミか!お前どうしてここに?」
神木が聞くと
「北は魔王軍に占領されてるって話を南のエーデルで聞いて、エーデルの騎士と来たのよ。」
「あら、お仲間?良いわね。」
神木とヤミの会話を聞き不敵な笑みを浮かべた女性が森の奥から姿を現す。
「貴様、何者だ?」
アルケインは禍々しい魔力を感じ女性を睨みつけ問いかける。
「私はアヴァロン九姉妹が一人、モーロノエー。」
それを聞き顔を顰め、アランに視線を向けると
「お前がアランだな?」
「あぁ。あんたは?」
「俺はエーデル王国近衛騎士団のアルケインだ。ここは一旦退くぞ。」
「こいつはここで仕留める。」
アルケインの言葉にアランは聞く耳を持とうとせずモーロノーエへ向かっていく。
「今すぐに撤退するべきだ。この地には狂暴なモンスターがいる。そいつが出てくるとまずい。」
「あら、急に割って入ってきて逃げるなんて。それでも騎士なの?」
「もちろんだ。」
「でも逃がさないわ。」
モーロノエーは薄く笑みを浮かべると、アルケインが吹っ飛ぶ。
「アルケイン!」
ヤミが声を上げる。
「さあ!侵入者を殺れ!魔神共!」
すると森の奥から無数の魔神が現れる。背丈が五、六メートル程あり、気味の悪い紫色の体をしていて、それが何体も現れる。
「よりによって魔神族か。」
吹っ飛ばされたアルケインが戻ってくる。
「アラン!この人数ではこいつらを相手にするのは無理だ!」
アルケインの忠告に、アランも魔神の脅威を理解しており撤退を受け入れる。
「…クソッ!分かった。撤退する。」
「こっちに馬車がある!全員走れ!」
「逃がさないわよ!殺れ!」
馬車のある方向から無数の魔物が現れる。背後にはモーロノエーと無数の魔神族。
「一気に抜けるぞ!」
アルケインは先頭を走ると、剣を鞘から抜き
「魔剣ブルー エンチャント フレイム!」
アルケインの剣は青い炎を纏い一気に魔物達を切り伏せていく。それを見たモーロノーエは目を見開き
「あの魔力…。」
アルケインに続きアランも次々に魔族達を切り伏せていく。だが
「きゃぁ!」
茜が金縛りに合ったかのように動かなくなる。
「茜!大丈夫か!」
神木が茜の元へ駆け寄るが、神木は何者かに殴られたように倒れる。
「クソ!何かいやがる。」
「死神ちゃん、鬼ちゃんは前の魔物を倒して!ブラックナイト、茜ちゃんと神木を助けるよ!」
ヤミは同時に式神を三体召喚しそれぞれに指示を出し、ヤミはブラックナイトと共に茜と神木の元へ向かう。死神は大鎌で魔物を斬り倒し、鬼は金棒で魔物を叩き払う中、ヤミは茜を連れていこうと腕を引くがびくともしない。
「茜ちゃんが動かない!まるで何者かに捕まれているように!」
「ええ、そうよ。その子は私が掴んでいる。離してほしいなら私を倒してみなさい。」
モーロノエーは挑発するが、神木は
「お前が掴んでるんなら話は早ぇ!ヤミ大技使うからその後は頼むぜ。」
「任せて。」
神木は刀を鞘から抜くと、刀が黒く染まり
「ふっ!」
茜とモーロノエーの間に刀を振り下ろす。すると茜の体は自由になる。
「なぜ!」
「へへ。やってやったぜ。」
刀身は元の色に戻るが、神木は剣に体力を一気に吸われふらつき、鼻血をを垂らして膝を着く。
「ブラックナイト!神木を抱えて走って!」
ヤミは茜と走りながらブラックナイトに指示する。ブラックナイトは神木を抱き抱えるとそのまま走り出す。
「魔神共!追え!」
アラン達は前にいた魔物達を全て倒し終わり馬車の近くまで来ていた。
「ヤミ!茜!ブラックナイト!急げ!」
アランが声を上げる。皆は馬車に乗り込み、遅れてきた茜達も馬車に乗る。
「出してくれ。」
アルケインが馬車を出すように兵士に促すと、馬車は全速力で走り出す。
「くっ!逃がしたか。魔神共、戻るぞ。」
モーロノエー達は森の奥へと消えていった。アルケイン達が乗った馬車はエーデルを目指した。一方、アリスとダルヴィッシュは西の地を目指していた。
「ヤミちゃん達、大丈夫かな?」
「問題ないですよ。あっちにはアルケインがいます。」
「アルケインさんは強いのですか?」
「ええ。我が騎士団において剣術だけでも三位の実力者です。」
「そうなのですね。」
「そろそろお昼時ですね。お腹は空きましたか?」
「…はい。」
「どうぞ。」
ダルヴィッシュはサンドウィッチを差し出す。
「わぁ!美味しそうですね!ダルヴィッシュさんが作ったのですか?」
「いえ、これはアルケインの妹殿が作ってくださったのです。」
「アルケインさん妹さんがいたのですね。何か意外です。」
「私もそう思います。」
二人はそんな話をしながらサンドウィッチを食べていた。しばらくして
「アリス殿、見えてきましたよ。」
「あれが西の王国。」
二人を乗せた馬車は西の王国へと入っていく。その時、馬が嘶き馬車が止まる。
「ダルヴィッシュ様ぁ!」
御者である兵士の叫び声が聞こえ、ダルヴィッシュがすぐに外を確認すると、そこにはアンデッドが兵士と馬を取り囲み、剣や斧で攻撃していた。
「まずい!アリス殿は馬車の中にいてください!」
ダルヴィッシュはすぐさま馬車を飛び出すと、剣を鞘から引き抜き攻撃を仕掛ける。だが、いくら斬られようとも、アンデッドの傷は再生し、馬へ攻撃をしてくる。
「ダルヴィッシュさん!私も手伝います!」
アリスは馬車から出てきて
「符術 火炎!」
アリスは炎でアンデッドを包み込み焼き払う。アンデッドは傷を再生することが出来ずに燃え尽きて消えていく。
「炎ならアンデッドを倒せるのか。なら私も!シャイニングブレイク!」
ダルヴィッシュの剣は炎を纏い、アンデッドを切り裂く。アンデッドは切られた部分から灰となり消えていく。
「アンデッドを追い払えたものの、馬がこれではもう走ることは出来まい。しかし君は無事で良かった。アーレン。」
馬は無惨にも、切り傷や刺し傷だらけで倒れていた。それを見たあとでもダルヴィッシュは御者の兵士にそっと微笑みかけた。
「アリス殿、彼の傷を癒してやってくれませんか?」
「あ、はい。…符術 治癒。」
兵士の傷は癒えるが息を引き取った馬は蘇生することができない。ダルヴィッシュは馬と馬車を繋いでいるハーネスをほどくと近くの大きな木の元に大きな穴を掘り、馬を埋葬する。
「ここまで運んでくれたこと、感謝する。ゆっくり休んでくれ。」
アリスと兵士はダルヴィッシュの隣で合掌をする。
「アリス殿、先を急ぎましょう。アーレンはここで待機していてください。」
「はい。」
「了解です!」
アーレンは馬車の側で待機し、アリスとダルヴィッシュはそこから歩いて先を目指す。歩いていると奥の方に巨大な王城が見えてくる。
「あそこがアンデッドの根城になっている所です。」
「凄く大きいのですね。」
二人は王城を目指し歩いていくとルベル達の姿が見える。
「ルベル!」
アリスが声を掛けるとルベルは少し驚いた顔をして振り返る。
「アリス?お前こんなところで何をしている?南に行ったのではないのか?」
「そうなんだけど、南の王様が北と西は魔王軍とアンデッド軍が占領してるって言ってて、ヤミちゃんと手分けして来たの。」
「なるほど。で、そこの男は?」
ルベルはダルヴィッシュに目を向ける。
「私は南の王国、エーデルの近衛騎士団団長のダルヴィッシュと申します。」
「俺はルベルだ。」
「私はキツネです。」
「リリィよ。」
「スティカです。」
一通りの自己紹介が終わるとアリスが
「ルベル、私とヤミちゃんはエーデルに向かう最中にグレーテンに遭遇したの。そこでダルヴィッシュさんが私達を助けてくれて、グレーテンを倒してくれたの。」
「グレーテンを、か。」
ルベルは少し興味を持ったように話を聞いている。
「それで、グレーテンがダルヴィッシュさんの事をガウェインと呼んでいたの。」
「ガウェインだと!それは円卓の騎士の一人のガウェインのことか?」
「そう。四人目の伝説の七勇者よ。」
キツネ達は驚いたようにダルヴィッシュの方へ目をやる。
「そうか。で、ダルヴィッシュを加えてここを潰すのか?」
ルベルの問いにアリスは頭を横に振り
「いいえ。一旦エーデルに全員を集めて作戦会議を開いて、今後の方針を決めるの。フロンティアにもそれを報告しに行かなきゃなの。」
「そうか。」
「アリス殿、報告なら大王が使者を使ってフロンティアへ向かわせています。なので私達はこのままエーデルへ向かいます。そこで一つ伺いたいのですが、ルベル殿達は馬車を持っていますか?」
「ああ。西の王国の門から離した所にな。」
「それは良かった。私達は来る途中にアンデッドの襲撃を受け、馬を失ってしまいまして。」
「そうか。馬車はこっちだ。」
アリス達はルベル達の後に続き馬車を目指した。全員馬車まで辿り着き馬車に乗り込むと、エーデルへ向かって走り出した。
皆さん、いかがだったでしょうか。
それぞれの地へ向かったアリス、ダルヴィッシュとヤミ、アルケイン。
彼女らは仲間と合流し、エーデルへ向かって魔王軍討伐の為の作戦会議を行うことになる。
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