桜貝
寒風の丘、薄光に雲が透かされ、
桜貝のような光形を浮かばせていた
麗しき色に思わずわたしはカラカラに渇ききった自分の唇の皮を歯で剥いで、飲み込み、
リップクリームをベタベタと塗り重ねた
そうして光が私を照らしてくれる場所までゆき
桜貝の雲のように光に透かされ
頭半分透明になってゆく夢をみる
ほのかな風にふわりと軽くなりたい
桜貝の雲、光って、頭半分くらい透明になって、
虫っケラ、ケラ、ケラケラ笑う
その川面に浮かびゆくは光に生まれ変わってゆく
二羽の鴨、二羽の蝶のゆらめき
水皺をつくりながら、風の輪を廻りながら
互いの耳に小雪を降らせて
羊雲に包まれて 指折り数えて夢をみたい
ふっと嘘みたいな闇が
本当みたいな別れになっても
本当は冗談だと笑い合いたい
そんな嘘を光で透かしたなら
半分透明になったわたしの中に映る
ふたりの想い出、あなたの笑顔
羊雲のような 真綿で包んで、、
小舟からみた麗らかな白無垢の儀式
頭半分くらい透明になって
春風に乗って
ゆきたいところへゆけるなら
それはあなたが眠っている場所
土の中ではない、
みえるのは
わたしの心に眠り続ける桜貝のような淡い光