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第2話 人生、始まった瞬間に終わったんですけど!?

 私、東郷聡美(とうごうさとみ)は、数ヶ月前まで、勉強だけは出来るただの日本人だった。


 決して地頭が良いわけではない。

 だが、狂った両親に無理やり勉強させられ、学力だけでいったら相当なものになっていた。



 父も母も勉強はからっきし。

 学校ではいつも馬鹿にされていたという。



 「聡美にはそうなって欲しくない」

 そう言われた時には嬉しいと思った。

 だが、それはただの勘違いだった。



 テレビゲーム禁止。勉強以外の会話禁止。

 それどころか、連絡手段すら持たせてくれない。



 「小学校、中学校の授業はレベルが低いから」

 そう言われ、学校には行かされずに塾や家庭教師を利用させられていた。


 小学校、中学校は、義務教育のため出席せずに卒業できたが、高校ではそうは行かない。

 なので偏差値75以上の高校に行かされ、卒業できる様に登校だけはさせてくれた。



 ネットが使えなければ勉強以外の話も禁止されてるため、頭の中は勉強のことしかない。

「話しかけられても、『私、人と話すの嫌いなの』と言いなさい」と強要された。

 友達なんて、私にとっては空想の何かかと思っていたぐらいだ。



 唯一の楽しみは食事の時。

 祖父がウニ漁師なので、よく食卓に高級ウニが並ぶのだ。

 甘いウニは、私に「お疲れ様」と言ってくれているような気がした。




 だが、その幸せが吹き飛ぶ様な出来事が襲いかかる。


 誕生日。

 それは1年に一度の勉強しなくていいと言われた日。



 息抜きに見せられた一つのビデオ映像で、私は恐怖を覚えた。

 生まれたての私に両親が掛け算を教えていたのだ。


 「さんにがろく、ほら、ちゃんと覚えなさい!」


 明らかに異様な映像に鳥肌が抑えられず、腕をさすった。

 両親は「嬉しいでしょ?」と言いたげな表情でこちらを見てくる。


 (き、気持ち悪っ……)


◆◇


 ある日、突然言われた「某難関大学の入学試験を首席で合格できたら『好きにしていいよ』」という言葉。



 明らかに無茶な話だ。

 だが、数年ぶりに笑みが溢れた。



 試験を受け、満足げに帰ってきた私を見て両親も嬉しそうだった。



 試験の結果が届いた当日。

 私はグレて引きこもった。


 だって言われたんだもん。

 「好きにしていいよ」って。



 要するに、首席で合格したということだ。



 『自分の息子は頭いいんだぜ』『あの大学に入学したんだぜ』と自慢したいだけの2人を切り捨て、新しい人生を謳歌した。



 2人も想定外だっただろう。

 せっかく難関大学に入学し、勝ち組人生を送れるというのに、

 まさか全てを捨ててただのインターネット廃人になるなんて。



 物事には、反動というものがつきものだ。

 今まで上に引っ張られていた分、力が無くなれば、そりゃぁ下に落ちるわけよ。



 ネットを使える様になって知ったのだが、私の様なケースは親を訴えることができるらしい。

 人との会話を制限したのも、訴える知識や判断を与えないためだろう。



 だが、自由を手に入れた私にとってはどうでも良かった。



 それからはもうゲームざんまい。

 今まで勉強していた時間を、ゲームの時間に置き換えた。


 それはそれは充実した日々になったよ。


 記念すべき初めての友達もでき、家族よりも信用できる仲間ができた。



 お金なんて、ゲームの大会で稼げばいいだけのこと。

 裕福とは言えないが、生活できなくはない。



 「これからしばらく引きこもるんだし、非常食としてカップラーメン100個ぐらい買っとこうかな」


 数日後、届いたのは異常な量のダンボール。

 訳がわからなかった。



 箱の中を確認すると明らかに100個以上のカップラーメンがある。

 ここで私は気づいた。

 「0の数間違えてるやん」と



 持ち金は0円。

 数学で答えが0になった時は『気持ちい!』と思うが、今ピッタリ0になられても全く嬉しくはない。

 公式大会も半年後だ。


 かろうじて電気代と水道代は稼げるかもしれないが、食べ物はカップラーメンだけになるだろう。


 まあ、半年ぐらい一瞬で過ぎるよね。



 え?アルバイト?そんな恐ろしい事するわけないじゃん。

 ネット以外ではまともに喋ることすらできないのに面接が受かるわけない。




 こうして五ヶ月が経った。



 「最近なぜかゲームでミスが増えたなー」

 と思った頃には遅かった。

 体がぶっ壊れていたのだ。


 腕や足が痙攣し、食欲もない。

 それにどうしようもない眠気。



 最後に食べたのいつだっけ……。

 栄養よりも味を優先したことが失敗だったかな……。



 「そ、そうだ。誰かに助けを求めないと……死ぬわけにはいかない。約束してるんだ。いつか会おうって」


 そう言ってスマホを手に取り『119』と打とうとしたが。


 (意識……が……)


「@:8#@:@9;3*@8。

4@47「88;8@2@#353!



◇◆


 限界を越えたのか、体の違和感がなくなった。

 そして目の前に広がる白い空間。

 夢でも見ているのだろう。



 「自分が死んだことに気づいてないんスカ?」


 なんか腹が立つ声の主を見つけようと振り返ると、そこには人間ではない何かがいた。

 服に印刷された『私は神だ』という文字を見て、あぁ、死んだのか、と確信した。ていうかその服ダサっ!



 「もう少し地球でネットを堪能したかったんだけどな」


 3シーズンのアニメを網羅した私にはわかる。異世界に行くイベントだろう。

 あんなに現実主義のガリ勉だった私はどこへ行ったのやら。



 「お前しょーもない死に方したのぉ!可哀想なお前を転生させてやるよ。ただし、転生後の能力は大学偏差値に比例して強くすることにしまーす!!引きこもりゲーム廃人にはきついねぇえええええ」



 やっぱり異世界に行くことができるのか。

 それにしてもこの神は何でこんなに喧嘩腰なんだ?



 「偏差値70あったらどれぐらいの強さになれますか?」



 「70!?お前の事はよく知らんが、オタクがそんなに勉強できる訳ないだろ!クククッ。それだけあれば宇宙を支配できるんじゃないか?ま、お前はみじんこ程度にしかなれないと思うがなぁ!!」


この時の神は知らない。


私の偏差値が84ある事を。

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