第11話 メイドに脱がされたんですけど!?
これは楽譜というより暗号というべきではないのだろうか。
頭を使う前に糖分補給をしよう。
そんな言い訳をしてテーブルに置かれたデザートに目を向ける。
コンコン
ノックをして入ってきたのは、綺麗なお召し物をした少女だった。
「入っても宜しいですか?」
文章を読み上げたようにそう言った少女に私は突っ込んだ。
「そういうのは入る前に聞くものじゃない?」
私の言葉は聞こえなかったのか、ズンズンとこちらに向かってくる少女は、デザートの乗ったテーブルの前まで来て腕を組んだ。
「なんか私のデザートが少ないと思ったら……」
「あ、ごめん、私が来ちゃったせいで貴女のデザートが減らされちゃったのかな。遠慮なく食べて!」
「当たり前でしょ!」
気の強そうなその子は、本当に遠慮なく食べ始めた。きっとこの家の令嬢なのだろう。
「イチゴのモアモア、ジュビーンって感じが堪らないのよね」
「ん、ん?」
「私、みんなとは違う感覚があるみたいなの。そのせいで変わり者扱いされて意味わからない!おかしいのは皆んなの方だつーの!」
違う感覚?
イチゴでモアモア、それにジュビーン?
これってもしかして、『共感覚』ってやつじゃないかな。
色を見て匂いを感じたり、食べ物を見て触覚を感じたりっていう。
「あ!!もしかして!!」
「どうしたのよ」
「音を聞いて、そのイチゴを感じることもある?」
「あるわよ、それがどうかしたの?」
私はその子の手を握った。
「救世主様……」
「どわぁ!なによ!」
この子がいればいける。
果物と色の暗号、これはこの兄妹の共感覚による暗号なんだ!!
その子がデザートを食べ終わるのを待ってから、ピアノのある部屋までメイドに案内を頼んだ。
「えぇ!?少しお休みになられてください!もうピアノの練習をなさるのですか?」
「やる気が出た時にやるのが一番いいんですよ!」
***
「私の名前はリック。お兄様のピアノを触らせて上げるんだから感謝しなさいよ!」
「ありがとう!私はレーツェル・フォン・ハイリッシュです!」
ここか。
「ひろおおおおおおお!!」
天井が高い!ピアノかっこいい!これが世界の誇るピアニストの部屋ですか。
「これより、リック・シュパノウの協力で、伝説のピアニスト『ゾック』の復活大作戦を行います!」
「ええ!?貴女、お兄様を治すことができるの!?」
「そのために来たからね!」
驚いたリックは、私につかまりピョンピョンと跳ねた。
「何でも協力するから!兄様を治してください!」
急に敬語になったことから、兄への愛情が伝わる。
「じゃあ私の鳴らす音が、何の色、果物を連想させるか言ってくれる?」
「はい!」
最低限『ドレミファソラシド』ぐらいはわかるので、『ド』の音から順に鳴らしていった。
「赤、黄色、オレンジ、紫、青、ピンク、白」
これが暗号に書いてあった色の正体か。
この地道な作業が、なんだかんだで1週間ほど続いた。
◆
メイドのケディーは悩んでいた。
脂肪が増えて肌が荒れてきたからだ。
美人端麗の、レーツェル様なら何かわかるかもしれない。
◆
もうほぼ、ピアノの前で生活しているような私に、いつも差し入れを持ってきてくれるメイドから相談された。
「どうしたら可愛くなれるでしょうか」
話を聞くと、上司的な人『ルーグ』に「可愛くなる方法を教える」とそそのかされ、その通りにしたら、逆に前より悪くなったという。
騙されたのか。元々美しかったケディーに嫉妬して、悪くなる方法を教えたのだろう。
「それなら、私が一肌脱ごうじゃないか!」
「ありがとうございます!それでは、まずは上の服から脱いでいただけないでしょうか」
いやいやいや、ガチで脱がされるとは思ってなかったよ!!




