第10話 流石に厳しいんですけど!?
「リンゴと交換?そのリンゴ、そんなに価値があるんですか?」
「えぇ、このリンゴがあれば、確実に食い繋ぐことができるでしょう?そんな何の金にもならない星の模型よりよっぽど価値があるように思えるのだがね」
こいつ、もしかしてヤバいやつか?
明らかに子供を舐めている。
「いやだ、これはお姉ちゃんから貰った『大事な星の模型』なんだもん」
え・・・
私の勘違いかもしれないけど『この星に想像以上の価値がある事をコイツに知られると、手段を選ばなくなる可能性がある』と思って、あえて本物の星ではなく模型という事にしているのかな?
え、相当頭良くない?
子供だったら「これは本物の星だもん!」ていうものじゃないの?
「ワシに逆らったらどうなるか分からないのか?この領地に送っている食料を全て別の領地に売る事だってできるんだぞ?」
それは嘘だろうな。領地と商売の取引をする際に契約をしているだろうし、何の話もなく、いきなり他の領地が大量の食料を買ってくれるわけないだろう。
調子に乗ったこの権力者を少しだけ分からせようではないか。
「この模型、私が作ったんですけど、よかったら貴方の屋敷、この瓶にいれてあげましょうか?」
ポケットから出したフリをして瓶を生成した。
「いいだろう」
作ってもらう側なのになぜか偉そうな『コイツの屋敷を瓶に入れた』
さっきの星同様、文字通り、コイツの屋敷を小さくしてこの瓶に入れたのだ。
屋敷の中にいた人は、安全な場所にテレポートさせたから大丈夫だ。
「おぉ、これは凄い。初めて見る魔法だ。それに何とも繊細な……」
「金貨10枚で売ってあげます」
「いや、銅貨1枚だ」
「さっき自分で『これは凄い』とか『何とも繊細な』とか言ってましたよね」
私の言葉を聞いたそいつは、首を傾げて「いやぁ、よく見ると粗いところが目立つなぁ。それに薄汚いような」と言い訳を始める。
残念だけど、荒さが目立つのも、薄汚く見えるのも、私の力不足とかじゃないよ。
だって本物のコイツの家だもん。
自分の家に対して「薄汚い」と言っているという事だ。
コイツは自分の家をパンの耳と同じぐらいの価値だと判断したのだろう。
「じゃあ銅貨1枚で売りますよ」
「わきまえてるじゃないか。それぐらいの値段じゃないと、誰も買ってくれんよ」
銅貨を出したそいつは、ニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべてどこかへ行ったが、それと同様、私もニヤリと笑みを浮かべる。
「お姉ちゃん、あんな貴重なものをただ同然で渡して良かったの?」
「大丈夫大丈夫、そもそもあれ、あの人の物だから」
◆◇◆
「はーははは、子どもは頭が悪いな。こんなに安くで売ってくれるなんて」
頭をハンマーで殴られたような衝撃が走った。
「──ど、どうなってる!?ワシの家が……無くなっとる!?」
メイド言いづらそうに教えてくれた。
「さっき、気づいたら全員が外にいたのです。振り返ると、そこにはもう屋敷はありませんでした」
「屋敷がなかった?」
ワシは頭を抱えた。これは夢か、幻か、こんな事が現実にあっていいのか?
「その手に持っているものは何ですか?」
「これは、馬鹿なガキから買ったものだ。『よかったら貴方の屋敷、この瓶にいれて見ましょうか?』と言われてな、……ん?この瓶に入れる?ぁぁあああああああああ!!!この瓶の中身がワシの屋敷なのか!!」
ペラペラの紙なったように「ファサッ」と地面に抱きついた。
「そんなことより、いきなり解雇された場合は2年分の給料を頂く契約になってますので。さっさと払ってください」
メイドにトドメを刺された。
◆◇◆
「ついた……侯爵邸だああああああ!長かったぁあああ!!」
馬車を降りた瞬間、想定外の多人数に歓迎された。
「遠征ご苦労様です。隣の方は……レーツェル・ハイリッシュ様!?何の誤用でしょうか」
執事の発言に、慌てて誤解を正すムートさん。
「違う、私が頼んでわざわざ来てくださったのだ。絶・対・に無礼のないようにしてくれ」
「はい!心得ました」
(そんなに気を使わなくてもいいのになぁ)
部屋に案内されると、テーブルの上には「結婚式でも始めるのですか?」と言いたくなるようなレベルの豪華なデザートが並んでいた。
人に歓迎されたことのない私は、心の内で結構喜んでいたりもした。
コンコンとノックされて入ってきたメイドに本を渡されたので、おすすめの本なのかな。と思いつつ、その本を開くとそれが何かすぐにわかっ──わかるものであって欲しかった。
「『黄色、1、2、5イチゴ、(123)青3、1メロン(23)→(35)』・・・何これ」
「ゾック様の楽譜です」
「ふぇ?これを解読するの?」
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