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日記的 エッセイ

買い物難民

作者: オーフジ

 数年前、レジ袋有料義務化なるものが始まった。この場で法整備自体に賛否を述べはしないが、これのおかげで悩みのタネが一つできた。

 それは初めて入店したスーパーやドラッグストアなどでよく発生する。

「レジ袋はご利用されますか?」

「はい、お願いします」

「サイズはいかがされますか?」

 これだ。

 以前は店員が何も聞かずに必要枚数だけ手渡してくれた。しかし今現在はそうもいかない。レジ袋もお金を払って購入する商品になったわけで、店員の独断で何枚用意するかなど決められなくなった。客自身で判断し選ぶ他ない。

 だが、私は初めてその店を利用しているわけであって、どのようなレジ袋のラインナップが用意されているのか知らないわけだ。仮に教えてもらったところで今から買う商品たちにはどのサイズを何枚選んだらちょうどいいのか、よくわからない。

当然そんなことは目の前のレジ係の方に申し出ればいい。しかしそこで仮に「この商品が入る分だけ」などと言い放ってしまったのなら店員に横柄な態度をとっているようで申し訳なく感じてしまう。意図しない「お前のほうがその点について詳しいだろうが」という皮肉のニュアンスが言葉に乗ってしまうような気がするのだ。

 一度「初めて利用してよくわからないので教えてください」と言ってみたこともあった。一枚ずつ実物を見せて店員さんが説明してくれた。丁寧でありがたいのだが、その説明の最中に私の後ろに列ができてしまい、他の客の快適なショッピングを邪魔してしまった。

どうにか私も店員も周りの客も不快にならずにスマートかつスムーズにレジ袋を購入する手立てはないだろうか。といった悩みを抱えていたある日。私の世界が一つ進歩した。

これは私の前にレジに並んでたおじいさんと店員の会話だ。

「レジ袋は……」

「おまかせします」

「かしこまりました。Lサイズを一枚ご用意しますね」

 私はこれを聞いた時、なんて素晴らしい会話なのだろうと感嘆してしまった。

おじいさんの「おまかせします」という一瞬の言葉遣いから、「あなたの判断の一切を尊重します」という素晴らしいリスペクト精神が感じ取れよう。

ああ、なんて気持ちの良い台詞だ。言った側も言われた側も悪い気分になりようがない。

レジ袋問題の最適解が今ここに発見された。

おじいさんの会計が終わる。

「お次でお待ちの方どうぞ」

私の番が来た。たった今学んだばかりのことを発揮するのみ。私は台にカゴを置いた瞬間にその言葉を発した。

「おまかせします!」

 どうだ。私はこのお店のプロである貴殿を信頼しているのだ。さあ、このカゴに入った商品に合った分のレジ袋を用意しておくれ!

 しかし、そんな私の期待と裏腹に店員が怪訝そうな顔になる。もしかして聞き取れなかったのだろうか。私はもう一度あの魔法を使った。

「おまかせします!!」

「……えーと。何がですか?」

 どうやら一方的な尊敬よりコミュニケーションの方が大事らしい。


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