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彼が店の前へとたどり着き荒い息を整えていると、重厚感のある扉が開き中から顔を覗かせたのは一人の男の子でした。男の子は彼を見ると奥に向かって叫びます。
「お姉ちゃん! お客さんが来ました」
そして彼の方を向き少し咳をしながら
「どうぞ、中へお入りください」
彼は今にも倒れそうな様子だったため思わず支えると、美しい水色の瞳を輝かせてお礼を言いました。すると、奥から緑色の瞳を心配そうに揺らしている店主が現れました。
「瑠香! 大丈夫? ありがとうございます。もう出なくていいって言ったのに……」
そう彼を心配そうに見つめます。彼は水色の瞳を少し曇らせながら
「ごめんなさい。今日は調子が良かったからお姉ちゃんの役に立ちたかったんだ。でも少しふらついちゃってでもこの人が支えてくれたんだよ? この人、凄く優しくてかっこいいね! お客さんだけど……」
彼は視線をリアムに向けると話しかけました。
「お姉ちゃんの話聞きに来たんですよね? お姉ちゃんの話、僕も大好きなので楽しんでいってください」
それだけ言うと彼は奥に行ってしまいました。その様子を不安そうに、彼の姿が見えなくなるまで見守ったあと、彼女は席に座りました。いつの間にか椅子が二脚出ていたのです。彼はいつ出てきたのか全く分かりませんでしたが座ります。すると彼女が話し始めました。
「私は気になったら追求してしまうの。ねえ教えて欲しいの! 本当に腐った餌をあげたの?」
と彼女はもう一度彼に問いかけます。彼は仕方なく口を開きました。
「俺はやっていない。行ったらあの状態だった。それ以外話すことはないから」
そう彼は素っ気なく言うと不機嫌そうに立ち去りました。彼女はやはりと思いました。彼がやっていないとするのならば、一体誰がうさぎに餌をあげたのだろうそう考えて彼女はもう1人の人物に辿り着きます。そうルーカスです。あの場にはもう一人来ていた人物がいたのです。もし、彼が嘘をついているのであれば先生達が信じるのも当然でしょう。なぜならルーカスは誰からも信頼されていて彼を疑う人など一人もいなかったからです。そうなると、何故彼が嘘をついたのかということが彼女は気になって仕方ありません。彼にも話を聞く必要があると判断した彼女は、さっそくルーカスの靴箱に手紙を入れます。その内容はこうです。
小学校の頃のうさぎの餌の事件について聞きたいことがあります。放課後、屋上でおまちしております。
はたしてルーカスは来るのでしょうか。彼女は逃げる可能性も考えていました。授業がすべて終わり放課後になりましたが、ルーカスは一向に現れる気配はありません。そうして、どのくらい時間が経ったのでしょう。空が暗くなり夜の時間が訪れようとしていました。寒い屋上で、彼女はルーカスが来るのをずっと待っていました。もう諦めようとしたその時やっとルーカスが現れました。彼女は安堵の笑みを浮かべて
「随分と長く待たされたようだけれど?」
と彼に文句をぶつけます。それ位は許されるでしょう。長い間待たされたのですから。ルーカスは急いできたのか息を切らしていました。息が落ち着いたのか彼は話し始めます。
「ごめんなさい。手紙を読んだのだけれど怖くて一度逃げました。けど、逃げてはいけないと思い返しもう帰っているかもしれないと思ったけど戻ってきました。まだいてくれてよかった」
その顔はどこか晴れやかでした。彼はぽつりぽつりと話しはじめました。本当は自分が腐った餌をあげたこと。けれど最初は餌が腐っていた事には気づいていなかったこと。どうしようかと悩んでいるうちに誰かが来る気配を感じ思わず隠れてしまい様子を伺っているとカイルが来て先生を呼びに行ったことに気づき自分はとんでもないことをしてしまったのではないかと彼は思ったようです。
彼はこんな言い訳をしました。いつも自分がカイルを守っていたので、彼に守って貰いたくて、少し意地悪をするつもりで彼が犯人だと言ったのだそうです。それを先生たちが信じてしまい収集がつかなくなってしまいました。そのことを後悔していて、もう一度話をしたいけれど、絶交されているから話せないこと。自分でこの状況を招いてしまったのですが、自分も苦しいのだということその話を聞いた彼女は考えます。どうしたら、彼らが仲直りすることができるのか。その鍵を握っているのがルーカスであることは間違いありません。