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ある晴れた日の昼下がり。一人の少年が夢の森書房を訪れました。彼の名前はリアム・カーター。彼は珍しい燃える炎のような赤い瞳をしていました。髪は銀色の艶のある髪に黒いタンクトップ、夏らしい青いジャケットをはおり、チェックのズボンを履いていました。
彼にはこの店の外観が魅力的に映ったのでしょう。重厚感のある扉に少し錆びた金の取手。まるで映画に出てくるような古い洋館のようです。そして錆びた金の取っ手に手をかけその館に入った瞬間、一冊の本が彼の前へと現れたのです。驚きに目を見張っていると、奥から店主らしき女の人が出てきてました。
「あら? 珍しい。本が貴方を選んだのね。何年ぶりかしら」
「本が僕を選んだ? そんなことあるのか」
奥から現れた女の人の微笑みに目を奪われつつ小さく呟きます。その小さな呟きに店主は答えます。
「ええ稀にあるわ。ここは不思議な事が起こる夢の森書房ですから。貴方何か悩んでいるようね。もしかしたら、この本があなたの悩みを解決してくれるかもしれない。この本をご存知?」
柔らかい視線を彼に向け、宙に浮いている本を指さします。その女の人の瞳は鮮やかな緑色でその瞳からは好奇心が滲み出ていました。彼は、慌てて首を横に振ります。すると、まるで一人芝居でも始めるかのような口調で話し始めます。
「では、お話しましょうか。一人の少年の物語を。この本のタイトルは……」
『誰だって最初はひとりぼっち』
彼は話を聞こうと椅子を探しますが、椅子は見当たりません。困った彼の様子に気づいた店主が指をパチンと鳴らすと、どこからともなく椅子が二脚彼らの前に現れました。
「ごめんなさいね。ずっと立っていたら疲れてしまいますもんね。どうぞ、おかけください」
店主は彼に座るよう促します。彼は驚いたものの少し呆けていました。今起こっている状況が夢なのではないかそんな考えが頭をよぎりましたが、その状況を受け入れ椅子に慎重に座りました。店主はそれを確認し宙に浮いている本を手に取り語り始めました。
「この本の主人公はカイルといいます。彼は友達がいません。なぜなら、人見知りで話しかけられるといつも体が強ばってしまいます。そんな彼に友達が多くできる話をこれからしましょう。では、始めますよ?」
店主は、一息ついてゆったりとした口調で話し始めました。
「彼の名前は、カイル・リーパー。彼は極度の人見知りです。彼は人が嫌いでした。彼が人嫌いになったきっかけは、友達だと思っていた人物に裏切られたことが一番の要因でしょう。そのきっかけについて、まずお話しましょう」
それは彼が小学2年生になった時に、起こりました。彼はいつものように朝早く起きて学校で飼っているうさぎに餌をあげに行きました。ところが、その日はいつもと様子が違っていました。彼が餌をあげに行くとうさぎは苦しんでいたのです。その事に気づき急いで先生を呼びに行ったためそのうさぎは何とか一命を取り留めました。しかし、うさぎが苦しんでいた原因が彼にあると大人たちは言うのです。なんともおかしな話ですね。彼がいなければ、うさぎは命を落としていたかもしれないのに……。
そこで、もう一人犯人として上がったのが彼の親友でした。彼の親友の名前は、ルーカス・アークライト。彼は誰からも好かれていて彼の言うことは皆正しいと信じていました。しかし、そんな彼もミスをおかします。そのミスとは彼がウサギにあげた餌が腐っていたことです。そのため、うさぎが苦しむ原因になったのですが、彼はそのことを頑なに認めようとはしませんでした。運の悪いことに、その場に居合わせたカイルが犯人なのではないかと先生達は疑ったのです。うさぎが苦しんでいるのを見て救ったのはカイルなのに……最悪なことにルーカスはカイルが腐った餌をあげているのを見たと先生に証言したのです。彼は嘘をつきました。自分を守るその為だけに友達を売ったのです。先生達は、ルーカスを褒め称えます。その代わりといってはおかしいのですが、本来救世主であるはずのカイルがうさぎを苦しめた犯人とされ、反省文を書かされてしまいました。誰も彼が無実だなんて……思いませんでした。そう、彼の両親以外は