92話目 私の人気が高すぎる!
「よし!ということで、今日もレベル上げ張り切っていきますよ!」
私と音符猫、アルミの3人は、本日も昨日と同じく、3層のはずれにある小さなダンジョンへと来ていた。
今日の目的もレベル上げとスキルアップだ。
「あれ?元気ないね。」
私は張り切って声を上げたのだが、2人はあまり元気が無い様子だ。
「昨日の疲れが……。」
音符猫が重々しくそういうと、アルミは首を大きく振った。
どうやら2人とも、昨日の疲れを完全に抜き切ることができなかったようだ。
「いや、なんでユウヒさんはそんなに元気なんですか!?」
そう、私は超元気である。
0時ごろに解散して、翌日9時に集合しているので、解散から集合までの時間はたった9時間。
その間に、お風呂に入ったり、ご飯を食べたり、睡眠を取ったりとしていたら、あっという間に9時間など過ぎてしまうわけだ。
「いや、私は朝の癒しタイムを済ませたので!」
「癒しタイム?」
「癒しタイムだ!お風呂にゆっくり楽しく浸かるんだよ。メアリーと。」
「お風呂……、って!メアリーさんとですか!?」
「え?そうだけど。」
いつも通りの日常を伝えただけなのだが、どうやら2人からするとそれは非日常なようで、とても驚かれてしまった。
「いや、ユウヒとメアリーは一緒に住んでいるんだったな。」
「まあ!そんなことはいいんです!さっさとダンジョンいくよ!」
話を無理やり切り上げ、私たちはダンジョンへと足を踏み入れた。
まああれからずっとレベル上げをしていたわけだけど、これと言って面白いものはない。
昨日と同じく、ひたすらにジャイアントダートスパイダーを討伐するだけで、正直言って昨日よりも疲れたかもしれない。
ひたすら作業ゲーなんだよね。
「ああ!ユウヒ、一回休憩しよう!」
周回を始めてから3時間ほどが経過したとき、あまりの過酷さに音符猫が音を上げた。
その発言に続いて、アルミも私に対して抗議を行っていた。
さすがにハードすぎたかもしれないね。
ゲームはなぜ楽しいものなのかというと、それはゲームがゲームという1つの娯楽であり、仕事ではないからだ。
では、仕事としてゲームをやり始めるとどうだろう。
好き勝手に楽しいことをやっているだけではいけなくなるのだ。
時にやりたくないこともやらなければいけなくなる。
そう、今のように。
「うーむ、確かに疲れたね。」
私はそういうと、手をパンッ!と叩いた。
「よし!一回休憩しよっか!」
その言葉を聞いて、2人は顔を見合わせて大喜び、ハイタッチをして「言ってみるもんだね!」とか言いながら盛り上がっている。
そうして私たちがやって来たのは、1層にある始まりの村、ヒメナ村の中心部にある大きな広場。
「近くにおいしいスイーツの店があるんだよ。」
「「……。」」
広場に着くなり、私は2人に向かってそう告げたのだが、2人から反応が返ってくることはない。
なぜなら、私の声は周りの人のざわめきによってかき消されているからだ。
なぜ周りの人がざわめいているかって?
そりゃ、FoxAgainに所属したという情報が出てから、一切音沙汰なしの私の存在が確認できたからでしょう。
配信するとか言っておきながら配信もせず、SNSにも浮上せずに何をやっているのかわからない、このゲームのトッププレイヤー“ユウヒ”である。
「きゃー!ユウヒさんですよね!」
「私!ユウヒさんを見て始めたんです!」
……鬱陶しいわ!
いや、人気が出ることはうれしいんだけどさ、これじゃあゲームできないじゃん!
私は急いでチームチャットにこう打ち込んだ。
『見ての通り、私は大変なことになってしまうようなので、一度先ほどの場所まで引き返します!』
そのメッセージを送るとすぐに、2人は目の前から消えていった。
おそらく3層へワープをしたのだろう。
私も後を追いかけるかのように3層へとワープをする。
「ひえぇ、ひどい目に合った。」
「いや、ユウヒってあんなに人気なんだね。」
「そりゃそうですよ。だってこのゲームの看板プレイヤーなんですから。」
私たちはダンジョンの入り口近くにあった岩に腰を掛け、1息ついていた。
正直、ダンジョン攻略より、ああやって囲まれる方が精神的に疲れるんだよなぁ。
「で、これからどうします?」
休憩できるような雰囲気でもないし、何かレベル上げをするような気分でもなくなってしまった。
「そうだなぁ……、一回ダンジョン攻略はやめて、クエストでもやろうか。」
私たちは気分転換にクエストを行うことにした。




