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88話目 よそ見はよくないね

「私、詰めるね!」


この隙を逃すまい!と、音符猫が一気にジャイアンダートスパイダーの方へと詰めていく。


音符猫は土魔法をうまく利用し、地面をばねのようにして飛んで相手の腹へ向かって炎弾を3回打ち付ける。


その攻撃は相手の腹にすべて命中し、ジャイアントダートスパイダーは四肢をパタパタと動かして苦しんでいる。


しかし、すぐに腹の先についている、糸いぼから天井へと向かって大きく太い糸を出した。

 

そして、天井に着いたと同時に一気に体を起き上がらせ、天井へと登っていった。


「やばッ!」


攻撃をするために相手の腹の上に乗っていた音符猫は、そのまま宙へと放り出されてしまった。


「カバーします!」


そのまま地面に打ち付けられてしまうかと思われたが、そこはアルミが低級の重力魔法をかけ、音符猫はゆっくりと地面に着地した。


「ナイスカバー!ありがとう!」


2人は再び天井へ戻ったジャイアントダートスパイダーを見る。


ジャイアントダートスパイダーは天井でじっととどまっている。


その光景を見て、音符猫は何かを思い出したようであった。


「これ、ちょっと魔法試してもいい?」


「え、大丈夫ですけど、何か策でもあるのですか?」


「まあ一応ね。とりあえずやってみる。」


そういうと、音符猫は続けて水属性の魔法の詠唱を始めた。


「水を司る聖霊よ、我が元に集い、かの者を包みたまえ!ポイズンプリズン!」


すると、天井に引っ付いていたジャイアントダートスパイダーの周りに、紫色の霧ができ始め、その霧は牢となり、あっという相手を包み込んだ。


「へぇ、毒って水魔法なんだね。」


口を出さないつもりだったのだが、意外過ぎて口から漏れ出てしまった。


「そう。最近練習していたんだ。」


天井に目をやると、牢の中に閉じ込められたジャイアントダートスパイダーは苦しそうな表情をしていた。


「ちなみに、どんな魔法?」


「これは相手の周りに毒の牢屋を作って、じわじわとHPを削っていく魔法。牢屋から出れても毒の状態異常が付く。」


「おお、これはいいね。」


そう感心していると、アルミがどうやら合わせると強力になる魔法があるらしく、中級だったために詠唱無しで魔法をかけた。


「これは?」


「相手にかかる負の状態異常の効果を倍増させる魔法です。」


「あちゃー、かわいそうに。」


それを受けたジャイアントダートスパイダーは、苦しそうに藻掻いてはいたが、しばらくは天井で耐えていた。


途中、こちらへ向かって土の魔法は放ってきてはいたものの、苦しそうに天井にしがみついていたが、とうとう耐え切れなくなったようで、地面へと降りてきた。


そして、最後の力を振り絞るかのように私たちへ向けて突進してきた。


「危なッ!」


音符猫とアルミは、戦いそっちのけで魔法談議に花を咲かしており、突進にどうやら気が付いていないようであった。


私は跳躍と加速のスキルを組み合わせ、一気に相手への方へ突進する。


そして、腰元につけている双剣を勢いよく引き抜き、体をひねらせると同時に空中ジャンプを使い、相手の背中へと飛び乗る。


首の付け根あたりに双剣を同時にさし、投げナイフのスキルを発動した。


剣は勢いよくつき刺さり、ジャイアントダートスパイダーは大きなうめき声をあげた。


そのうめき声で相手が突進してきていることに気が付いたらしく、急いで戦闘態勢に入った2人だったが、どうやらすでに遅かったようだ。


私は投げナイフの効果で戻って来た双剣を握りしめ、再び跳躍と加速で飛び上がる。


しかし、今回は弱めにだ。


背面跳びの要領で体を曲げ、相手の顔の前を通過する瞬間、眉間に向かって左右と交互に投げナイフを発動した。


2本ともきれいに眉間の真ん中に突き刺さり、ジャイアントダートスパイダーは地面に伏せるように倒れていった。


ちらりと後ろに目をやると、その光景を目をキラキラさせて見ている2人の姿があった。


私はぴょんと後ろへ飛び、その2人の前へ行く。


「ちょっと、戦い中によそ見はよくないよ。」


「すみません。」


「申し訳ございません。」


「まあ、次からは気を付けてね。」


私がそう声をかけると、2人も元気に返事を返してきた。


「それにしても、やっぱりユウヒさん強いですね!」


「いや、ほんとほんと。もう次元が違う!」


「え、ありがとう。」


その後、2人は私のすごいところを誉めていたのだが、なんだか恥ずかしくてほとんど耳に入ってこなかった。

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