80話目 オフィスへ
あの発表があってからあっという間に一週間が経過した。
まだチームとしての活動はしていないけど、SNSのフォロワーとかも増えたりしてなんやかんやで変化があった日々だ。
そして、今日は初めてチームのオフィスを訪れる日である。
「ねぇ!早く準備してよ!!」
今、目の前で何も準備もせずにだらだらしている女はメアリーこと一ノ瀬夏海、私の相棒だ。
一緒に暮らしてみてわかったのだが、この女はゲームの中でとは全く違い、現実ではとにかくだらだらとしている奴なのだ。
身だしなみは整えないし、片付けはしないし寝相は悪いしで結構ひどい奴だ。
とはいっても私の命の恩人だから嫌いじゃないんだよ。
感謝してるし、すごくいいやつだと思う。
でもなぁ、残念なところが多すぎる。
もともと今日オフィスに行こうって言いだしたのも夏海だし、私はオフィスの場所知らないから彼女がやる気を出さないと家を出れないんだよね。
「ねぇ、早く準備してよ!!」
「ああ、わかったわかった。あとちょっとだから。」
「もう!!あとちょっとってどのくらいなの!!もう30分待ったんだけど!!」
「ひぃっ!すみません!すぐやりますから!!」
私が声を張り上げて叱ると驚いたような表情を見せて準備をし出した。
まったく。
「で、ここがオフィスなのね?」
「そうだよ。」
「……52階にあるのね。」
どうやらうちのチームのオフィスは私たちの家の10階下にあったらしい。
もう、もっと早く行けるじゃん。
「ていうか、今日は何をするためにオフィスに来たの?」
「ん?特に決めてないよ。顔合わせしたほうがいいかなって。」
「ふーん。」
私たちはすたすたとオフィスの中へと入っていった。
「あ!メアリーさんお久しぶりです!!」
中に入り、オフィスらしいエリアに入ると、そこにいたお姉さんが私たちに声をかけてきた。
「おお!お久しぶりです!!」
「えっと、そちらの方は……。」
私たちではなく夏海に声をかけたらしい。
「ああ、こっちはユウヒだよ。」
「ああ!そうだったんですね!ようこそFoxAgainへ!私は前までメアリーさんが所属していたCSJO部門のマネージャーをしていた池ノ谷薫と申します。」
「ユウヒこと夏凪夕日です。よろしくお願いいたします。」
「今はCSJO部門はVALERANT部門に変わってしまって、今もそちらのほうが担当ですのであまりかかわる機会は少ないかと思いますが、オフィスやイベントなどで見かけましたら是非声をかけてください。」
「はい!これからよろしくお願いします。」
「夏海はCSJOのプロだったんだね。」
CSJOとは5対5で戦うFPSのゲームだ。
結構昔から存在しているゲームでたくさんの人に親しまれている。
「そうだよ。VALERANTがリリースされて、そっちへ活動を移すってなったからやめたんだ。私はあのゲームが好きだったから。」
「そうだったんだね。じゃあ今度配信でやろうよ。」
「いや、私たちまだ配信1回もしてないんだから気が早いよ。」
「確かに。」




