70話目 病室
「夕日さん、聞こえますか?」
目が覚めて、私の耳に入って来たのはそういう言葉だった。
「はい。聞こえますけど……」
何で生きてるんだ?
私、今度こそは死んでしまったと思ったし。
ていうか余命来ているんですが。
「困惑、していますよね。私もです。結論から言うと、あなたの病は完治しました。」
「は?」
え?私の病気まだ治療法が分からないから完治は無理だって言われてた病気なんだけど。
「えっと、どういうことですか?」
「実は、夕日さんがかかっていた病気の治療法が見つかったのです。それが3週間前です。夕日さんはその治療が施された後、2週間ほど寝ていましたから、あなたの体には1週間前に見つかったばかりの治療が施されたということになります。」
「え?それって相当なのでは。」
「はい。実際、これは前代未聞のことであり、そのために費用も相当額掛かります。」
「え、どのくらいでしょうか。」
「あまり言えませんが、4桁億円を優に超えています。」
「なッ!?私!そんなの払えませんよ!!!」
「大丈夫です。すべてすでにお支払いが済んでいますから。」
「はい!?」
4桁億円がすでに支払われただと!?
私の身内にこんなにお金を持っている人がいるなんて聞いたことないぞ!
「えっと、一ノ瀬夏海様はお友達ですよね。」
「一ノ瀬夏海?」
一ノ瀬夏海?私の友達にそんな人いたか?
……。
「ああああ!!!!そうだ!!!!!!」
「!?!?ど!どうされましたか!!」
「すみません、心当たりがあります。」
一ノ瀬夏海って、メアリーの本名じゃん……。
「えっと、お金を出したのはその人ですか?」
「はい。夕日さんが意識を失った翌日の夜遅くに国の要人の治療を担当するような医師を引き連れ、そして治療の方法を知る研究員等の方々を引き連れてやってきました。」
「で、今どこに?」
「はい。こちらに訪れてきてからずっと、この病院の一室で過ごしています。「目を覚ましたら教えてくれ。」と仰っております。」
「わかった。2人きりにしてもらえませんか?」
「はい。ではすぐに呼んで参ります。」
そういってお医者さんは部屋から出て行った。
メアリー、あいつは何をしているんだ……。
私まずどこの病院なのかも本名も教えていないぞ。
メアリーの経済力があればそんなもの簡単に調べられるということか。
廊下の方からトタトタとこちらへ向かって走ってくる音が聞こえる。
「来た。」
すると、ノックもせずに部屋の引き戸が開かれ、黒髪で長髪の美しい大人の女性が私の方へ駆けてきた。
「ユウヒ!」
彼女はそういうと私のことを抱きしめた。
「メアリー?」
「馬鹿ッ!余命宣告を受けていたなんて。なんでもっと早く言わないの!?」
「だって、心配かけちゃうし。」
「心配したよ!私がお店で作業していたらSakuraさんが急にお店に入ってきて、決闘中にユウヒが倒れて、強制ログアウトを受けた。何かあったかもしれない。って言ってきたんだ。ユウヒが体弱いってことは知ってたから、何かあったんじゃないかって。」
「……ごめん。」
気が付いたら私の目からは涙があふれていた。
データが一度消滅しました……。
精神に来ますこれ。