181話目 入れない
『CGカップ参加者組み合わせの発表』
また時は流れ、ついに組み合わせ発表の日がやって来た。
組み合わせは本日の午後8時に公式SNSにアップされて知る。
これは視聴者も参加者も同じことで、もちろん参加者である私と夏海もその時をドキドキしながら待っているわけだ。
「誰になるんだろうね」
「そだねー、まあ、私は結構いろんな人と話すからあれだけど、夕日にとっちゃ一大事件だよね」
本当にその通りである。
出来れば話したことがある人が1人くらいいればいいのだが……。
「あ、発表されたよ」
時計の針は8時を示し、ついにその時がやって来た。
「Lesser、桜宮ねる、神谷蓮……、だれ?」
「ああ、確かに夕日は知らなそうなメンツだね。まあ話してみればわかるよ」
ということで、この発表から1時間後に顔合わせが始まる。
全員が午後9時までに配信を開始して、配信のついている状態で顔合わせをするらしい。
なかなか面白いシステムだが、マジで誰一人として知らないのですごく怖い。
「あ、付いてますか?」
:付いてる
:お疲れ様
:付いてるよー
10分前、早速配信を付ける。
すでにCGカップに参加する予定の人たちの大半が配信を開始しているようで、私もその中に仲間入りだ。
:意外な組み合わせ
:確かに
:プロ、元プロ、V2人だもんな
「それがね、私申し訳ないんだけど3人ともご存じないんだよね。どんな人?」
:知らないのか
:面白そう
:空気読めよー、この反応を見るのを楽しみに来ているのだから
夏海に止められ、一切調べることをさせてもらえなかった挙句、どうやらリスナーのみんなも私に情報はくれないらしい。
確かに何も知らないならそっちの方が反応としては面白いのかなとは思ったが、どうやらLesserという人は元プロゲーマーらしい。
そしてVということは、残りの2人はVTuberということなのだろう。
聞いたことはある。
自身のアバターを画面上に表示してゲームとかしたりする人達。
私はそういうのはあまり見ないので詳しくはわからないが、最近右肩で人気を上げているらしい。
「いやぁ、緊張するよ。だってほんとに事前情報ないから……」
:マジで知らされてなかったんだ
「そうだよ。私もさっき知ったばかりなの」
あと少しで顔合わせが始まる。
まるで耳の横にでもついているんじゃないかってくらい大きく心臓の音が聞こえる。
怖い人だったらどうしようとか、話に入れないんじゃないかとか……。
そういうことをだらだらと考えていると、一気にコメント欄の流れは加速し出した。
:9時になった!
:きたぞおおお
:きた
:きたぁ
:9時だ!
時刻は9時を迎え、CGカップ用に立てられたチャットアプリのサーバーのボイスチャンネルには続々と人が入っていっている。
そして、私のグループ、チームD(仮名)にもすでに3人が参加し、私の到着を今か今かと待っているようである。
「こ、これ、入ってもいいの?」
:いいんだよ
:入って
:入ろう
:GO!
「ちょ、ちょっとまって、ほんとにまずい」
冷や汗だらだら出てくる。
みんなが続々と参加していくタイミングで入れればよかったのだけれど、1度間隔をあけてしまうと、入るタイミングを逃すわけで……。
:3人配信で待ってるよ
「……人様を待たせるのはまずいか。よしッ」
両手を握りしめ、ぎゅっと気合を入れていざクリック。
ピロンッ!という電子音とともに、私の名前がチームD(仮名)に表示された。
「「「来た!」」」
「ひっ!」
表示されたと思ったのだが、またすぐにその表示は消え去り、チームD(仮名)にはまた3人の時間が訪れる。
:抜けたwww
:抜けんなw
:抜けたぞww
:抜けたwwww
:えええw
「ちょっと待ってくれ、ほんとにまずいって」
:〈桜宮ねる〉入ってきてー
「ひえっ、ちょっと、すみませんすみません。ほんとにまずい冷や汗ヤバいって」
私こんなにコミュニケーション苦手だっただろうか。
それなりに取って来たと思うんだけど、思うんだけど……。
うん、取ってないね。
駄目だこりゃ!




