178話目 アルラウネ
スキル獲得の条件として考えられるのは、時間内のモンスター討伐数や、特定のモンスターの討伐数とかがメインになってくるだろう。
他にも、モンスターのレアドロップだとか、そういうのもあるだろうが。
「となると、ひたすら狩るしかないね」
今使えるスキルを全部使ってひたすらに敵を狩りまくる。
実はこの階層でモンスターっぽいモンスターと戦うのは初めてだったりする。
いままではあのへんな虫型ばっかしだったから……。
先ほどからモンスターハウスで湧いているのは、ゾンビや骸骨などの、下層ですでに見たことのあるモンスターが多い。
ただ、その中でも今まで見たことのないようなモンスターが湧いているのが目に入る。
「花?」
そう、花だ。
ただ、通常の花の様に、地面から生えてそこにとどまっているというわけではない。
花から足や手が生えて動き回っているのだ。
それに加えて、ツルのようなものを自由自在に動かしている。
先日の事件を思い出して多少の悪寒が体を駆け巡るが、今回はすっぽり食われる形式ではないようなので一安心。
「ひとまず倒してみるか」
名前はアルラウネというようで、おそらくツルのような、触手のようなものを使って攻撃してくるのだろう。
数あるモンスターの中からアルラウネに狙いを定めて突撃する。
すると、どうやらあちら側もこちらの存在に気が付いたようで、じろりとこちらを眺めた後に、ツルを数本飛ばしてきた。
そのツルを流れ作業で切り裂き、伝うようにして間合いを詰めていく。
モンスターのうめき声に加え、ツタを伝う音がフィールド内に響き渡るが、すぐにその音は止み、次に聞こえてくるのはアルラウネのうめき声。
右手に握った短剣は、アルラウネのおそらく急所であろう、胸のあたりについていた魔石に突き刺さっている。
これで1匹、と思ったが、どうやらそれは早とちりだったらしい。
突如として地面から現れてきたツルが私の体にまとわりついたかと思うと、自身のHPが微量ながらも減っていっているのが分かる。
どうやら最後まで仕留めきることができなかったようだ。
その証拠に、アルラウネは今も動いているし、核らしき魔石は完全に割れて消滅しているわけではない。
引きはがさないといけなかったのだろう。
減っていくHP、それに比例して相手のHPは徐々に上昇していっているのが分かるため、これはHPを吸い取られているのだろう。
(厄介だな)
おそらくこのツルは触れた相手からHPを吸収してしまうものだ。
非常に厄介。
先ほどまで1本だけであったツルは、いつの間にか何本も何重に絡まり、私を宙へと持ち上げている。
それを見物するかのように集まってくるモンスターの中には、別のアルラウネの姿がいくつか確認できる。
速くここを抜け出さなければやられてしまうだろう。
ただ、きつく縛り上げられているために、ろくに身動きを取ることができず、ひたすらにHPのみが吸収されていく。
(ちょっと卑怯だからやりたくないんだけど……)
このままではじわじわと削れてしまうだけ。
戦闘中の為に町へとワープすることもできない。
そうなったらあの卑怯な手を使うしか抜ける道が存在しない。
「はぁ……」
深くため息をつくと、辛うじて動かせる人差し指を使ってインベントリを開く。
そして、装備スロットについている2本の短剣を、高速で付けたり外したり繰り返す。
先ほどまで短剣を握っていたところから短剣が消え、そこに敵のツルがやってくる。
そして、ツルがやって来たところにさらに私の短剣がやってきて、アルラウネのツルは2つに分断されていく。
10秒ほど繰り返したところでどんどんツルの力が緩んでいき、地面への自由落下運動が始まる。
ただ、その地面はまるでじゅうたんにでもなったかのようなモンスターの集団が今か今かと私の降臨を待ち構えている。
「ちッ」
小さく舌打ちすると、体を大きくひねらせ、空を蹴りながら自身の体に大きく回転をかける。
そして、竜巻のように付近のモンスターを切り裂きながら着地する。
続けざまに、足に力を入れ、1匹、また1匹とどんどんモンスターを倒していく。
ある程度片付いた頃、小さく跳ね上がると、足でゾンビ型のモンスターを蹴り高く跳ね上がり、そのまま先ほど私のHPを吸い取りやがったアルラウネへと突撃する。
私のHPを吸い取ってすでに半分ほどまで回復が進んでいる。
なんとも憎たらしい。
そんな憎たらしいモンスターに向かって、飛び膝蹴りと秘儀、八つ裂きアタックを食らわせる。
なお、八つ裂きアタックは今この場で考えた適当な技名で、やっていることはただの8連撃である。
カット野菜の如く切り裂かれたアルラウネは、キラキラとエフェクトを出しながら消滅した。
それを待っていたかのように後方から伸びてくるツルは、また別のアルラウネからの物である。
「モンスターハウス、思っていたより楽しいぞ!!」
通常のフィールドよりも倒し甲斐のあるモンスターがうじゃうじゃ湧いてくるこの場所は、絶好のレベル上げスポットであった。




