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171話目 4層配信⑤

「いてて、なに?」


平坦な道の途中に現れた突起に引っかかり転んだように見えたが、そのあたりを見てもいたって普通の通路で何もない。


(何もないところで転んだ?んなことないだろう)


なにかに引っかかったのは確実だ。


となると……


:トラップだな


そのコメントが目に映った瞬間、倒れこんでいた地面が大きく揺れ始め、ガシャンという音とともに開いた。










開いた先にあったのは奈落とでもいうべき暗い空間だが、その終点近くは何やら光を発している。


あまりに突然のことで、体勢を変えることもできないまま、重力に任せて落下していく。


「うわぁぁぁあああッ」


そのまま、地面に空いた穴を突き進み、10秒ほど進んだところで先ほど遠くから見えていた光を発する広い空間に出た。


少しでも落下の衝撃を和らげるために、空中ジャンプを角度をできるだけ直角に近く、そして最後は地面と平行になるように5回発動し、なんとか被ダメージを少なくして着地する。


「いてて……」


熱い。


先ほどまでは何となくひんやりとした空気が場を包んでいたが、温感設定を切っていても伝わってくる熱気。


辺りを見渡すと、私が今倒れているところは、マグマの海に浮かぶ小さな島で、ぽこぽこと音を立てながら真っ赤な流体がうごめいている。


時折爆発したように噴出してくる高温の気体は、傍を掠めては突風のようにあたりをかけめぐる。


「やらかした。これはやらかしです」


明らかに来てはいけないようなところに来てしまったというところが直感でわかる。


火山の地下とでもいうのだろうか、3層の地底湖エリアのマグマバージョンとでも言ったほうが良いのだろうか。


こんなところに来てしまったらもうトラップなんか気にしている余裕もないし、トラップは存在すらもしないだろう。


ワープ機能を使えばすぐにこの場から離脱することは可能だ。


ただ、体の奥の方に深く根付く私の冒険者魂というものは、辺りの熱気に晒されてか、ものすごい勢いで燃え上がってしまっている。


:こんなところ初めて見た

:えぇ、ジャングルの下にこんなのがあったのか

:こりゃ宝がありそうだなぁ!!


「うん。あるね絶対。こりゃお宝ザクザクよ」


落下時間は大体30秒ほどと長い時間で、それは視界の端に表示されている時計を見ながら図ったことだから間違いはない。


空気抵抗を無視して計算すると、大体5キロ行かないくらいの距離落下したことになるだろう。


5キロも落下してよく生きていると思うが、今はそんなことを気にしていられない。


まずダンジョンの中に5キロも落とすトラップ作るなよと言いたいところだが、天井を見ても穴らしきものは私が落ちてきたところしか空いていないため、あれが唯一のトラップだったのだろう。


そのトラップに運悪く、いや、この場合は運よく引っかかったということだ。


絶対に5キロなんて深くにもぐる機会はほかにないはずで、5キロも深い場所ならほかにプレイヤーが来るということはまず考えられない。


飛行系のスキルを持っていなければ、落下ダメージで大体の人は死ぬ。


私はうまくスキルを使えたから何とか助かっているが、それはレアケース。


ダンジョン自体情報がなかったのだから、ここに来たのは私が初めてだという認識で間違いはないだろう。


「ていうか、この場所にいるだけでどんどんHP減っていくんだけど……」


それもそのはずだ。


地下5キロ近いところに来ているし、辺りをマグマがうごめいているのだから、その気温は通常では考えられないほどに上がっているはずだ。


そんな中で活動できているのがおかしいわけで、HPが減るのは必然と言ったところだろう。


水の出る魔道具をフルパワーで活用し、体に水を吹きかけながら少しでもHPが長く維持できるようにする。


私はレベル的にもHPがとてつもなく多いし、ダメージを食らうといってもそこまで痛くはない。


1時間くらいは余裕で作業できるだろう。


ただ、逆に言えば1時間でダメになる。


できるだけ急いで行動しないとまずい。


「お?これは何?」


すぐ近くに、透明な水晶のような鉱物が生成されているのに気が付いた。


私はここら辺の知識が浅いのでわからないが、メアリーが見たら喜ぶようなものなのだろうか?


:〈メアリーチャンネル〉絶対に持って帰ってきなさい。

:激レア!!!

:やばいやばい!!

:それマナクオーツっていうやつでとんでもないレアアイテム。上でも見れるけどそんなに大きいのは見たことがない!!

:売ってください

:おれ生産職じゃないからわからんのだが、そんなにすごいんか?

:ほんとにすごい

:まじですごいから

:やばい

:やばい


コメントの反応を見るに、そしてメアリーがコメントで食いついているのを見るに、おそらくとてつもないレアなアイテムなのだろう。


「えっと、いっぱいあるんだけど……」


そんなものがあたりにたくさん生えている。


それはもう雑草のように……。


:市場崩壊不可避

:根こそぎ持ってこい

:〈メアリーチャンネル〉ここにあるの全部持ってきたら今までゲーム内で稼いだお金をはるかに凌駕する量のお金が手に入るわ。私が全部買い取る

:メアリーずるいぞ!

:俺にも分けろや

:あの、小出しにしてくれないと値段暴落するよ……

:とりあえずもってこい


「持って来いって言われましても、どうやってとればいいんだ?」


:〈メアリーチャンネル〉造形でくりぬいて持ってきなさい


「わかった」


とりあえずマナクオーツ手を当てて、造形を使う。


すると、パキッという嫌な音とともにマナクオーツは粉々に砕け散った。


「あ、やべ」


:ああああああああ

:ああああ

:あああああ

:あああああああ

:ああああ

:あああ

:ああああああ

:あああああああああ

:ああああああああ

:あああ

:ああああ

:〈メアリーチャンネル〉ちょっと何してる!!周りをくりぬくのよ周りを!!

:10,000,000G、消滅

:とりあえず粉でいいからそれも持って帰ってきて!


「ま、まあ、まだたくさんあるから……」


そうまわりを見渡すと、まだ至る所にはえているわけで、1つや2つ壊したところで何の支障もない。


:俺は夢でも見ているのか……

:ちょっとまって、端の方に光ってるあの黒い奴、黒岩鉄鋼じゃないか!?!?

:〈メアリーチャンネル〉ほんとだ!!やばいやばいやばい!絶対に回収しろまじでまじで

:やばい!

:初めて見たんだけど!!

:えぐ!

:ほんとにやばい

:はぁ????

:おかしい

:俺も行きたい

:天国じゃん!

:見た目は地獄なのに……

:ほんとにやばすぎる


先ほどからやけに黒いのがあるなと思っていたら、どうやらそれはとてつもなくレアな黒岩鉄鋼と呼ばれる物らしい。


:このゲームの中で今確認されてる中で一番固い素材だよ。マジ貴重、数がない

:絶対に持って帰ってこないとダメ


ひとまずそこに向かうまでにあるマナクオーツを回収して、できるだけ急いで向かう。


が……


「うわぁッ!!」


突如横からやって来た突風により、マグマの海へと吹き飛んでしまった。


黒岩鉄鋼まではあと1メートルもない。


:ああああああ

:ぎゃあああああああ

:うわあああああ

:〈メアリーチャンネル〉あああああああああああああああああ

:ああああああああ

:いやぁあああ

:もおお

:まじで、はぁ???

:終わった

:うわぁぁぁあ

:えぇえええええええ


誰もが死んだと思った。


だが、とっさにスキルを発動させて空中へと退避したユウヒは、何とか生きていた。


「あぶねぇ」


:優秀すぎる

:ユウヒ最強

:よく生きてるわ

:ひやひやしたよ

:よくやった

:〈メアリーチャンネル〉フレンチ食べに行きましょう。高いところ予約しておくわ

:マジでないす

:ほんとに優秀すぎる

:まじでやば


そして、ゆっくりと黒岩鉄鋼に近づき、周りをえぐり取るようにして刈り取った後、しっかりとアイテムボックスへと収納した。


「よし、これでおけね~」


ユウヒには、その黒岩鉄鋼がどれほどまでに貴重なものなのか理解できていなかったが、のちにその真価を知ることになる。


「まだほかにいいのあるかもしれない。根こそぎ持ってくぞ!」

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