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169話目 4層配信③

「おお、こりゃまた随分とダンジョンっぽいなぁ……」


らせん状になっている階段を下ると、少し広めの部屋に着いた。


天井からは、土の中を経てしみ出してきた水が、ぽちゃんぽちゃんと音を立てながら地面へと打ち付けられている。


光の差し込むところのない地下の為、暗闇に慣れてきたとはいえ、目はほとんど使い物にならない。


この状態ではろくに探索もすることができないため、アイテムボックスからランタンを取り出して照らす。


3層探索用に買った少しいいランタンで、これ1つでも相当な範囲を照らすことができる。


:これまた随分とダンジョンしてるな

:そのランタンめっちゃいいやつじゃん!

:暗くて不気味だ


左手でランタンを持ち、右手で短剣を逆手に握る。


罠などによる突然の攻撃から身を守るため、姿勢を低くして少しでもヒットボックスを狭くする。


もしかしたら音に反応するモンスターや仕掛けもあるかもしれないので、できるだけすり足で、音をたてないように進む。


(ひとまずゆっくりだけど、進んでみるね)


:気を付けろ

:俺らはあまり気にしなくていいから。見てるだけで十分

:頑張れ

:頑張れ


このゲームの配信機能は、頭の中で意識しながら呟くだけでも配信に声が乗る。


ゲームの最強プレイヤーであるユウヒが、まだ発見されていないダンジョンに1人で挑むというのだから、視聴数はすでに5万を突破している。


広い部屋の中には何もなく、奥の方に別の部屋へと続く通路があいている。


足元に気を付けながらゆっくりゆっくりと進んでいくと、前方、通路の方からごうッといった体を揺らすような重低音が響いてきているのに気が付いた。


(近づいてきてる。多分モンスターだ)


その音は徐々に近づいてきており、地面は小さく振動している。


ランタンを腰元のストラップに固定し、左手にも短剣を握る。


そして、徐々に近づいてきていた音が止んだと思うと、通路から1体のモンスターが現れた。


名前は『ロックゴーレム』で、その名前の通り、岩が合わさって作られたゴーレムだ。


(いいね、面白い!)


岩が擦れ合う不快な音を立てながら動くゴーレムの弱点は、おそらく関節。


つなぎ目の部分というのは刃がサクッと入りやすいというのは、先日のキングクラブ戦の予習でよく学んでいる。


ただ、私の武器は短剣で、比較的体の大きなゴーレム型のモンスターとは相性が悪い。


ならできるだけ短剣を使わないように戦いたい。


(あ、そうだ!!)


ここで一つ妙案を思いついた。


相手の体はロック、つまり岩でできているわけで、その岩というのは通常自然生成される環境素材の一つだ。


私はこの環境素材を自由に操ることができるスキルを持っている。


『造形』だ。


もしかしたらこの造形を使って相手の体を変形させることが可能かもしれない。


(とりあえずやってみよう)


より強くスキルを発動させるため、相手の体には触れておきたい。


そのため、跳躍と超加速を組み合わせながら一気に相手の体に飛び込む。


このゲームを始めたころと比べ、超加速の扱いにも慣れてきた。


思考加速と合わせることで、いつもどおり走っている時よりも遅く感じる。


空中ジャンプを小さく組み合わせ、少しずつ軌道修正しながら相手の肩に触る。


おそらくゴーレムとしての形を維持するために、どこかしらにコアがあるはずだ。


あの胸のあたりの多少黒くなっているあたりにあるのだろう。


造形を発動させ、頭の中で想像したコアの位置に向かってゴーレムの体を膨張させる。


スキルポイントが減少していることから、おそらく発動できている。


そして、パキッ、という音とともに、ゴーレムの胴から四肢、頭が分離して、消滅した。


その場に残ったのは、奇麗に半分に裂けた赤色の魔石だけであった。


「ふぅ、倒せた」


:すげえ

:ゴーレムって相当強い魔物じゃなかった?

:そのはず

:ユウヒほんとに強いんだな

:初めて見たけど、こんなに強いのか。連覇も頷ける


私は合わないように動いていたが、3層にもゴーレムは出没する。


ここは4層だから、先ほど戦ったよりも少し弱いレベルで出没するのだが、それでもたいていのプレイヤーは遭遇したらすぐに逃げる。


なぜなら、固すぎて、攻撃力が高すぎて、デカすぎて、様々な要因から討伐が困難だからだ。


そんなゴーレムを、いとも簡単に倒してしまった。


両手をこすり合わせるように、手を3回音を立てながら払うと、何事もなかったかのように先ほどゴーレムが出てきた通路へと歩き始めた。


配信を見ていた人の一部は、自身とのあまりの能力差に気分を落ち込ませたとか何とか……

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