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155話目

「私、明日退院なんだよ。」


「そうなの!?おめでとう!!」


しばらくたったある日、偶然同室になって仲良くなった夕日と麗奈がいつものように雑談をしていると、麗奈から退院が決まった旨の報告があった。


本格的なリハビリも経て自由に足を動かせるようになっていた麗奈は、身の回りの世話も時々してくれる。


どうやら動き回るのが好きなようで、「早くここから出て行きたい!」と口癖のように言っていた。


「でも、麗奈がいないと寂しくなるね。」


「そうかもね。でも、時々遊びには来るよ。あと1日、よろしくね!」


「こちらこそ!」


麗奈のおかげで何もすることのないこの入院生活を、飽きずに過ごすことができた。


暇さえあれば勝手に話している彼女といると時間が早く感じる。


「麗奈さ、今度一緒にゲームやろうよ。」


「ゲームって、サンライズファンタジーだよね?」


「そうだよ。」


「いいよー!あ、でもね、うちゲーム機姉が使ってるやつしかないから買わないといけないんだよね。」


「そっかぁ……。ならさ?うちの事務所に遊びに来ればいいんじゃない?」


「え?私部外者だけどいいの?」


「いいんじゃない?何とかなるよ。」


「そうかなぁ?」


不安そうにこちらを見る麗奈であったが、麗奈は部外者だとは簡単に言いきれない存在ではある。


所属プレイヤーの音符猫こと、青木かなたの妹であり、夕日の友達。


FoxAgainはフレンドリーで何かと制限が緩いチームだ。


「事務所と私の家が近いからさ、泊りでくればいいよ。」


「わかった。あれ?夕日っていまメアリー一緒に住んでるんだよね?」


「そうなるね。」


「あの人寂しくしてるんじゃない?毎日来てるし。」


「あはは、そうかもね……」


私が入院してから、別に来なくてもいいといっているのに毎日来る夏海、おそらく寂しいのだろう。


あんな広い家に1人とか、そりゃあ寂しいわな。


今頃寂しくワインでも飲みながらテレビ見てるんじゃないの?


夏海の為にも早く退院しないとね。


「まあ、気が向いたら遊びに来て。場所はあなたの姉ちゃんが知ってるよ。」


「そだね。でも、私お金貯めてるからゲーム機くらい全然買えるんだけどね。」


「えー!早く言いなよ!」








次の日の午前中、麗奈は退院していった。


広い部屋の中にたった一人、また寂しい孤独の生活が始まる。


「ああ!暇だ!!」


麗奈が退院してから1日が立った。


本当にやることがない。


ゲームに出会う前はどうやって過ごしていたんだろうと思い、再現して過ごしてみたが、時間の流れが遅く感じる。


ゲームに没頭しすぎてテレビも見てなかったし、本もあまり読まなくなっている。


動画もみないし、趣味は何?と聞かれて「あ、サンライズファンタジーです。」と答えるくらいなのだから、こんなベッドの上でできるような趣味などはない。


ていうかね、体調も回復してるわけだし、別にさっさと退院してもよくない?とも思う。


そんなことをずっと考えながらだらだらテレビを見ていると、夏海のあの切羽詰まった駆け足とはまた異なる足音が私の部屋に向かって聞こえてきた。

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