133話目 到着
「よしッ!」
昨日の山頂での戦いは私とメアリーの2人対的チームであったが、今回は4人対4人でしっかりと戦うことができた。
実質FoxAgainの初戦闘である。
昨日の戦いはあくまでSunsetの戦いに過ぎなかったわけだ。
「見たか!FoxAgainの実力!!」
音符猫は大きく右拳を天に突きつけながら先ほどまで私たちの戦いを観戦していた配信カメラに向かって笑顔を向けた。
とりあえずこの初戦闘を勝利で終われてよかったと強く思いながら、私たちは森の中へと歩みを進めていく。
歩いても歩いても景色が変わることのない森の中を、昨日作った地図を見ながら少しずつ進んでいく。
あれから1時間ほど歩いてもまだ敵と遭遇していない。
おそらく見逃しはあのチーム以外なかったのだろう。
それもそのはずだ。
しっかりと望遠鏡を使って念入りに、とくに翌日行く可能性のあった森の中は重点的にしっかりと探したのだ。
前回大会と同様に、マップの右上には残りチーム数が表示されている。
スタート時点で30チームあったチームも、今では10チームまで数を減らしている。
そういっている間にもいまチームが1つ減り、私たち含めても9チームしかこの広いフィールドには存在しない。
雪山という好立地を取れた私たちは隠れて1日目をやり過ごすことができたけど、ほかの森の中や草原なんかに落とされたチームは隠れる場所がほとんどなく、1日目にチーム数は大きく減ってしまったのだ。
先ほどの私たちの戦闘のように、2日目も出合頭の戦闘が後を絶たない。
意外とフィールドは広いように見えるが、このフィールド内にいるのは第2回イベントの時のような初心者集団というわけではない。
このゲームを本気でやりこんだ“ガチ”のプレイヤーたちが参加しているのだ。
意外なところからチームは監視されているのだ。
昨日の私のような人が今もいるかもしれないし、警戒は怠ってはいけない。
そんなこんなで敵と遭遇することなく本日の目的地である森の中心部に到達した。
「よし。今日は昨日ユウヒが作ってくれた地図があったからこそここまで敵とほとんど遭遇せずにやってこれた。でも、明日はどうなるかはわからない。だからできるだけここでしっかり休んで、明日に備えていくことにするわ。」
目的地に着いた頃には日は傾き、辺りの森は太陽から放たれるオレンジの光に照らされていた。
「おそらくこのペースだと明日にも決着はつくと思う。明日朝になったら一気に草原のほうまで進むわ。」
森の中で奇襲をかけられたり、草原を歩いている途中に集中砲火を食らってはやられてしまう可能性がある。
今このフィールド内に残っているチームは全員1日2日の乱戦を勝ち抜いた強豪チームだ。
今日と同じように日が昇る前にさっさと草原に向かっていい位置を確保する。
「よし、地面を掘ってもいいんだけど、ちょっとメタい話になるのだけれど、この試合中タイマー機能がないじゃない?」
「ないね。」
「多分、地面の中にみんなで潜ったら寝坊すると思うんだよね……。」
ゲーマーというものは全員昼夜逆転している者なのだ。
さすがにそれは偏見の混じった意見だけど、私たちのようなゲーム一筋で生きている人間は、イベントの多い夜に多く起きている傾向がある。
カーテンの隙間からわずかに漏れ出てくる光ですら目の覚めない私たちが、光のない空間で定刻通りに起きれるわけがない。
そうなったら少しの危険を冒してでも外で野宿する必要がある。
昨日私が作ったマップによると、この辺りにはパーティーは存在しないはずだ。
そして、先ほどざっくりとあたりを探索しに行ってもほかのパーティーの姿は見えなかった。
「というわけで、今の時間は8時だから12時までは私とアルミで見張りを、12時から朝の4時まではユウヒと音符ちゃんで見張りをお願いね。」
「「「はい!」」」
12時まではメアリーとアルミに任せて、私と音符猫はさっさと眠りにつくことにした。
 




