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シン・モモタロウ ③「お婆さん」【完】

作者: 半田有希

「ご心配、おかけしました。桃太郎、無事に戻って参りました!」

 桃太郎が鬼退治から戻ってきた。桃太郎と爺さんと三人、涙を流して抱き合って喜んだ。しかし、桃太郎以外の三人、猿吉、犬夫、雉介は鬼に食われて死んでしまったという。三人の親は泣き崩れた。

「なんでお前だけ帰ってきた!」

 村長は親達の気持ちを慮って桃太郎が持ち帰ったお宝の分け前を多く分けることにした。

 桃太郎は帰ってから塞ぎこむようになった。毎日酒を呑んでは、猿吉、犬夫、雉介のお墓の前で、一日中過ごすようになった。


「あなたは、桃太郎さんのお婆さんですか?」

 そんな頃、お梅という若い女が桃太郎を訪ねてきた。桃太郎はお墓に行っていて留守だと告げると、お梅は「実は桃太郎に助けてもらったのです」と言う。桃太郎は、鬼ヶ島に辿り着く前に狐火島きつねびじまという島に漂着し、住民を人間に化けた鬼だと勘違いして殺しまくったというのだ。狐火島きつねびじまの島民は鬼ではなく人間だった。だが、実は悪党で、船で島を出ては女をさらって、監禁しては売り飛ばしていたのだ。

「私は監禁されていて桃太郎に助けられたのです」お梅はそういった。

 しかし、桃太郎は悪いやつらでも人間を殺したことにショックを受けていた。墓を作って全員を弔ってから鬼ヶ島にいくと言っていた。私はすぐに島から逃げたので、お礼が言えなかった。それで今日、この村を訪ねてきたという。

「桃太郎があのとき来てくれなかったら、知らない所に売り飛ばされていたことでしょう。桃太郎は私の命の恩人なのです」

 お梅は顔に手をあて、涙ながらに言うのであった。すると酔っぱらった桃太郎が戻って来た。お梅を見ると、桃太郎は満面の笑みを浮かべ、お梅を抱きしめ涙を流した。

「生きて戻っていたか!良かった!」

 良ければうちに来い!桃太郎は言う。それからお梅はうちに住むことになった。お梅が家に来て桃太郎は変わった。塞ぎこむこともなくなり、爺さんの芝刈りを手伝うようになった。お梅はよく働く気立ての良い娘だった。二人の間に子供が生まれ、二人は本当の夫婦になった。全てが順風満帆だった。


 その頃、また鬼が村に現れたのを見たという噂が流れる。桃太郎が退治してきたではないか? 村民はパニックになった。皆が桃太郎に大丈夫かと聞く。桃太郎は不安げに大丈夫だと皆の前で言った。

 しかし翌日、犠牲者が出た。なんと川に一人で洗濯に行っていたお梅が鬼に殺されたのだ。桃太郎は山の中で鬼を追い詰め斬り殺した。そして息のないお梅を抱きしめた。

 実は桃太郎は鬼ヶ島に行ってないという。持ち帰ったお宝は狐火島きつねびじまのお宝だったのだ。実はその島を出て鬼ヶ島を目指している途中、見知らぬ船が近づいてきた。その船には大勢の鬼が乗っており、桃太郎の乗っていた船がその鬼たちに襲われたのだ。圧倒的な鬼の暴力に猿吉、犬夫、雉介がやされ、鬼たちに食われてしまった。鬼が攻めてきたとき、桃太郎は怖くなって船の底に身を横たえ、見つからないよう隠れていたと言うのだ。

 桃太郎は言った。

「私は意気地なしなのです。私の意気地なしが大切な四人の友を死なせてしまった。なので今度は一人で鬼ヶ島に行きます。もう帰って来ないと思ってください」

「お前、死にに行くのかい?」

「いや、絶対死にません。けど、鬼も殺しません。例え鬼でも殺すのはもうたくさんなのです。鬼を説得し、これ以上、人を殺さない鬼にしてみます」

「お前……」

「お婆さん、息子を頼みます」

私はまた鬼ヶ島に向かう桃太郎にきび団子を渡した。


そして、桃太郎は二度と戻ってこなかった。風の噂によると、鬼ヶ島に辿り着いた桃太郎は、鬼の頭領と闘い勝利をおさめ、新しい頭領となり、鬼ヶ島を平和な島に変え、美味しいきび団子を売り始めたという。明るく楽しく元気よくきび団子を売る鬼は有名になり、鬼ヶ島を訪れる人たちにたいそう評判になったという。


桃太郎でかした。さすがわしが拾い上げた桃から生まれた子じゃ。わしのと爺さんの子じゃ。



最近、小説を書き始めました。なんでも結構です。コメントをいただければ勉強になります。よろしくお願いします。

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