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2、妊婦さんと赤ちゃん

 神路神社でバイトを始めて3日、俺の仕事は敷地内の掃除だったり壊れかけのベンチの修理だったりと主に雑用だった。込み合うほどではないが参拝者はあまり途切れずにきていた。社殿のそばを通るとき、俺はつい社殿の屋根に目を向けてしまう。社殿の屋根にはひらひらの服を着たとても綺麗な人が座って参拝者をにこにこと見つめていた。

 宮司の隆幸さんが言うにはその人はこの神社の神様らしい。隆幸さんには光の塊にしか見えないと言っていた。男なのか女なのか聞くと、神様は性別が曖昧なんだと言われた。


 神様はいつも参拝者をにこにこと見つめている。その様子は俺から見ても人が好きなんだろうなとわかるくらいだった。

 神様はだいたいいつも社殿の屋根にいる。そんな神様が急に立ち上がったかと思うとふわりと下に降りてきた。境内の掃き掃除をしていた俺がぎょっとして見ていると、参拝にきた若い女の人のそばをふよふよと浮いていた。

 初めて見る神様の行動に驚きながらもとりあえず様子を見ていると、神様はお賽銭を投げて手を合わせる女の人を満足そうに見つめていた。そして、女の人の腹にそっと手を当てる。それを見た俺は女の人が妊娠しているのだと唐突に理解した。よく見れば確か腹がふっくらしているし、体型が目立たないワンピースを着ていた。

「冬馬くん、お疲れさま」

女の人を見ていた俺は急に声をかけられてびくっと驚く。振り返ると隆幸さんが缶コーヒーを持ってきてくれた。

「一休みしよう」

「うす」

うなずいて木陰に移動し、もらった缶コーヒーを飲む。そうしているうちに女の人は参拝を終えて帰っていった。神様は鳥居まで一緒に行くとまた社殿の屋根に帰っていった。

「あの女性がどうかした?」

「…あの人、妊婦さんですか?」

つい我慢できなくて尋ねてしまうと、隆幸さんは少し驚いた顔をしてうなずいた。

「そうだよ。よくわかったね。まだお腹目立たないのに」

「いや、神様が、いつもは屋根にいるのに、あの人がきたらずっとそばにいてたまに腹を触ってたから」

俺がそう言うと隆幸さんはますます驚いた顔をしていた。

「あの人はね、なかなか子どもができなくて、よく子宝祈願にきてたんだよ。それでやっと妊娠できたんだけど、そうか、神様も喜んでくださっているんだね」

「そんなふうに見えました。あの人帰ったらまた屋根の上に帰ったし」

俺の言葉に隆幸さんは嬉しそうに笑っていた。


 それから何ヵ月かして、また女の人が参拝にやってきた。今度は男の人が一緒で、女の人の腕には可愛い赤ちゃんが大切そうに抱かれていた。

 女の人たちが鳥居をくぐった途端、神様は社殿からふわりと降りてそばに行った。そして赤ちゃんの顔を覗き込む。赤ちゃんに神様が見えたのかはわからないが、赤ちゃんが声をたてて笑うと神様はとても優しい顔で嬉しそうに笑っていた。神様がそばにいるからか、参拝している3人の周りが俺にはキラキラ輝いて見えた。


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