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15、神様の友だち

 銀髪の神様に会って数日経った日の朝、雪が降るなかバイトに行こうと神社に向かって歩いていると、ふいに目の前に白い羽がひらひらと舞い落ちてきた。滑らないように足元ばかり見ていた視線を上げると、そこには銀髪の神様がにこにこ笑っていた。

『よっ!こんな雪の中出掛けるのか?』

「えっと、バイトなんで、神社に…」

困惑しながらとりあえず答えると、神様は『ふむ』と言って少し考え、悪戯っぽくにやりと笑った。

『私が連れていってやろう!』

「は?」

意味がわからず間抜けな返事をする俺にかまわず、神様は俺の後ろに回ると脇の下に腕を入れて持ち上げた。

「えっ、ちょっと!」

驚いてジタバタしても神様はびくともしなかった。俺なんかよりよっぽど細く見えるのにやっぱり神様は違うらしい。俺を抱えたままふわりと浮き上がり、神様はそのまま空高く舞い上がった。

『安心しろ。私が触れているからな。人間たちの目には今のきみの姿は見えんさ』

「ちがっ、心配してるのはそこじゃないっ!」

『ははは!落としたりもしないから心配するな!』

「ちがーう!」

俺の怒鳴り声が空に虚しく響く。神様は楽しげに笑いながら神社に向かって羽を羽ばたかせた。


 俺が銀髪の神様に抱えられて空を飛んで来ると、社殿の屋根に座って鳥たちと戯れていた神社の神様は驚愕の表情を浮かべて飛んできた。その頃には俺は諦めて神様に身を任せて、普段見ることのない景色を楽しんでいた。高所恐怖症でなくて本当によかったと思う。

『貴様っ!いったい何をしているっ!』

『なに、ここに来ると言うのでな。連れてきてやった。今日は雪が降っているからな。滑って転んだら大変だろう?』

あっけらかんとして言う神様は俺を社殿の前にそっと下ろしてくれた。

『そういうことを言っているのではない!もうこれに関わるなと言っただろう!』

神社の神様が怒鳴り付けても銀髪の神様はどこ吹く風だった。普段ふわふわと笑っていることが多い神社の神様も、この銀髪の神様には大声で怒鳴ったりしている。その姿は新鮮だった。

「えっと、運んでくれてありがとうございました」

『気にするな。そうだ、私のことは白羽と呼んでくれ。だが、きみの名を教えてくれる必要なないからな!』

そう言って笑った銀髪の神様、白羽様はふわりと舞い上がった。

『静華、きみの愛し子を狙っている輩がいるぞ?気を付けろ』

にこにこと笑みを絶やさなかった白羽様が真剣な表情になって神社の神様に言う。静華と呼ばれた神様は、眉間に深い皺を刻んでうなずいた。

『わかった。何者であろうとも、手出しはさせぬ』

『そうしろ。今時このような子は稀有だ。ここを離れられぬきみに代わり、私も気に掛けておいてやるとしよう』

白羽様は静かに言うとそのまま飛び去ってしまった。

「えっと、神様?」

白羽様がいなくなってからも黙ったままの神様に声をかけると、神様はハッとしたように顔を上げた。

「神様、静華様って名前なんですか?」

『真名ではない。通り名のようなものだ。白羽もそうだ。我らは真名を容易く他者に教えぬ。そなたも我らに真名を教えてはならんぞ?』

そう言われて俺はうなずいた。それは前に隆幸さんにも言われていたことだったから。

 本当は神様の愛し子とは誰だろうと思ったが、何故かそれは聞けなかった。

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