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神様は人の子を見る・4、ゆく年くる年

 師走になった。この時期になると毎年巫女たちがやってくる。普段は違う仕事をしているらしいが、あの宮司が選んだだけはあって巫女足り得る女たちばかりだ。巫女たちが社務所で破魔矢や絵馬を作る。その様子を眺めると毎年心踊った。

 あの子は巫女たちが来てからよくお使いに行くようになった。どうやら菓子を買ってくるようで、可愛らしい菓子を我にも供えてくれた。あの子が初めて選んで供えてくれたもの。嬉しくて声をかけるとあの子はひどく驚いた顔をして、それも愛おしかった。供えたあとの菓子は食べるように言うと休憩の時に食べているのを見かけた。

 それから、あの子はお使いのたびに菓子を買っては供えてくれるようになり、我もその度に声をかけていた。あの子と言葉を交わすことは単純に楽しかった。


 大晦日。この日は我も忙しい。人の子だけでなく神社の境内に住む動物たちも我のところに挨拶にやってくるからだ。我もそれを正装でもって迎える。

 そして、鳥居の注連縄が新しいものに替えられると神社を包む結界も新たなものに張り直す。悪しきものが入って来ぬように、あの子や宮司の安寧が守られるように。そう願い新たな結界を丁寧に作り上げた。

 日が落ちるとやってくる人の子が一気に増える。日付が変わる少し前には賑やかに数を数えていた。これはここ数年見られるようになったものだ。我にはよくわからぬが、人の子たちが楽しそうなのは何よりだ。

 日付が変わり、年が明けると人々が初詣だと参拝していく。我はその人の子たちの幸いを願った。

 参拝には我を見る幼子も祖母と一緒にきていた。幼子が住むのは隣町。我の加護がどこまで効くかわからなかったが、少しでも守りになればと加護を与えた。そして、参拝者が落ち着いた頃、あの子が賽銭を入れて鈴を鳴らした。あの子の願いは周りの人々の健康。無欲な願いに知らず笑みがこぼれた。そして、我はあの子に加護を与えた。最近よく言葉を交わしていたこともあり、我とあの子の間の縁の糸は太くしっかりしたものとなっていた。


 今年初めての朝日が昇る。雲ひとつない空が朝焼けに赤く染まり、太陽が顔を出す瞬間はいつ見ても良いものだ。今年も変わらず穏やかなものとなればいいと思いながら我は朝日を浴びた。

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