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プロローグ

 俺には父親がいない。母親が女手ひとつで育ててくれたが、金もないし頭もないから高校には行かなかった。母親には感謝してる。でも、何かと反発しちまって喧嘩ばかりしてた。俺は元々体がデカいからよく不良どもに絡まれた。売られた喧嘩は買った。負けたことはないけど、こっちも怪我ばっかしてた。そのたびに母親は泣いて心配してくれた。その頃には俺は近所の連中から不良扱いされてた。まあピアスじゃらじゃらつけてたしな。

 中学の頃からやってた朝の新聞配達だけはずっと続けてた。少しでも母親の足しになればと思ったから。でも、雨の降ってる日の早朝、前に喧嘩して負かした奴らに待ち伏せされてボコられた。さすがに人数が多くて負けちまって、それでも新聞配らなきゃとか思ってたら近所の神社の前で動けなくなった。


 気がついたら布団に寝てた。傷の手当てはしてある。雨は降ってたけど部屋にあった時計を見て俺は飛び起きた。

「やっべ!新聞!」

今朝の新聞をまだ届け終わっていない。慌てて部屋から出ようとすると、先に障子が開いて袴を着た男が入ってきた。

「ああ、起きたんだね。傷の手当ては一応したけど、痛むようなら病院に行ったほうがいい」

「…あー、助けてくれてどうもです。でも新聞配んなきゃないから」

とりあえず礼を言って部屋を出ようすると、男は困ったような顔をした。

「きみが抱えていた新聞は配達店のほうに持っていったよ。濡れてしまっていたしね。それでね、言いにくいんだけど、明日からは配達しなくていいって伝言を預かったんだ」

「…はは、そっか。クビか。まあ、しょうがないな」

いつかこうなる気はしてたから諦めたように笑うと、なぜか男のほうが申し訳なさそうな顔をしていた。

「きみ、高校生かい?」

「違う。高校には行ってねえ。俺はバカだしこんなだから、仕事も続かなかった。新聞配達は唯一続いてたんだけど、また仕事探さないとな」

工事現場とかなら雇ってくれるかなと思いながら言うと、男は少し考えてから「うちで働くかい?」と言ってきた。

「は?あんた、何言ってんだ?」

「うちは神社なんだけど、ちょうど男手がほしくてね。きみは力もありそうだし、どうかな?」

「どうかなって、普通こんな怪しい奴会ったばっかで雇うか?」

「これも何かのご縁だよ。僕は神路隆幸。この神路神社で宮司をしてるんだ。きみの名前は?」

にこにこと笑う男に毒気を抜かれて俺は仏頂面でそっぽを向いた。

「…一ノ瀬、冬馬」

「冬馬くんか。これからよろしくね?」

一ノ瀬冬馬18歳。何がなんだかわからないうちに、俺は神社で働くことが決まっていた。

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