質疑応答
「以上。誓約書補足とルール説明です。そちらのルールの記載された紙は、ご自身で管理しゲーム進行に役立てて頂いて結構です。法廷のルールについては不要となる場合もございますので、ここでの説明は割愛させてもらいます。なにかご質問ありますでしょうか?」
……。正直、1度に覚える事が多くて理解が追いついて行かず、質問まで辿り着いてないのだ。
習うより慣れろ。やりながら少しずつ覚えていくしかないのだろうけども。
などと少し考えてクラスメイトの名前と同じく僕は早々に諦める事にした。
緊張感は無くただただ静まり返っている授業中の様な空気のなか、隣の早川さんの手が挙がる。こういう時に1番に手を挙げられる、そんなところが素敵だと思う。
「す……すみません。時間省略とはなんでしょうか?」
早川さんの質問に対してフェアリさんが説明するには、現実世界と同じ時間スピードではゲームは出来ないので、不必要な部分の省略や時間を加速させゲームを調整しているとの事だった。
長い夢を見てたと思ったら30分しか寝てなかったり。逆に寝て起きたらもう朝だったりだったりするのと似た様なもので、体感に違和感は無いらしい。
これに対して閃いたかの様に。
「それってつまりここで勉強すれば時間加速を有効に使えるんじーー」
「あぁー!! 俺宿題やってねぇ!!」
藤くんの質問を遮る志村くんの叫びに、そんなやつお前くらいだとどっと笑いが溢れた。
僕は善之の肩を軽くポンポンと叩いた。
フェアリさんは気にも止めず藤くんの質問に対して肯定した。しかし生存しないと意味ありませんよ?とも付け加えていたが。
これに対して今度は茂田くんが閃いたかの様に。
「いやむしろ生存せず記憶を忘れられるなら、ここなら告白し放題なんじゃね?」
えっ?一瞬なんの話しなのか分からなかったが、周りを見渡すと望月さんが下を向き俯いてた。
「あんた本当に懲りないね、何回その子に振られてんの?ほんとバカ」
「うっせぇブス! 授業中ずっと鏡見てる様なキモいやつに言われたくねぇんだよ!」
西小の人達には見慣れた光景なのだろうか?
茂田くんの告白や……言い合いしてるあの子は、最上さんとよく一緒にいる子。そう、名前を知らない事を思い出して善之に耳打ちした。阪井さん。阪井さんとの言い合いも日常茶飯事なのだろうか。
にしても良いのか悪いのか、場の空気は完全に壊れてしまっている。ただでさえ元から緊張感が薄かったのに。
そんな空気を正すかの様に、今度は小清水くんが質問をする。
「フェアリさん、確かご自身をフェアだと仰ってた割には、大切なものとやらも凶器についても、マーダラーにしか知り得ない情報が多く随分と不平等に見えますが? 他の人狼ゲームとは違い役職なども無い様ですし」
「何をもってフェアとするかは物差しによって違ってくるものです。ゲームマスターとして再度断言するとしましょう。私はフェアですし私の言葉に嘘偽りはございません。」
小清水くんの発言は共感できるものだった。ただでさえ理解が追いついてない状況なのだから、恐らく他の皆も同様だろう。
しかし僕には内容自体よりも話し方の方が引っかかった。
話す速さや態度は穏やかなのだが、言葉の端々に棘が見えて横柄さが見え隠れしている気がした。
再び沈黙が訪れそこから発言する人は現れなかった。