志村くんの必勝法1
この状況下に適し過ぎていて、逆に1番不適切だけど、志村くんに対する殺意が込み上げてくる。
なぜ今このタイミングで、食堂に響く程の全く意味の無い大きな音を出したのか。
反応して驚いた自分が情けない、とゆうか煽られているとしか受け取れないのだが。
両手を広げた善之が、僕を含めた数人を宥めていなかったら、その後の彼の言葉は僕らの耳に届かなかった気がする。
そんな一悶着を渦中の本人は気付きもせず、志村くんは改めてこう言う。
「このゲームには必勝法がある。今日も明日も、誰もここから出なければいいじゃねぇか」
「「それだー!」」とキキちゃんミミちゃんが声を合わせる。
自分達の勝利を確信し安堵したのか、3人は高笑いしだした。
必勝法とやらは置いとくとして、まずその前の彼の行動に彼女らは腹が立たなかっ……いや違う。この双子も空気が読めないんだった。このおバカ3人め。
盛り上がりをみせる彼らを制止したのは、前回言い回しに若干棘を感じた小清水くんだった。
「志村さぁ? あのな? 俺らはゲームを楽しみたいんだよ。つまり殺人が起こらない事には何も始まらないんだよ」
「はぁー。そうゆうことだ。お前根本からズレてるんだよ。バカは黙って、精々俺を楽しませる生贄にでもなってくれ」
小清水くんに続き否定したのは、よりにもよって二階堂くんだった。案の定キツめに。
志村くんは顔を伏せて分かりやすく落ち込んでしまった。この流れも日常茶飯事なのだろうか、にしても落ち込むのが早過ぎるが。
しかし助け舟を出してあげたい気が全くしてこないのは、まだ音の件を僕の中で解決してないからだろうな。
ふと気付くと、キキちゃんミミちゃんは腕組みしながら頷いている。こっちはこっちで変わり身が早過ぎる。
実際問題言い方は置いといて、彼らの言い分には賛成だ。
ここで大人しくしておいて何になるのか。
ゲームにもならないし、それなら学校で顔を合わせるのと何が変わらないのだろう。
となると僕は殺人が起こるのを望んでいるのか、ゲームとはいえ変な感じがする。
「そ……そうじゃなくて! 例えゲームでも、この中に……ひ……人を殺すような人はいないって……思いたいんです!」
急に怒号が飛んできた。
その声は本来なら今回ゲームに不参加だったはずの、林原さんからだった。
普段おどおどして映る彼女からは、予想出来ないほど大きな声で、彼女自身も驚き興奮してる様だった。
再度静まり返った空気を感じ、我に返った様で、今度は彼女が赤面して顔を伏せてしまった。
でも林原さんの意見も確かに一理ある。
人を殺せる人間がいるいないではなくて、いざ自分が【マーダラー】だった場合に殺人が出来るのかという意味で。
現実世界において、動機さえあれば誰もが犯罪者となり得る。と、僕は思う。
例えば、自分を守る為、愛する人を守る為、といった大義名分が備わったとすれば、人は武器を持つ気がする。
少なくとも僕には、その環境に身を置かれた際に自制出来る自信が無い。
でもここは違う。
ゲーム、遊びとはいえ、ここにあるのは殺人が出来る、してもいい環境だけだ。
どの様な行動を取るかは【マーダラー】に委ねられる。
例えば僕が今自分の凶器である【ひのきの棒】で人を殺せるだろうか?
撲殺している自身の絵を、一頻り想像してから思いついた……拳銃ぐらいなら出来るかも知れない。
案外自分も危険な人間だなと思った。




