訪問者
目が覚めると……という表現であってるだろうか、気がつくと……の方がしっくりくるなと自問自答した。
気がつくと僕は怪しい洋館の前に建っていた。そこには庭園があり、風が薔薇の香りを乗せ、顔を撫でていくのを感じる。
目の前の鉄格子には夕暮れの光が差し込んみ鈍く光っていて、遠くからはひぐらしの鳴き声が聞こえてくる。
自分が固唾を飲み、冷や汗すらかいてる事に気付いて、わざと言葉にも出してみた。
「ここまでリアルなんだな……」
声も出る。風も感じるし、匂いも感じた。光も感じるし、汗も出た。それに音だって。違和感がない事に驚いた。
だって、ここはゲームの世界なのに。
最早当たり前のように、ひんやりと冷えてる事を感じながら鉄格子の門を開け、石畳の通路を進んでゆく。一面薔薇の花の庭園を抜けて、石段を上り洋館の扉に手をかける。
ひとつ深呼吸をし、自身が緊張している事を感じながら、僕はその扉を開いた。
最初に目に飛び込んできたのは、赤い絨毯だった。
玄関ホールから真っ直ぐ延びて、その先にホテルの受付のようなスペースがある。
そこにはメイド姿の人を模したNPC(プレイヤーが操作しないキャラクター)が立っていた。
こちらに敬礼をされたので、視線を外しホールを見渡し気付いてないフリをした。
壁は白を基調とし、床や扉などは暗い茶色が基調とされている。
2階までの吹き抜けになっていて、2階へと続く階段が左右にある。3階に伸びてるであろう階段は1つ。
両端には扉が1つずつあり、シンメトリーな空間にそぐわない赤いスポーツカーが1台停まっている。
ーーなどとホールを一見し終わり彼女と目が合う。
再度敬礼され彼女に近づいて行った。
改めて近くで見ると、不自然なほど白い肌に遠くを見つめる様な瞳は、人形とゆう方が近いだろうか。
あと、1つ気になる点をあげるのなら頭から2本触覚?の様な物が生えている。
「お待ちしておりました。こちらのアンケートと誓約書にご記入をお願いします」
淡々としつつも暖かみを感じる声で、まじまじと見つめてしまっていた自分にふと気付き、あたふたしてるであろう僕の前に紙が渡された。