捜索1人目
「ねーねー瀬戸くんはさぁー? 青柳さんが好きなの? 早川さんじゃないの?」
メインホールまで戻って来たところで唐突にキキちゃんが口にした。続けて、ミミも思ったーと声が続く。
……。
フリーズしてた自分に気付き、ニヤニヤしながらこちらの顔色を伺ってる双子に慌てて否定した。
我ながらウソが下手で動揺を隠せてるとは思えなかったが、2人はつまらないと不満げな表情と声を合わせた。どうやら誤魔化せたみたいだ。
今になって心臓がドクドクしてきた。そんな僕の事はつゆ知らず、彼女達のお喋りはまだまだ止まりそうにない。
早川さんとは以前にクラスメイトになった事があるとか、今回ゲームに善之から誘われて嬉しかったとか、未だに140センチに満たないであろう2人は今や160センチを超えた僕を妬んでいたので名前と顔は覚えていたなど。
知らないところで恨みを買っていたみたいだが、こちらからの質問にもすんなり答えてくれる。
僕に今着いて来てくれているのは、二階堂くんとは家が近所で幼馴染だからだそうだ。
キキちゃんミミちゃんは、恐らく悪気など無くて、思った事を口にするタイプな気がした。そんな無邪気で素直だからこそ僕の下手なウソも通用したのだと思う。
にしても最初にしてくる質問では無いだろうと本当は言いたいが。
「瀬戸くんはさぁー、聖司とよく似てると思うんだよね。どっちも自分達からクラスの子に話しかけたりしないでしょ? でもこうやって話すと人が嫌いな訳じゃなかったりとか」
続けて今度は、キキも思ったーと声が続く。
僕の場合は、クラスメイトに話しかけようにも何を話したらいいのか分からないだけなんだけど。
少なくとも彼女達が楽しそうに話す二階堂くんは、僕の感じていたイメージとは違っていた。
正直僕から見た二階堂くんは、気難しくて話しかけづらい苦手なタイプだったと伝えると、よくそう見られていると2人は声を合わせて笑っている。
「とゆうことでさぁー? 無理にとは言わないけど聖司とも仲良くしてやってよ。今回のゲームってそういう目的なんでしょ?」
今度は小さい体を大きく使ってミミちゃんが頷いてる。
確かに親睦が今回の趣旨だった。ここなら普段話さない皆と、自然とゲームの話題が出来る良い機会なんじゃないかと思えてきた。
早川さんとも是非仲良くなっていきたい。
メインホールを抜けて食堂と反対側の廊下に出たところで幾つか扉があった。そのうちの一つの扉が開いている。
覗いてみると書庫の様で、棚や壁一面に本がぎっしりと並んでいる。
棚をいくつか過ぎた先にテーブルとチェアがあり、本を読んでいる二階堂くんを見つけた。
彼を見かけるなり、2人の声が書庫に大きく響く。やれやれとうんざりしている二階堂くんに対して注意をやめない彼女達。
姉妹というか、お母さんに見える。
彼の事を苦手な僕も一緒に探しに来てくれたんだから、お礼を言う様に催促をする2人。
……。
前言撤回だな。彼女らは無邪気や素直じゃなくて無神経なのかもしれない。
二階堂くんと僕の距離は遠くなった気がした。