準備完了
部屋の間取りは全体で8畳くらいだろうか。
設備はシングルベッド、壁掛けモニター、壁掛けテーブル、スピーカー、大きめな収納ボックスが1つずつ。
扉が1つあってそこにはユニットバスが設置されている。もちろんこの扉も引き戸になっていた。他に気になった点といえば、見るからに怪しい収納ボックスだが中身は空っぽだった。
部屋の中を一見した後、ベッドに倒れこんだ。
ふぅと大きくため息を出しながら天井をじっと見つめる。
鍵も掛けられない、部屋も広くはない、初めて訪れた部屋、でもベッドで寝転がるだけで、自然と落ち着いてくるのが不思議だった。
まだ何も始まってすらないのに、ゲーム自体や建物の構造などといった人の悪意に晒されているからだろうか、なんだか無性に疲れた。夢の中で疲れるってのも変な話だ。
今頃みんなは何をしてるんだろうか、何を考えてるんだろうか。いや、賭けてもいい。みんなきっと僕の様にベッドで寝転がってるだけだろう。
などと取るに足らない事を考えながら、ベッドで寝転がっているとウトウトしてきた。夢の中で眠くなるってのも変な話だ。
そのまま10分程経った頃だろうか、唐突にスピーカーから警告音が鳴り響き、モニターの電源が付いた。しかしモニターには何も映し出されず、スピーカーからフェアリさんの声が聞こえてくるだけだった。
「それでは皆様個室に入室されましたので、これよりマーダラーの発表を行います。モニターをご確認下さい」
……プレイ。と書かれた画面が浮かび上がってきた。よく分からないがマーダラーでは無いようだ。
正直このゲームが面白くなるかどうかは、1人だけのマーダラーの役割がとても大きいと感じていた。これでその他大勢の1人、無責任に遊べると思うとホッとした。
今頃マーダラー役の人は頭を抱えているだろう。
「続きまして凶器の配布を行います。マーダラーの方はモニターをタッチし最初の凶器を選択してください……確認しました。残りの凶器はランダムに皆様に配布します。凶器は各個室内の収納ボックスよりご確認下さい。モニターにて凶器、死因、備考が発表されますので、併せてそちらもご確認下さい」
凶器の配布。自分がマーダラーじゃなくても強い武器や使いやすい武器に越したことは無い。
マーダラーからの反撃にも使えるし、状況次第では抑止力にもなるだろう。
さっき確認した時には何も入っていなかった収納ボックスに何か入っている。
恐る恐る蓋を開ける……凶器を取り出し手に取る……確認しモニターに目を向ける……これは……。
凶器:ひのきの棒
死因:撲殺
備考:勇者の初期装備といったらこれ
え?
「最後に、これより就寝時間とし時間省略を行います。マーダラーの方はマーダープラン作成可能な時間が設けられますので一時対象外となります。それでは皆様、おやすみなさいませ」
え?