洋館の構造
食堂を出て玄関ホールに戻る。
誰もいないのだから当たり前なのだが静まり返っているホールはやはり不気味に思える。
階段を2階3階と上がっていく途中に違和感を覚えたのだが、それがなにか分からずとりあえず3階に急いだ。
3階に着いてまず感じたのが、玄関ホールや食堂の開放的な空間と違い閉塞感だった。
廊下は狭く人が2人が通れるくらいの幅しかない、玄関ホールや食堂が吹き抜けであったせいか天井も低く思える。
階段を登りきったところにあるフロアマップを見ると廊下は、この階段を中心に入り組んでいて、蜘蛛の足が廊下になっている様な間取りだと感じた。
そして、各廊下に部屋が2つずつしか面していない。
ただただ気持ち悪い。
廊下幅が狭いので逃げられない、廊下が入り組んでて先が見えない、廊下に2部屋しか面してないからすぐに助けを呼びに行けない。
明らかに意図して殺人が起こりやすい環境として作り上げられている。
フェアリさんが部屋番号のカードを配ってる時に次の人を呼ぶまでの間は、そこまで差がないものの一定ではなかった。
つまり部屋に入るまでに個人差があったという事だろう。
後ろから誰かが来ることは恐らくないはずなのだが、不気味な空気や閉塞感が僕を早く部屋に向かいたくさせた。
フロアマップを確認……306号室……あった。あの廊下の先か。305号室と隣り合う個室で奥側の部屋だった。
手前の部屋の方は、少しでも廊下を歩く距離が少なくて済むけど、奥の部屋の人間が部屋の前を行き来する事になる。
奥の部屋の方は、人の行き来は恐らく自分以外にないだろうけど、完全に逃げ場はない。
どちらの方がマシなのだろうかなどと考えながら305号室を通り過ぎ、306号室自分の部屋の前に立った。
カードをかざそうとした時に、かざす場所が無い事に気が付いた。
嫌な予感がしたが扉に手をかける。押しても引いても動かない。もう一つ嫌な予感がする。
1つ大きく溜め息をしてから再度扉に手をかける。
嫌な予感の一つ目……引き戸だ。扉を閉めて部屋の中に引き篭もる事をさせない為の作り。
もう一つの嫌な予感……鍵は無い。扉は壁に内蔵されるタイプで徹底されている。
洋館なんていう設定は環境より優先される物ではないんだなと感じつつ部屋に入った。