今日から始める王宮生活
「おぉ、キッド、荷物運びか?」
「うん、おじさんは?」
「俺も似たようなもんだ、嫁が酒樽を運べって、うるさくてよ、」
「はは、おじさんも大変なんだね。」
目の前に立っていたのは、酒場のマスター、ガンテ·エルライザ、通称おじさんだ。
「あ、おじさん、行かなきゃ、またね」
「おう、またな」
家に一度帰ろう。心配してるかな?まぁ大丈夫か
その時、何か柔らかいものに当たった。多分路地から走ってきた人だろう。そう思い路地の方を向いた。
そこには女性が倒れていた。
「イタタ、あの、大丈夫だったかな?坊や」
「あ、はい。お姉さんこそ大丈夫ですか?」
「私は大丈夫...あっ!私のパンが...トホホ」
下を見ると、パンが転がっていた。ぶつかってしまった時にお姉さんが落としてしまったのだろう。
このままじゃ悪いしなー、同じものを買いに行こうか。
「ごめんね、坊や、奢って貰って」
「いえいえ、悪いことをたので、これくらいは」
「うーん、ぶつかったのはわたしなんだけど...まぁ貰っておくわ」
意外と美人...すごくいい香りがしてくる。
「で、キッド君は何してたの?」
「あぁ、家に帰ろうかと思って...まぁ、いっか。」
「そうなんだ、邪魔しちゃったね」
「いやいや、少しでも柔らかい感触を感じられたので満足です。」
お姉さんは、少なからず、多からずの胸を見た。そして直ぐに隠した。
すこし顔を赤くしているが咳払いをして自己紹介を始めてくれた。
「私の名前は、アリス、アリス・エルスタよ。宜しくね、キッド」
「よろしく、アリス。」
この国では名前を教えったら歳など関係なく皆ため口OKになっているのだが、少し躊躇ってしまう。
「アリスは何で急いでいたの?」
「ああ、それは、仕事を探していたの。」
「へぇー、そうなんだ」
彼女はどうやら仕事を探しているらしい。少し感心してしまった。まだ若いのに頑張るなぁ~
「そうだ、キッド、一緒に職場探し手伝ってくれない?」
「うん、暇だったし良いけど、」
「ありがとう!良かった、一人じゃ心細くて...」
下に俯いてモジモジしているアリスの手を取り、「行こ?」と声を掛けた。
惚れたな、100億%惚れた。そんな事を考えている間にも、アリスは照れている。
「ちょっと、恥ずかしいってばー」
「大丈夫だって」
「私が大丈夫じゃないの、」
手を繋ぎ、トコトコと歩き始めた僕ら。疚<やま>しいことを考えていたが、一旦忘れることにした。
しばらく歩くと薬屋に着いた。壁には求人募集の紙が貼られている。しかし、あまりにも人気が無いので、少しずつドアを開けてみた。
すると、そこには色とりどりのポーションが並んでいた。
「綺麗~、青も赤も緑もある!」
アリスはお気に召したのか、一つか二つ手に取る。
「いらっしゃい、何をお探しで?」
カウンターの方から少し年を取った、おばさんが出てきた。
「あ、えっと、働かせてくれないか聞きに来たんです。」
「そうかい、嬢ちゃん名前は?」
「アリス・エルスタです。よろしくお願いします。」
「あんた、エルスタ家の人間かい、あんたが働く場所じゃないよ、出ていきな、」
おばさんは、すごい剣幕で睨んでいる。別にそこまで言う必要ないだろとツッコミたくなる。
昔エルスタ家の人間が奴隷を飼っていた事は知っている。酷く痛め付け殺してしまったとか...
だけど、アリスが同じような人間には到底見えない。見えるならそれは目か頭がおかしい。
僕たちは仕方なく薬屋を出た。アリスは一生名前を背負って生きるのだろう。
「ごめんねキッド....私ッ...」
俯いたままの彼女を見てるだけしか出来ない自分がやけに腹立たしい。
「有り難うね、側に居てくれて」
「大丈夫...そうだ、仕事は場明日知り合いに聞いておくから、安心して」
「そう......何だかしてもらってばっかだね、私ってばバカみたい。」
どうしても暗い顔をしてしまう。やっぱりきにしてるのかな
「キッド、今日はもう帰るわ、どこかで見かけたら声をかけて...」
そう言ってアリスは去っていってしまった。仕事のことで僕はある案について考えていた。
昨日名前のせいで仕事を断られてしまった...それもハッキリ。
ここ数ヵ月でここまでショックだった事は無いと思う。
でも奴隷の件は事実だからどうしようもない。
どうしたらいいのか分からなくて、むしゃくしゃしてしまった。
ゆっくりとしたペースでポストを確認しにいく。
中に何か入っていないか確認してみた。すると、中から一通の手紙がでできた。
「えーと、何々?」
「アリス・エルスタ様、この度、国王直々に、お話があるということです。
この手紙を門番に渡せば通してくれるでしょう。」
王直々に呼び出しって、どういうこと?やっぱり昨日のことかな、薬屋のおばさんか何か言ったのかな、
すると、家の前に馬車が来た。やっぱり行かないとダメなのかな?
少し不安になったが行くことにした。
馬車が止まると、そこは『バラム』で最もでかい建物、王宮だった。ほんとに来ちゃったんだ、
馬車から降りるのを少し躊躇したが、直ぐに降りた。
そして、門番に話しかけることにした。
「あの、すみません、これが届いていたのですが」
「お越しいただきありがとうございます。」
起こしいただいた、と言っているのだけど、ほとんど強制だったと思ってしまう。
「どうぞ、お通りください。」
「どうも、ありがとうございます」
そのまま私は王宮へと足を運んだ、
案内された部屋に行くと、何人かの騎士が並んでおり、その真ん中に椅子と机があった。
そのまま椅子に誘導され、椅子に座った。
すると、騎士の方が、
「すみません、王はもう時期来るので、お待ちを」
「いえいえ、大丈夫です。」
1分程待っていると、ドアがバンッ!と空いた。
そこから入ってきたのは私にも見覚えがある少年だった。昨日パンを奢ってもらい、知り合いに仕事を聞いてくれると言ってくれた少年、キッドだった。
私は驚き、キッドに声をかけた。
「キッド!何してるの?」
すると、騎士は直ぐに私の方を見てきた。
「無礼であるぞ、この方はこの国の王、
キッド・アルテミア・バラン様であるぞ!」
バラン?って事はキッドは王様?でも、昨日はそんなこと言ってなかったけど……
「まぁまぁ、よせ、彼女は僕の知人だぞ、」
そう言ってキッドが騎士を静かにさせた。
その後すぐにキッドは椅子に腰かけて、私を見た。
その視線は、顔より下、首よりもした、お腹より上、
つまり胸だった。いやらしい。
そしてキッドは、話し始めた。
「わざわざ、呼び出してごめんね」
キッドは謝ってくれたが、王様に頭を下げられると、
なんだか、こちらが申し訳なくなってくる。
「大丈夫だよ、話ってなんだったの?」
「それは、アリス、君に王直属の召使いになって欲しいんだ」
それは、仕事の案件だった。私は直ぐに答えた。
「わかったわ、やらせてもらうわ。」
「ありがとう。じゃあ、明日から王宮に泊まり込みで、お願いするよ。」
「わかりましたよ国王様」
なんやかんやあったけど、無事に仕事も決まった。
キッドには恩返ししなきゃだから、頑張ろう。
私は赤レンガ敷かれた屋根の下で思いっきり叫んだ!
「これから始まる私のスローライフ。
今日から始まる王宮生活!!」
ESN大賞3のために書いた作品です。良ければ感想や、修正点をください。




