4 ふて寝
まあ、あんな感じに落ち着いた風だったけど、
本当は昨日のせいか、
終始ドキドキしっぱなしだった。
できるだけいつもの僕っぽく振る舞ったんだけど・・・。
・・・それにしても・・・
・・・まさか、なごみをこんなに意識する日が来るなんて・・・
・・・思いもしなかった・・・
なんて考えながら、教室に入る。
すると、
「か~ざみっ!
おはおはっ!」
と笑う歩美がいた。
僕が例のアレになった発端の子だ。
その子に僕は
「おはよう。」
と返し、席に座る。
・・・その時の僕は気づかなかった彼女の頬がヒクついていたのを・・・。
「ねえ、風見ちゃんっ!
3組の長峰さんと付き合い始めたって本当っ!?」
席に座った途端に、
大勢の女子に囲まれた。
「えっ、てことはあの相談も終わりなの?」
・・・ああ、そんな噂もあったね・・・。
・・・確か僕に恋人ができたら、恋愛相談はもうしないっていう・・・。
「ええっ!
そんなの困るっ!」
「私なんてアレがあるからここに入学したっていうのにっ!」
かなりの女子がショックを受けているようで、
一斉に落ち込む姿はひどく心苦しい。
・・・と言うか・・・居心地がすこぶる悪い。
考えてみてほしい。
僕の席を囲うようにして、女子が項垂れている様を・・・。
・・・これって、僕がひどいことをしたみたいじゃないか・・・。
すぐにでもこの状況を打破すべく、
僕は彼女たちに弁明をする。
「いや、別に恋人ができたからって、アレをやめるつもりはないけど・・・。」
ひどく弱い弁明だったのだが、
「そっ、そうなのっ!?」
と多くの子が反応し、
ハイタッチしている子なんかもいる。
・・・ここまで喜ぶものなの・・・
「えっ、でも噂では・・・。」
「いやいや、噂が全部あってるわけないでしょう・・・。」
少しは心が軽くなったのか、
僕は呆れつつそんなことを言う。
「あ~・・・よかった・・・なら、折角風見ちゃんが幸せになるってなら、
応援しなくちゃねっ!」
えっ?
「そうよね、私はいっぱいお世話になったし、これからそうなる子もいるんだからっ!」
「そうね。」
とみんなは口々にそんな言葉を零す。
そんな様子に僕はただただ困惑していた。
・・・どういうこと?
少し、顎に手を当て考える。
・・・っ!?
・・・まさか・・・
「ちょっと、みんなあれは誤解っ!」
キーンコーン、カーンコーン・・・。
そんな音に僕の声はかき消されたのか、
「じゃあね、頑張ってね。」
や、
「応援してるからっ。」
と言う声が僕に掛けられ、
唖然としているうちに、
ホームルームが始まってしまった。
・・・後で誤解解きに行こう・・・。
すると、終わるなりすぐに、
女子の皆が一斉に携帯を取り出し、
何かをし始めた。
近くの子に聞いてみる。
「今なにしてたの?」
「ああ、今ね。
部活のグループにさっきのこと書いたのっ!」
へっ?
「これで先輩や他のクラスの子とかも協力してくれるよっ!」
と誇らしげにほらと僕に画面を見せてくれる。
「・・・・・・。」
・・・まあ、部活1つなら何とか弁明もできるか・・・。
と、手始めにこの子に事情を説明しようとすると、
あることに気付く。
・・・そういえば・・・さっき・・・
・・・みんな携帯を・・・。
僕は即座に周りを見渡す。
すると、
女子のみんなが携帯を僕の方に向ける。
遠くはわからないけど、近くの子のは見えた。
そして、その画面には・・・
・・・終わった・・・。
こうして、僕となごみの仲は実質公認のものになった。
どこからか、
「・・・バカ・・・。」
と言う声が聞こえた気がしたが、
それどころではなかった。
そのあと、席に戻り、ふて寝を敢行した。
・・・もう知らない・・・僕は何も見てないし、聞いてない・・・。