2 相談
「で?
珍しく相談と・・・。」
「ああ、なごみくらいしか相談できそうな人がいないからね・・・。」
「・・・喜んでいいのかな?」
彼女はいつものようにのほほんとした顔のまま首を傾げる。
「まあ、喜んでいいんじゃないかな?
頼ってるのは事実だし・・・。」
「ん、わかった・・・わ~い!」
軽く万歳をする。
ああ・・・本当になごみと一緒にいるのは楽だ。
こののんびりとした雰囲気、
恋愛に興味がなさそうなこの心地よさ・・・。
けど、
今回はこいつの前でその恋愛の話をしなければならない。
・・・桁違いに嫌なんだが・・・
もうこの和む気持ちに身を任せたいんだが・・・。
などと思うんだが、
・・・あの子のあの表情にお礼をせねば、
そんな思いから、遂に口を開く。
「・・・なあ、なごみ・・・。」
「ん?」
彼女は不思議そうな表情でこちらを見る。
「なに?」
「・・・聞きたいことがあるんだ・・・?」
「?
なんで疑問形なのかわからないけど何?」
「・・・気にしないでほしい。
真面目な話だから。」
「ん。」
「・・・・・・。」
今更怖気づくなって・・・。
・・・あの表情のために頑張るって決めたじゃないか・・・
・・・・・おしっ!
覚悟を決めて言おうとする。
「なごみ・・・。」
「ん?だから何?」
「・・・キスってどんな気持ちがするんだ?」
あっ・・・間違え・・
この瞬間、なごみは見たことがないくらい俊敏な動きを見せ、
僕を押し倒し、
顔が近づいてくる。
そして、
「ちょ、急にどう・・っ!?
う、うぐ・・・。」
・・・口を塞がれた・・・
・・・彼女の唇で・・・。
「う・・・うぐっ・・・。」
・・・それも長い時間・・・。
そして、
やっと離される。
「はあはあ・・・なごみ・・・急に何を・・・。」
酸素が足りないのか、
頭がボ~ッとする。
すると、
ペロリ。
自分の唇を一舐めし、
「・・・いい。」
そんな言葉を漏らす。
そして、
「もう一回・・・。」
また僕に顔を近づけてきたところを止める。
「ちょ、ちょっと、なごみっ!」
彼女の方を押さえる。
「ん?
・・・やさしくして・・・?」
・・・よくわからないけど・・・なんかひどい誤解があるような・・・。
「・・・なごみ・・・どういうつもり?」
「ん、風見が誘ってきたから乗ってみた。」
・・・誘った・・・?
・・・乗った?
「せっかくのチャンスだった。
これに乗らないはずない。」
「・・・チャンス・・・?」
「ん、風見のことが好きだから・・・だから嬉しかった・・・。」
・・・好き・・・?
「だからもう一回・・・。」
僕の手を離し、自分の腰に回すと、
唇を突き出して・・・
「って、ちょっと待った!
それ誤解だからっ!」
彼女の体を引き寄せることで難を逃れる。
・・・必然抱きしめてしまい・・・。
・・・うっ・・・やわらか・・・。
すると、大人しくなり・・・
「ス~・・・ス~・・・。」
眠り始める。
・・・助かったの・・・?
それから、事情をどうにか説明し、
どうにかわかってもらったんだが・・・
「でも、風見は私のもの・・・唇は奪った。
もう誰にも渡さない。」
と、どこかの民族的な考えを言っていたので、
正確に伝わったかは定かではない。
確かに野生児的なところがあるのは知ってるけど・・・
・・・たぶん、冗談だよね・・・。
でも・・・あの告白は・・・?
・・・それに唇も・・・。
唇に手を触れ、
そんなことを思い出し、
身もだえるのだった。
・・・明日から、どんな顔して会えば・・・。
・・・結局相談できてないし・・・。